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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第八話 魂石と共鳴する意味

 瞑は語る。誰にも言ってはならないと。そうして渡してきた小さな箱。ここに有らぬ者たちが来たときにそれを渡すようにと言った。そうして瞑は立ち去る。その立ち去る間際に振り向いてふいに笑って言った。


「礼だ、と伝えておいて欲しい」



 幸奈はその箱を薪に手渡す。薪はそれを手にした直後、その中身を悟った。そっとあけるとやはり思ったとおりのものが入っている。しかし、形は想像とは全く異なるものだった。


「魂石、だな」

「そのようだな」


薪の言葉に綺邑が反応する。しかし、穂琥にしてみれば薪の持っている箱の中身が魂石であることがわからない。魂石とは本来、掌に乗るくらいの硝子玉のようなものだ。その美しさときたらそれに匹敵するものなど有りはしないほどに、命の輝きだ。


 箱の中に入っていたものは色は完全にくすみ、不透明であったし形も球体ではなく歪な、星型のように凹凸のあるものではっきり言えば見るも無残な形であった。


「仲間の?」


穂琥がそっと尋ねる。しかし薪はそれを否定する。眞稀は今までに会ったことのないものだと。そして魂石だと知ってからの綺邑の挙動の変化に薪は疑問を覚える。そして一体綺邑が何を考えているのかを出来うる限り考える。そうして見つけた一つの可能性。


「幸奈が眞匏祗だとでも言いたいのか?」

「可能性が無い訳では無いな。共鳴している」

「なんだよ、共鳴って。確定じゃねぇか」


綺邑の言葉に薪は鼻で笑うように返した。しかし綺邑はそれでも回答をはぐらかす様な言葉しか言わない。


「何だよ、それ。何なら試すか?」

「好きにしろ」


薪は幸奈に向き直る。そして幸奈が眞匏祗か否かを調べると言う。幸奈は混乱する。


「大人しく黙っていればそれで良いんだよ」


綺邑の言葉に幸奈は身を縮める。しかし、理解も出来ないこの状況でそんな事を言われる幸奈が可哀想過ぎて穂琥は綺邑に噛み付く。


「何それ!そんな言い方しなくてもいいじゃない!」

「煩い。少しは黙っていられないのか」

「んな!?」


綺邑の返しにイラッとする穂琥。今すぐにでも殴りにかかりたい衝動に駆られたが、そこはなんとか抑えた。


「それに眞匏祗な訳あるの!?」

「それに関してはお前が一番わかるだろう」


返答した薪の言葉に穂琥は返すことが出来ない。確かに事実だ。自分はこの年近くなるまで自分が眞匏祗であることを知らなかった。正確には覚えていなかった。故に幸奈も、同じ事。さらに幸奈の場合、体内に魂石を宿しては居ない。だからこそ、体外に眞稀がもれ出ることが無かった。薪でも気づくことが出来ないほどに。


 綺邑に急かされて薪は調査にかかる。


 幸奈の前に立った薪はその幸奈の足元に陣を描き始めた。その光景はきっと幸奈にとっては信じられないことかもしれないけれど、今更それに驚くことも無いと幸奈は意外に冷静にそれを見ていた。


 薪が描く陣。ペンなどの書き記すものを一切持っていない薪の指から発光色の橙が生み出されている。眞稀より発せられたもので描いているので、それなりに眞稀を有している者でなければ陣を書き上げる前に眞稀が尽きて失神してしまう。


「さて。これで準備はオッケイ」


書き上げた薪は陣から出て陣の手前に諸手をつく。そしてその陣へ眞稀を流し込む。


 陣は橙の色をより深めて輝いた。それを見て薪はにやりと笑って立ち上がった。その際に陣も消え去った。


「決まりだな」


薪は腰に手を当てて綺邑のほうへ目をやる。綺邑は不機嫌そうに鼻を鳴らすだけだった。


「えと・・・?」

「あの・・・」


穂琥と幸奈の声が重なる。薪はそれを聞いてそちらに目をやる。一瞬、穂琥を軽く睨んでから幸奈のほうに目を移す。


「陣が無色に変化すればそれは眞稀を有していないということで人間。橙がより強まればオレとその陣の中央に立っているものの眞稀が共鳴したということでより一層橙に輝く、つまり眞匏祗だということ。つまり、あんたもオレらと同じ、眞匏祗ということ」


幸奈は呼吸を少し荒げて不安そうな顔をしている。それも当然だろう。


 薪に睨まれて萎縮したが、知らないものは知らないのだから仕方がないだろうと内心で文句を言った穂琥だったが、それを悟った薪がまた睨んできたので今度は本当に萎縮することにした。眞匏祗の事を知らなさ過ぎると自覚する穂琥だった。


「帰る」


綺邑が無造作にそう言って姿を消した。幸奈はそれに一瞬びくっとしたけれど、薪が姿を現すことが出来るのだから消す事だってできるさと、乾いた笑いを立てたので幸奈はひとまず納得することにした。


「さて、幸奈さんさ」

「・・・は、はい・・・?」


薪は幸奈に向き直る。


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