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眞匏祗’  作者: ノノギ
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第十四話 目の前の大きな壁

 次の目標は身体のどこに魂石があるのかを探し出すこと。その魂石を、破壊するにしろ治すにしろ何処に在るかわからなくては施しようが無いからだ。


「え?魂石の位置?みんな同じじゃないの?」


穂琥の言葉に薪は頭を抱える。そしてさも可哀想な子を見る目で見つめた薪だった。魂石は個々の自由に場所を決めて個々で守っている。薪の場合は右の脇腹辺りらしい。穂琥は自分で何処にあるか知らないが、それを薪に言うとまた叱責を喰らいそうだったので黙っていることにした。


「とりあえずは魂石の破壊をしよう。とはいっても魂石を破壊するなんてとんでもないことはできないからオレが擬似的に魂石を眞稀で作るからそれを壊すように」

「はい」


持っていた眞稀を薪はほいっと上に放り投げた。そしてぱっと消えたその眞稀を見ながら軽く薪は言った。


「隠したから探して壊せ。制限時間10分」

「え?!10分!?それ短・・・」

「はい、スタート」

「ふえぇぇん!」


文句を言う時間も無く穂琥はそれを探すことに宣する。


 多少の時間はかかったが、そこそこ簡単に見つけることが出来た。よって次は体内にある魂石を探すこと。この広い空間から見つけることが出来たのだからきっと簡単だろうと高をくくっていた穂琥は正直心が折れた。この小さな『身体』という媒体にはその魂石と同調した眞稀が流れている。よって見つけることが全く出来ない。あちこちに似たような塊が滞留している。全く困ったものだ。


 薪は穂琥の様子を見ながらどうするべきか悩んでいた。ここまで長い時間桃眼を使っていていいものかわからない。薪は無論戦鎖であったからこんな長い間使っていたらへばるどころか下手したら失明、あるいは死ぬかもしれない。けれど相手はあの紫火の血を濃く継いだ穂琥で療蔚だ。悩む。


「痛い!」


急に穂琥が目を押さえて座り込んでしまった。薪は慌てて穂琥に駆け寄った。


「大丈夫か!?」

「う、うん・・・なんとか・・・ごめんなさい・・・」

「・・・。いい、謝るな。閉眼できるか?」

「う・・・」


穂琥は辛そうに目を瞑っている。薪はそんな穂琥の目にそっと手を当てる。そして強制的に穂琥の目を閉じさせる。そしてふらついている穂琥を抱えて平らな座れる場所へ移動する。


「ごめんなさい・・・」

「謝るなって。無理をさせたのはオレだ。謝るのはオレの方だ、悪かった」

「そんなの・・・・」


薪のその言葉に穂琥は続ける言葉が出なかった。休憩しようといった薪の言葉に頷くだけだった。


「オレは用があるから何かあったら声を掛けろな」

「え、あ、うん。用って?」

「オレだって修行くらいしないとな」


薪はそう言って穂琥から少し離れたところに腰を下ろした。それからピクリとも動かなくなってしまった。果たしてそれの何処が修行なのかわからないが穂琥はただその様子を見ていた。


 穂琥はそっと開眼する。そして魂石の入っている『身体』へ目をやる。やはりどう見ても何もない。痕跡らしきものを発見することは全く出来ない。ため息をつく穂琥はそっと閉眼しようとして辺りが暗くなったことに気づいた。暗いとかそういう問題ではない。視界が無くなった。桃眼の無理のし過ぎで視界の線を切ってしまったのかと焦ったが、突如、目の前に巨大な見たこともない大きな白い扉が表れた。


「な、な・・・・何これ!?」


仰天する穂琥だが辺りを見回してもそれしかない。この暗闇の中でその扉は白く光って浮き上がって見えた。穂琥にとってそれは扉というより何処までも続く壁に見えた。


 ふと、その扉の麓に人影を見つけた。


「あの・・・?」


蹲ってまるで眠っているようだった。全身を布で包み顔すらその布で見えない。しかしその姿は印象的だった。その布の上から鎖で巻かれ拘束されていた。とても小さな小柄な身体に。


