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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第三章 ○●愨夸の企て編●○ 第八十話 真実の姿を打ち明けろ

 とある話を、顔を引きつらせて聞いている少年がいる。それを知っていてあえて間を取らず話を進めるさわやか笑顔の少年。引きつっているほうの少年がやっと声を上げる。


「ええっと・・・?それは本当のことで・・・・?」


それに対してさわやかに微笑む少年のほうは答える。


「本当だ。嘘言うと思っているのか?」


一層爽快に笑った相手を見て今度は落胆の表情を見せる。そんな表情を見せた籐下隼人は目の前で頬杖をついて堂々としている友に苦笑いを向けていた。


「い・・・いや・・・・。嘘は・・・無いとは・・・思うけど・・・」


そんな籐下隼人の友、薪はその言葉を聞いてさらに笑みを深める。無論、籐下がそれを言うとわかっているからその笑みなのだ。


「いや、でもね!?いくらなんでもそれは無いと思うんだよ・・・?!その・・・『眞匏祗の存在を知らせる』って・・・!!」

「まぁ、危ない賭けではあるさ。でも仕方ないんだよ。これから動くためにはそれが必要な行為なんだよね」


今までの生活の雰囲気からして薪の行動に無駄がないことくらいは籐下とてわかっているが、流石にこの状況を作り出すのは中々難しいものがあるのではないかと思うのだ。


「穂琥は未だに眞稀のコントロールが下手だからな・・・・。他の眞匏祗に見つかったときがまずいんだよ」


地球に住んでいるとは言え、眞匏祗からしてみれば人の暮らしなど関係ない。いついかなるとき、人まで刃を向けてくるかわからない。そんな折にこちらも眞匏祗だと明かして変に騒ぎになってもその方が困る。故に、此方からはっきりと宣言をしておく必要がある。そう言った理由。


「なるほどなぁ~・・・。わからないことも無いけど・・・。で、でもそんな簡単に信じるか?この・・・ご時勢にさ・・・」

「それは大丈夫」


薪は自信ありげにニヤリと笑った。その笑みにぞわっと悪寒を感じたのは何も籐下だからというわけではないだろう。その笑みからは否が応でも納得させる自信があると言いたげなものが伝わってくる。その方法など、まるで問わないかのような。


 ただ、問題は素敵でかっこいい魔法使い。それで終わらないこと。あくまで眞匏祗とは恐怖の対象であることを伝えなければならない。そこが最も大事で最も大変なこと。だからこそ、演舞として儒楠を相手に選んだのだ。『本気』で戦うために。眞匏祗同士の殺し合いじゃないにしろ本気の戦いが人間にとっては恐怖であることを薪も知っている。故にそこをしっかりと伝えなくては勘違いした者が浮かれて眞匏祗に手を出してしまっては困るのだ。


「オレの保護があったとはいえ、敵を目の前に安心して座っていられるか?」


薪のその言葉に籐下はぞくっとした。少し前。薪の家で敵に襲われた。その際に薪によってシールドで護られていたにせよ、あの時の『もしかしたら』の恐怖は今でも抜けていない。


「眞匏祗だってよしあしがある。それは・・・人間と同じさ。ただ、違うのは人間に眞匏祗が手を出したら人間に生存の確率はまず無いこと。そんな事は駄目だ・・・。オレはもう二度と・・・」


薪は言葉を切る。籐下はその言葉の真意を知らず首をかしげた。


 相手が籐下であることを忘れて危うく語るところだった。薪は軽く首を振ってその話を打ち切った。


 とにかく。薪からわざわざこんな話を持ちかけたのにはちゃんとした訳がある。それは無論、籐下にやってもらいたいことがある、ということ。籐下はどこか嫌な予感というものを覚えながらその話しを聞く。


「ま、簡単な話さ。眞匏祗という存在を噂立てて欲しいんだよ」

「う・・・。オレ、かなりイタイ子じゃん・・・」

「そ、いうなって。頼むよ」


軽い笑顔でそう言われて簡単に折れる籐下。薪にこれ以上何かを言ったところでどうせ丸め込まれて終わるのだからここで折れておいたほうが時間の無駄は少ないだろう。そんな折に、薪が急にまじめな顔をしたので何事かと身構えた。


