第七十九話 新たなステップ
話し終わった後、儒楠は少し呆れたようにそれを否定した。
「いやいや・・・それは無いんじゃないか・・・・?」
無論、穂琥もそれに同意見だ。しかし薪はそうだと言い切る。
「そもそも神々だって思っているんだ。末端である綺邑もね。だからこそ、綺邑は協力を拒んだんだよ」
薪のその言葉にどこか納得せざるを得ないものがあった。
「信じなさい。オレの独断ではないんだから」
頷き、納得した穂琥と儒楠を見て薪は何度か頷いた後に、切り替えるように声を上げた。
「そ、こ、で」
その言い方に儒楠は長年の勘で嫌な予感を覚える。
「オレの相手方やってよ」
少しの沈黙が流れる。
「ですよね・・・・・・」
後に発した儒楠の言葉。
「はは。意気消沈。まぁ、そう落ちるなって。ヘボいのを相手して臨場感出さないわけにもいかないだろう?」
「臨場感・・・・ねぇ・・・・」
テンションがひどく下がった儒楠に薪は尚も高らかと笑う。
「それで・・・・?格好はどうするんだ?やっぱ、人のまま?」
「ん~・・・。それが問題だなぁ。替装するとマジになるからなぁ~。オレだってお前相手に加減できるとは思えないし」
「いや、加減してください」
とぼけるように言う薪に対して土下座するように儒楠が言葉をかぶせる。
そんな会話を蚊帳の外で聞いていた穂琥はふと疑問に思う。薪の強さなら今までに幾度となく見てきたし、なにより感じてきた。しかし、儒楠の強さは知らない。全く。そもそも戦っている姿すら見たことがない。一体どのくらいの強さを持っているのだろうか?薪が加減できないといったということはやはり相当強いのだろうか。
「ま、頼むよ。オレも『頑張って』加減するから」
「いや、お前さんさ・・・。その頑張ってを強調するの止めよう・・・」
ははは、と笑う薪に呆れたように肩を落とす儒楠だった。
「と、言うわけでオレらの二つ分の服装を綺邑に頼んで用意してもらうんだわさ」
「え?わざわざお姉ちゃんに?」
「そ。いざって言うときのためにね」
「いざ・・・?」
薪は不敵に笑って綺邑とコンタクトをとる。かなり不機嫌な綺邑の声が聞こえたと思ったらふっとまぶしい光があってそれが消えたときには衣服が二着、そこにおいてあった。
「わぁ!なんだか懐かしい感じだわぁ!!」
「いや、年齢的にはまだまだだろうに・・・・」
穂琥のテンションに儒楠が突っ込みを入れる。
「さて。準備も出来たし。活動を開始しますか」
「久々の学生生活だね!」
「おう」
薪と穂琥は綺邑の置いていった『学生服』を身に纏う。そうして新たなステップへと突入する。