第八十一話 新たな刺激を受け止めろ
綺邑が消えた後に額の冷や汗を拭うようにして籐下は息を吐き出した。
「こえぇ~・・・」
「オレにはいつもあーだから~」
まるで気にしていない、慣れきっている様子の薪を見て少しモチベーションが下がる籐下。どうしてこうも殺気立たれている相手に対して呑気な口調で述べられるのか・・・。
家に帰ると穂琥が出迎えた。
「お帰り。どうだった?交渉、うまくいった?」
「まぁ、相手は籐下だからな」
明日は学校のほうに交渉をしなければならないので面倒だが致し方ない。部屋の奥へと入っていくと儒楠が暇そうにしているのを見て薪はにやりと笑った。
「暇そうだな。どうだ?本番前にやっておくか?」
「いや、御免被る。薪と刀交えるのも久しぶりだけど・・・。悪いけど本番前に薪の強さ再確認してテンション下げたくねぇし、怪我もしたくねぇ」
「おいおい、鬼みたいに扱うなよ」
「「鬼だよ」」
唐突に会話に参加した穂琥と儒楠の声が重なる。薪は小さく笑ってソファに腰を下ろした。
「そういえば私、儒楠君の強さ、知らないなぁ~?」
「弱いよ」
「よく言うぜ」
穂琥の質問に儒楠が答えて薪が切り返す。そんな薪の切り返しに儒楠がそれこそよく言うぜといた表情で笑った。
とにかく。明日から既に学校に行く手配を行なわなければならない。それをするためにはまず、籐下の通う、そしてこれから薪たちが通う学校へ行ける術を行使しなくてはならない。そのためにはまず学校長への直談判を要する。が。薪は簡単に言ってのける。
「何、問題ねぇよ。オレが学校入ったときと同様、眞稀で落とすから」
「え・・・」
「それ・・・・」
眞匏祗のトップとしてやっていいのか・・・・。そんな疑問も持ちつつ、儒楠と穂琥は顔を見合わせて小さく笑ったのだった。