「なぁ、綺邑って覚えているか?」

「え?あぁ、あの綺麗な?」

「ん・・・?」


籐下はふっと、あぁ、例えを間違えたとすぐさま頭の中で修正をかける。


「この間穂琥ちゃんと一緒にいた女性だよね?薪は居なかったけど」

「あ~、そうそう。それ」


薪が理解する。薪に対して見た目の綺麗、汚いの容姿で判断させるのはこくな話だ。面倒だが。


「それのことで少し話しておきたいんだよ」

「え?でも、あの人ってなんかさ・・・眞匏祗?って感じしないんだけど・・・」

「そうそう。だからそれをね。ただオレの判断で言っていいかは疑問でね」

「ん?」


薪が言葉を躊躇しているのが意外だった。ただ、どこか躊躇というより何かもっと別のものを感じた。何かを・・・狙っているような。


「とにかく。勝手なこといって後で怒られるのは嫌だけど。お前になら言おうかな、とか思うんだよ」

「い、いいのかよ・・・?」

「ま、問題はないか・・」

【貴様、そこまでして私に出て欲しいか?】


聞こえてきた威嚇するような低い声。それに薪はどこか焦ったような表情で笑っていた。その声だけの相手がどこか怖いと思えた。そして普通に聞こえる声とは全く違ったその異質な声にも驚く。そしてそれと同じ違和感のある声を発する薪にも驚いたが最早コレが普通なのかと諦め始める籐下だった。


【色々な事情はわかっている。でも頼むよ。紹介、していいか?】


薪の言葉に回答は無い。薪は困ったような表情を浮かべて唸っていた。


【ん~・・・。わかったよ・・・じゃぁせめて・・・】

【断る】

【即断!】


薪はまた何かを考え始めた。それを見ていた籐下としては果たして今ので会話が成立しているのかが疑問で仕方ない。薪の質問に対して相手は何も答えていない。謎が深まる声と薪の会話。


【断ると言った。私は暇ではないんだよ、貴様と違ってな】

【おっと、それは心外だな。オレだって暇なわけじゃないぜ?だから急ぐためにもお前に・・・】

【黙れ、腐れ外道が】

【すみません・・・】


薪が言葉で押し負けているこの空気に籐下は目を丸くする。しかし、決して薪が折れているわけではないということは薪の目を見ればわかった。何処まで薪は打たれづよいのだろう・・・。


【あ~、でもオレ、知っているんだよね~?人間と一緒のほうが動けるって言うことさぁ~】


薪の挑発的な言葉に籐下は首を傾げる。あまり挑発するようなことはせずに言葉巧みに相手を陥れる・・・否、誘導するのが得意な薪であるはずなのにこんな幼稚な挑発をすること自体が薪にしては珍しすぎて籐下は頭を抱える。


「な!?」


突然目の前に人影が現れたので驚いた声を上げた。その影は地面より少し上を浮遊するように存在していた。ゆっくりとその影を見上げるとフードで完全に覆われた背面からではその容姿を確認することは出来ない。


「いや・・・あの・・・本当すみません・・・」


何故か薪の謝る声が聞こえたので籐下は薪を見てさらに驚愕した。


 あの薪が!あの!いつもクールで飄々としているあの薪が!!たった今現れたなぞの人影が足蹴にしている。地面から少し浮いた地点に居るために薪の頭を踏み潰すには丁度良い高さのようだが。そんな状態にもかかわらず薪はとりあえず謝りつつも足をどかそうと/はしていない。Mか!って思ったけれど薪の雰囲気からしてこの人は強いがためにその足をどけるだけの力が足りないのかも知れない。


「だ、誰・・・?」


籐下が思わず声を出すと人影がこちらを向く。


「名は綺邑」

「・・・え?きゆ・・・っ?あれ・・・・ふ、雰囲気が・・・あの・・・」

「ん?いつもこうだけど?」


籐下が戸惑っているのを見て薪が少し疑問そうな表情で答えた。それでも籐下の様子は変わらず、何かと比較してまるでこれは別人だと言いたげな表情で固まっている。


「私は其れが嫌いなんだよ」


冷たく言い放たれた言葉に籐下は頬を引きつらせながら納得した。薪が嫌われるということが実際、存在したのか・・・とか思いつつ。穂琥と共に居たときも確かに刺々しい感覚はあったが、まさかここまでの刺々しい感じがするものだとは思ってもいなかった。


 さて、と薪が切り替えをするように声を掛ける。それに鋭い目つきで呼応する綺邑。薪が籐下に向かい今後、綺邑と組んで行動して欲しいことがあると話を持ちかけてきたのだった。


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