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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第六十二話 善悪の見極め

 薪が鋭く光る眼光を儒楠に放つ。それに一瞬尻込みした。


「お前も落ちたな」

「え?」


薪の予想外の言葉に驚く儒楠。薪はそっと穂琥を寝かせると立ち上がって儒楠を鋭く睨む。


「オレのせいか?それとも単に訛ったか?」


穂琥の状態は確実に術の中へ落ちている。こんな状態になるまで気づかなかったので薪も言えた義理ではないが、見ればわかる。しかしそれがわからないという儒楠のほうは力が落ちたか。


「ひっ?!」


急に偲葵が引きつったような声を上げたので薪は慌てて偲葵を抱えた。偲葵が窓をさして震えているので窓の先を見る。しかし何もない。


「い、今・・・人が・・・」


偲葵のその言葉を得て、薪は儒楠に追うように命じた。儒楠が躊躇をしたので薪は怒号を上げて追うように命じる。その怒気をはらんだ薪の声に儒楠は衝撃を受けて慌てて窓の外にいたであろう人影を追った。


 追う際に儒楠は先ほどの薪の圧力を考えて頭を振った。そして長いこと共にいすぎて曖昧になっていた事実を本気で再認識させられる。


―あぁ、あいつはやっぱり愨夸なんだな・・・


そのあまりの大きな力の前に儒楠は自らの弱さを恥じた。


 薪は穂琥をそっと抱え上げて様子を確認した。この程度のものであるのならば今の眞稀を最大限に使えない状況であっても解くことができるだろう。後は偲葵を追い出すのだが。偲葵はこの部屋を出ることを嫌がった。仕方なく、偲葵にならと薪は他言しないという固い約束を結ばせ、眞稀を行使することを決めた。


 眼を瞑って。穂琥の額に手を当てる。そしてその掌からまばゆい光が放たれる。その色は今までに観たことのない不可思議な形容し難い色。それに偲葵は見とれていると急に場チンと音がして薪が痛そうに手を振っていた。


「いってぇ~・・・。くそ、なんだよ、コレ!綺邑!綺邑!!ちょっと来て!おいってば!」


薪の声に応答するものはない。それに軽い舌打ちをした。応答がないのは当たり前のことだ。今、目の前に偲葵がいる。いくら眞匏祗であることを見せたにしても死神である綺邑の姿まで晒すわけには行かない。そんな事すらわからなくなりかけている自分の不甲斐なさに苛立ち舌打ちをしたのだった。


 少し沈んだ風で儒楠が帰ってきた。どうやら逃がしてしまったらしい。儒楠は穂琥の様子を尋ねた。薪が挑戦したところ、無理だったとこたえると儒楠は頭を抱えて座り込んだ。


「なんだ、それぇ~!もう、無理だろ!治せるやついねぇよ!!」


薪が苦笑いを浮かべながら綺邑を呼ぼうとした事を儒楠に言うと納得したように頷いた。


 それを聞けば儒楠のすることは一つだ。


「偲葵。オレと一緒にこのあたりを散策しないか?さっきの奴を見つけることが出来るかもしれないから」

「うん。薪は?」

「ここに残る。穂琥がいるからね」

「わかった」


儒楠は偲葵を連れて部屋を出る。これで人払いは出来た。それを確認してか、綺邑がふっと姿を現した。


「らしくないな」

「調子が狂うな、ここは」

「・・・・。結界のせいだと思うがな」

「結界?」

「貴様、知らずして入ったか」

「面目ない・・・」


綺邑の睨むような眼に薪は少しだけひるんで見せた。結界について綺邑は詳しく語ろうとしなかった。いや、むしろいつものことだが。綺邑はふっと穂琥の上に立つ。上、といっても常に浮いているために乗っかっているわけではない。そして一瞬だけ綺邑の力が迸った。綺邑はそれだけで十分だといって穂琥の上から退いた。消えそうになった綺邑を呼び止める。


「そんな厳しい眼をするなよ・・・。なぁ、梨杏って知っているか?」

「さ」


短く返答する綺邑。薪はそうかと答えると穂琥が眼をあけた。綺邑がいることを確認して驚いて飛び起きた。そして薪に手助けを求められたことを話し、穂琥は薪を見て小さく謝った。


「穂琥は悪くないよ。この術、案外込んだものだったからさ。オレも・・・ね。情けない話だ」


薪は悔しそうに笑って頭をかく。


「貴様、これ以上余計な事をし過ぎて私の手を煩わせるなよ。潰すぞ」

「は、はい・・・すみません・・・」


謝罪して薪は頬を引きつらせる。綺邑は薪を睨みつけてその姿を消した。


 綺邑の気配が消えたことに気づいたらしい儒楠が偲葵を連れて戻ってきた。偲葵が眠そうに眼を擦っていた。そんな偲葵を儒楠は寝かしつける。


 薪が扉のほうを凝視したので一体どうしたのかと尋ねるとさっさと歩いて扉を開けた。


「あ・・・」


その扉の向こうにいたのは梨杏。


「どうした?」


妙に優しげなその声に儒楠も穂琥も目玉が飛び出るかと思った。


「いえ・・・。少し騒がしかったので。ここの隠れ家が誰かに見つかってしまってはと・・・」

「そうか。大丈夫だ。問題はないよ、安心して良い」

「えぇ・・・。そう、みたいで何より」


梨杏は部屋の中を窺って頭を下げて去っていった。それを一呼吸置いて見詰めてから薪は部屋の中に戻ってきた。


「ねぇ~?梨杏さんのこと、本当にどう思っているの?実際さぁ、惚れているんじゃないの?」

「は?」


穂琥の質問に呆れたように薪は返す。


「何、薪。お前梨杏好きなのか?」

「お前まで言うか・・・。マジで切れるぞコラ」


呆れたような声を出す薪に、穂琥と儒楠は良言い寄る。


「違うの?」

「ち、が、い、ま、す」


強調するかのように薪は言う。それでも引かない目の前のバカに薪は仕方なくため息をつく。頭をかきながら言葉を渋る。


「ったく。まだ自信がねぇから言いたくないんだけどなぁ・・・」

「告白の?」

「冗談抜きで切れるぞ」

「すいません・・・・」


穂琥の返しに結構マジになって薪が答えたので流石に萎縮した穂琥だった。


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