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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第三十八話 見分けた開眼の差

 薪もすっかりよくなって通常通り、とまでは行かないまでも元気を取り戻した。朝になって起きてくると部屋で軽いストレッチをしている薪が居たので穂琥はなんとも安堵した気持ちになった。


「おう、おはよう」

「おはよう」


軽い挨拶を済ませる。身体を伸ばしながら薪がこれからの予定を打ち明ける。


「よし。だいぶ身体もよくなったし。痲臨探しに行くぞ」

「・・・・?」

「ほくちゃぁぁん?」

「ももも、申し訳ございません!」


穂琥を「ちゃん」付けで呼ぶときは少なからず穂琥が失態をしたときだ。なので無意識に謝る穂琥。


 理解していない穂琥をそのままにして強制的に薪は移動術で移動を開始。その間、誘拐だの拉致だの叫んでいたので落とすぞと怒りの叱責を入れて黙らせる。そうして着いた先は薪が気を失うほどの争いをしたあの場所。


「やっぱり痲臨はここにはなさそうだな」


そもそも、こんな争いを始めるきっかけは痲臨だ。気を失いそうなほど危険な状態ではあったがその痲臨の気配があれば気が吹っ飛ぼうが回収に向かっていた。それでもそれをしなかったということは痲臨の気配はここには無かったということ。眞稀的にかなり限界に近かったために、もしかしたら見落としたかと思って確認のためにここに来たがやはり気配は無かった。


 ならどうするかといえば考えるまでも無く李湖南を探し出すほか無い。寸前まで追い詰めてしまったがそろそろ意識くらいはあってもいい頃合だろう。


 ふっと薪が穂琥を見て動かなくなった。穂琥はそれに少し驚いてそれからなんとなく焦る。急に薪が鼻の先が当たりそうなくらいに近寄ってきたからだ。幾ら兄妹でもこの距離に顔があるのは気が引ける。


「ちょっと・・・・?何・・・?」

「なに?」


いや、それはこっちのせりふだ。穂琥はそんな事を口走る。瞬きもしない薪の眼が見ているのは穂琥の『眼』。


「開眼、しやすいだろう・・・?」

「え?あ、うん。帰ってきたその日にお姉ちゃんが使いやすいようにしてくれたんだ」


綺邑は一体どこまでこの穂琥を気に入ったのだろうか。薪はその意外なことに正直驚きを隠せないでいた。


「それで?どうやって李湖南を探すの?幾ら薪でも難しいでしょう?」

「お前がやるんだ」

「え?!」


驚く穂琥を無視して薪は穂琥に開眼するように命ずる。無論、桃眼ではなく白眼のほうを。言われるままに開眼すると薪はまたまじまじと穂琥の眼を見る。


「ん。母上のとはまた違うな、雰囲気が。雑な感じがするな」

「え・・・」

「雑で大胆でコントロールがいまいち出来ていない感があって」

「何それ!それって・・・」

「でもすごく強大で繊細なところがあってどこか美しい」


薪の言葉に偽りは無い。むしろ今の薪は穂琥の白眼に見入っていて自分が声を出していることすらほとんど無意識の状態にも思える。なんだかそれが薪の褒め言葉ととっていいのか悩むところだった。ただ、今それを素直に薪からの褒め言葉だと受け止めると赤面して頭がおかしくなりそうだったので頭を空にする。そこでふっと気づく。


「李湖南の眞稀だ・・・!」

「お、見つけたか」


穂琥から離れて腰に手を当てる薪。まるでそれを穂琥が言うのを待っていたかのような雰囲気だった。


 白眼は『相手を離さない』もの。故に一度でも攻撃を加えれば遠距離にいようがその位置を把握し、その把握できた時点で攻撃可能の技。故に黒眼よりも反則に近い技だ。そして何より。この白眼と黒眼を両方持ったとしたらそれは最早反則の領域を超える。


「薪は持っていないの?」

「おう。持ってねぇ。でも過去にいたらしいけどな」

「え!?」

「歴代の愨夸の中で。詳しくはオレも知らん」


薪でもわからない事が眞匏祗の歴史の中であるのが少し意外だった穂琥は面を食らった気分になった。


「おし。行くぞ」


薪は穂琥の腕をつかんで即座に走り出した。その速さは目玉が飛び出るくらいだった。


「ちょぉ!?病み上がりがそんなかっ飛ばしてどうするのぉ!!」

「うるせぇ。今逃がすよりはましだって」


薪はさらにスピードを上げる。薪は実際、自分自身のみで走ったら一体どの位早くなるのだろう。穂琥はこの速さにむしろ呆れを感じていた。


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