第二十話 密かな不安
絶えず頭の中で回る神の言葉。薪はそれを頭から無理やり振り払って軽くした打ちした。別に神に舌打ちしたわけではなく自分の弱さにだ。
「運命を導く神と崇められていた・・・っけな」
簾乃神のことを思いながら薪はそんな風に考えた。そんな風にぼうっとしていたから薪は見事に目の前の岩に気づかず激突する。
「いって・・・ぇ・・・。くそ・・・・」
神の予言とは大いに当たるものだ。それを直感と本能で感じ取って薪はため息をつく。
―災いが近づいている。あの娘に嫌な感覚を覚えた。ぬしらに幸運を
薪は再び舌打ちをする。
翌日、薪はいつまでも寝ている穂琥をたたき起こして(おそらく部屋からは穂琥の絶叫が聞こえたことだろう)薪はさっさと部屋を出て行く。
寝ぼけながら降りてきた穂琥に早く顔を洗って来いと命じる。それに呑気の呼応する穂琥の背を見て薪は小さく息をつく。決して呆れているわけではなく。不安で不安で押しつぶされそうで。決してあってはならないこと。
―まさか穂琥を失うことになったら・・・
薪はそんなよからぬ考えを頭から無理やり遠ざける。無い。ありえない。穂琥は絶対に護る。おのずと身体が震える。
洗面所から戻ってきて席について飯~と要求したが薪の返答が無いために薪を見ると薪が小さく震えているように見えて穂琥は目を疑った。薪が?不安を覚えた穂琥が薪に安否を尋ねようとしたがそんな不安、薪の一言で簡単に吹っ飛んだ。
「飯がまずくなるからもう少しまともな顔していろよ」
「んだとこらあぁぁ!!」