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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第五話 新たな幕開け

 今感知した眞稀は全部で4つ。つまり4祇いるということになる。


 穂琥を連れて薪は敵の待つ場所へたどり着く。誓茄と他にも女が一祇と男が二祇いる。見覚えの無い顔ぶれだった。


「何用だ?」


薪の言葉に誓茄は嬉しそうに微笑んだ。


「何、こいつら。強いの?」


誓茄の隣に立った女が嫌そうな声を上げた。誓茄はそれを聞くと自慢層にお気に入りだと鼻を鳴らした。そのやり取りを見て薪は肩を落とす。


「へぇ!鼓斗と戦うのを拒否したっていうやつか?!」


その後ろにいた男が感嘆の声を上げる。さらにその後ろにいる男は此方を睨むようにして押し黙っている。


 女の名前はけい、男の方は流貴るき。ずっと黙って言葉を発していない男がべい。誓茄は相変わらず腕を組んでにやりと笑っているが、圭は戦闘態勢に移ったので薪は目をすっと細める。


「やるのか?」

「おい!?この数を前にしてやる気なのか?大したものだな!?」


薪の言葉に流貴が反応を示した。薪のその強気は圭に買われたが結局、やらるのは薪であると圭は豪語した。


「っつても戦闘するつもりは無い。『シナリオ』とは異なるからな」


圭が額に力を入れて言う。相変わらず誓茄は信徒の一戦を交えたくてうずうずしているようでさすがの圭もその様子を不思議に思ったらしく、そんなに気に入ったのかと尋ねた。


「えぇ!強いわよ~!」

「・・・・・。一戦、やりたいな」


圭の言葉。それに流貴は驚いたようにやるのかと聞いた。そうやって騒いでいる中に穂琥が少し怯えているのを薪は感じた。


 穂琥の瞳に映る4祇の眞匏祗たち。そのうち、一つだけ特殊な存在を感じる。本来、眞匏祗は眞稀を完全に消して気配を消すことは出来ない。薪とて眞稀を最小限に抑えていて普通の眞匏祗にとってはまるで消えているように感じるだけのこと。桃眼で視れば眞稀を視る事は案外容易くできる。


 しかし。たった一祇。根本的に眞稀を見ることができないものがいる。そのものに対して酷く怯える穂琥。そして様子から察するに薪もそれに気づいているようにも思えた。


「あんた、名は?」


低く、重たい声。まるでそれは鉛のように。その声が響いたとき、さっきまで騒いでいた誓茄や圭、流貴は押し黙った。


 声を発したのは瞑。眞稀を見ることの出来ないもの。その瞑に名乗ることは出来ないと答える薪。すると瞑は薪を一度鋭く視てから視線を外した。


「名は?」


再び問う。薪はその瞑の言葉に何故か焦りを感じた。一体何故自分が焦ったのか理解することすら出来ないほど、妙に焦ってしまっていた。


「断ると、言ったはずだが?」

「何故語らぬ?」

「・・・語れぬ理由があるからだ」


薪の言葉全てで瞑はまるで何もかもを見据えていそうな気がしてならなかった。


 一方の、誓茄たちは正直驚きで言葉を失っていた。滅多に声を発しない瞑だが、今、目の前にいる少年に興味を持って話しかけていることが意外で仕方なかったのだ。普段から全く喋らず実際、声を聞いたのだってこの長いときの中で2、3度といっても過言ではない。そうだというのにここまで語っているとは驚く以外に無かった。


 瞑は軽蔑するように薪を睨んだ。しかしその後に目を伏せて呟くように言う。


「エンドと同じ『気』を感じたが。気のせいか」


薪はその言葉に全身に鳥肌が立った。自分の奥からこみ上げくるものは何だ。驚きか。いや、きっと違う。これは悲しみと憎しみ。そしてそう感じた自分に怒りが沸く。


 瞑はそのまま喋らなくなった。薪はそんな瞑を凝視する。しかし、瞑はもう言葉を発する気は無いようだった。


「あの、瞑、さん?」


穂琥が急に会話に参加した。薪は驚いて穂琥に振り返る。穂琥の瞳に残る眞稀を感知して僅かにでも開眼したことを知る。


「貴方、一体なんですか?『何』ですか?」


穂琥の質問に瞑は不機嫌そうに顔を歪めた。しかしやはり何も言わない。瞑の中で既にもう何も言う必要がないと判断したのだろう。


 その異様な空気に気圧されていたのは何も薪だけではない。当然、瞑と共にここにいた他の3祇もダメージを受けているようで若干の狼狽した様子を見せていた。


「引いてもらえないか?」


薪の声に賛同するように流貴が声を張る。


「おし、ここは引こう!一度戻って体制を立て直そうじゃないか?!」


それに同意する誓茄と圭。無論、瞑も引くつもりのようだった。少しだけ安堵する薪。しかし、瞑がふっと薪を睨む。薪はその目に一瞬だけ心臓を貫かれる感覚を覚えた。前にどこかでそれに似た何かを感じたことがあるような。


「あんたと遣り合う時を待っているよ」


先程までの話の中で一番重たいその声にぞっとする薪。本能が告げる。この男は交えてはいけない、何があっても、と。


 そうして彼らは姿を消した。全身から力を抜いた薪は腰を下ろす。そしてどっと疲れた息を吐ききってから穂琥に投げかける。


「なんであんなこと聞いた?」

「ご、ゴメン・・・。でも気になって・・・。だって・・・だって眞匏祗じゃないよ!アイツ、何!?だって!!」

「落ち着けって」


薪の宥めるような声に穂琥は黙る。穂琥のいっていることはおそらく事実だ。眞匏祗であるのに桃眼ですら眞稀を視る事ができない。それにあの異様な空気。普通の眞匏祗とはとても思えない。


「ねぇ」


神妙な面持ちで穂琥が薪に呼びかける。薪は目だけを穂琥に向けて反応を示した。穂琥は少しだけ黙ってからそっと口を開いた。


「綺邑・・・さんって、眞匏祗とは全く違う生き物だよね?」

「? 当たり前だろう」


穂琥の質問に疑問の表情を浮かべる薪。薪の返答を聞いてさらに押し黙る穂琥の様子を見て、薪ははっとした。


「お、おい・・・?まさ、か・・・」

「い、いや、わからないけど!」


僅かな可能性。しかしその可能性を否定することも出来ないことも事実。綺邑にそのことを尋ねてみても構わないかもしれないが、取り合ってくれるとはとても思えないのが現状。


 瞑は死神かもしれない・・・-


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