第四十一話 言葉は時に力を有する
茶色身がかった黒い髪がふわっと揺れたかと思うと見たこともない美しい空色の髪になる。服装も不思議なロングコートに変わる。そしてその瞳も髪と同じような煌く空色に変わった。一体なにが起こったのかが理解出来ない。動揺している自分を放って二人の少年少女は話を進めていく。ただ、爆発音が聞こえてから少年のほうはどうも苦しそうだった。
苦しそうに息をしている薪を見て不安になったが表情がそんなに大変そうでもなかったのでそうでもないのかと少し落ち着く。しかし、薪の表情がどこか引っ掛かっているようで気になった。
「痲臨が相手だからなぁ・・・」
薪がぼやく。やはり相手が痲臨となるとどうやらその力を抑えるのも一苦労なのかもしれない。しかしそのぼやき方もどこか腑に落ちないようで薪の言葉に張りがなかった。しかしここはこうして回収したので導師に向く。
「さて、導師よ。申し訳ないが『宝』は回収させてもらう。その代わりといってはなんだが、これを祭るといい。あそこに祭られている『宝』よりは御利益あるから」
薪が渡したのはガラス球のような物が連なっていて首飾りのような物だった。
少年が差し出したモノ。これに果たして力があるのだろうか。受け取ってみるとそこからはなんとも温かな気配を感じた。なんともいえぬ安堵感。これは本当に効き目があるのかもしれない。彼女は少年に眼をやる。彼は洞窟の奥に祭ってあった『宝』を中に入らずその手中に収めた。一体どうやってかは知らぬが、手で軽く手招くようにしただけで勝手に『宝』のほうから飛んできた。
「それじゃ、これはもらって行くよ。いいね?」
「はい」
「それでは、このことは他言しないように。お願いできますか?」
「・・・はい、と口だけで言って信用してもらえるのでしょうか?」
「えぇ、します。ありがとうございました」
少年は嬉しそうに笑みを浮かべた。それから少年の腕を少女が慌ててつかんでさよならとかわいらしく挨拶をすると『まほう』のように消えた。
少年が置いていった首飾りを祭るために住民全員がそれに取り掛かった。数名はまだ文句を言っていたものいたが導師の言葉で何とか納得させた。そしてこのときのこの判断が良かったことなのだと、あの二人の少年少女に感謝するべきなんだと思うようになるのはまだもう少し先の話。