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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第七十五話 無事の報告

 村から少し離れたところで薪は姿を元に戻してすぐさま移動術で移動を開始した。そしてどう考えても家へ向かっていないことに気づき尋ねようとしたが移動術中は思うように口が開けないために諦めた。


 そうしてたどり着いたのは豪邸の前。見覚えのある大豪邸。


「ん?何処だ、ここは」


知らない儒楠が不思議そうな声を上げる。穂琥は俯いたまま薪をちらりと盗み見てから儒楠にそっと言う。


「て、天皇陛下のいらっしゃる屋敷で御座います・・・」

「天皇陛下?あぁ、地球の偉いやつか」


―じゅなんくぅん!天皇陛下を相手にそんな言い方ぁ~!


内心でそんな風に叫んだ穂琥だが実際目の前には天下の愨夸がいるわけだから一体どうしたものかと悩むものだった。


 薪は以前と同じ様にずかずかと中に入って行く。


「もう少し謙虚に歩いて欲しい・・・」

「別にいいだろう」


そう言って薪はまたあの移動できる小さな部屋に入る。


「ね、思ったんだけど。わざわざこんな所に入らなくても直ぐに行けばいいんじゃないの・・・?」

「いや、特殊な結界で護られているからどんなに凄い移動術を持っていてもここに入らなければ移動する事は出来ないよ。だから愨夸以外に小夜さんに会うのは人間同様難しいのさ」

「へぇ~・・・・」


小夜さん・・・。なんとも軽い響き。穂琥は小さくため息をついて薪の言うがままに移動をすることとなる。慣れているのか儒楠は何の文句もなくそれに従う。いや、そもそも天皇陛下というものが儒楠にとってはあやふやな存在なのかもしれない。


 部屋の扉を押し開けて中に入る。そこにいたのが天皇陛下、貴船小夜。薪の姿を見て一瞬驚いたような顔をしたが直ぐに表情を戻した。


「愨夸様」

「名前は教えたはずなんだがね・・・」

「・・・申し訳御座いません」

「ま、いいよ。報告。以前言った痲臨を確保しました。危険な連中もとりあえずは排除しました」


薪の言葉に小夜は安堵した表情を浮かべた。どうやら当たり前なのか、今まで相当な不安に駆られていたようだった。それでも薪の言葉を受けて安心できたためにどっと疲れが表情に出たがそれも一瞬で消えた。さすが陛下、としか言えようがなかった。


 軽くここら辺一体に結界を張ったことだけを説明して軽く頭を下げてその場を退散することにした。礼儀正しく起立している小夜にも申し訳ないという気持ちがあるので。薪たちは軽く頭を下げてその場から消える。


 その昔。今から大よそ14年前まで。小夜が敬意を『払わなければならなかった』存在がいた。しかしその14年前からパタリと来なくなって不思議には思っていた。気づいたら世代が交代し新しい存在になっていた。そして。今回の相手は『払わなければならない』相手から『払うに値する』存在へと変化していた。


 小夜はもう既に去ってしまった彼らの影をその目で追って時代の変化のすばらしさを噛みしめさらにこの世界もきっと変えることが出来るのだろうと確信を得ていた。


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