「あの・・・よろしいでしょうか?」


穂琥の言葉にその身体がもぞっと動く。そして顔も上げずにそれは声を発した。


「随分と可愛らしいお嬢さんだねぇ」


声からして老婆のようだった。しゃがれた声で喋るのも辛いのではないかと思えるくらいの声だった。


「ふぅん。以前来た者より頭の出来が違いそうだなぁ」

「んな!?私の頭が悪いとでも言いたいのかー!」のかー!」のかー!」


広いこの空間で穂琥の声は木霊した。その老婆は顔が見えないからなんとも言いがたいが明らかに驚いた様子を見せ、その後、さも面白そうに笑った。


「くくく・・・。我が言った『出来が違う』とはそういう意味ではないさ」


小さく微笑するその声は聞いた感じではそうでもないが何処と無く穂琥はこの老婆の心が本当に笑っているように感じた。


「我は門番。この門の番をしている」


老婆はそう言った。扉だと思っていたコレは何かを繋ぐための門だったらしい。


第十五話 大きな門の向こうにあるもの


 こんなに大きな門、見たことない。


 目の前のそれを見て穂琥にはそれしかいえなかった。しゃがれた声で老婆、門番は不気味に笑う。


「ふっふっ。以前来た者もそのようなことを言っておったなぁ」

「以前、さっきもそう仰っていましたけどここには他にも人がいらっしゃっているんですか?」


穂琥の問いに門番は肩を揺らしてくっくっと笑った。ここに来るものは皆『人』とは言わない。穂琥はそれを聞いてはっとして頭を抱えた。また薪に怒られる。


―こんなに大きな門は他に存在しないだろう


門番が急にそんな事を言った。穂琥が首を傾げると門番は前回ここに来たものがそう言ったと伝えた。


「ここは何なのですか?」

「門、さ」


それはわかるのだけれど。知りたいのは何の砦となっているのかということ。


「果て無き力を手に入れんとする者、この門を潜るが良い。さすればその果て無き力を授けよう」


門番の声が不気味に響く。過去にこの門の前に来たものの数は忘れた。しかし潜っていった者の数ならしかと記憶している。


「わずかに2祇だ」


その数に穂琥は身を引く。数多くの眞匏祗がここを訪れたことはわかった。しかし通ることができたのはその数。ならば・・・。


「私には無理ね」


穂琥は視線をとして静かに笑う。


「弱いからか?護って貰っておるだけだからか?そんなものは関係などありはしないさ」


門番の声が強く響いた。


「皆一様にして持っておらんかっただけのこと。とある、大切な『あるもの』が」


門番は低く声を唸らせる。


「ぬしにはあるか?」

「ある・・・もの?」


それが何か穂琥には知れない。以前来たものは少し悩んだ後に自信ありげにそれを自分は持っていると言って潜って行ったそうだ。


 自分が持っているあるものに、自分で気づくことが出来たとき、この門を開けることが出来るという。穂琥は悩んだ。おそらく今の自分にそれは無い。いや、あるのかもしれないけれどそれが何であるかを知ることが出来ない。ならばここを無理に通ろうとする意味は無い。では、穂琥のするべき事は一つだ。


「門番様。お願いです。ここから出してください。今の状況ではいくら考えても私には無理です。ですから一度出してください。そしてその答えがわかったとき、再びここにお招きください」

「くっくっくっ。面白いなぁ。良いだろう、招いてやろう。ただし我を呼ぶぬしの声がこの耳に届けばな」

「きっと届かせてみせます」


門番は鼻を鳴らすように笑う。そして目を閉じることを促す。穂琥はそっと目を閉じた。その時脳裏にふっと何かが過ぎって行ったような気がしたが急に周囲の感覚が変わって体が急に揺さぶられたので驚いて目を開けた。


「穂琥!」


目の前には今までに見たこともないくらい真っ青な顔をした薪の顔があったのでそれに驚いた。


「薪・・・?」

「穂琥・・・?大丈夫か? あまり心配かけさせんなよ・・・」


心底ほっとしたように薪は穂琥から離れた。


「薪、顔真っ青だよ?大丈夫?」

「はあ~・・・。誰のせいだと思ってんだよ・・・。急に眞稀すら感じなくなったから驚いてお前を見たらまるで死んでいるみたいだったから・・・焦ったよ・・・」


薪の心底心配している顔を見てなんとなく可笑しくなってしまったことを恥じながら穂琥は大丈夫だということと心配をかけた謝罪と礼を述べた。肩を落としてため息をつく薪の顔色が大分元に戻ったので安心した。


 ともかく、身体の状態はとてもいいと言うことで修行に戻ることにした。薪は少し心配そうだったけれど大丈夫だということに負けて修行に移った。


 事もあろうか、あれほど出来なかった魂石探しを意図も簡単にやってのけてしまった。その様子に薪は物凄く驚いていた。穂琥自身も驚く。先ほどあった『出来事』が原因だろうか。


 次のステップも案外簡単にできてしまい、薪が不思議がっているけれど何より驚いているのは穂琥自身のため薪のほうもどうしたものか悩んでいるようだった。けれどもできたことに変わりは無いわけで次のステップへと移行する。


 今度はついに攻撃に移る。身体に何らかの支障をきたす技。ただし致命傷を与えてしまっては死んでしまうのである程度動けなくなる程度のもの。


 さっきまでとは打って変わってまるっきりできなくなってしまった穂琥。力を入れすぎると壊してしまうのでそれをしないために力を抑えるけれどそれでは何もできないので少し力を入れるとそのダミーは簡単に壊れてしまった。


「ん・・・。ゴメン、薪。少し休憩していい・・・?」

「いいよ」


予想外にすんなり休憩許可が出たので少し拍子抜け。しかしやっている技が技だし、先ほど穂琥が目を激痛で傷めているので薪もあまり酷使させられないのだろう。


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