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星屑拾いのステラ ~文明が崩壊した終末世界。楽園を探す少女は、今日も[星屑]を拾う~  作者: 熊吉(モノカキグマ)
:第一章 「星屑拾いのステラ」

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・1-4 第4話:「クレーター」

・1-4 第4話:「クレーター」


 ボーナスタイム。

 確かこういう状況のことをそう呼ぶのだったか。

 少女はそんなことを思いつつ、モトを置いて自分の足で歩き、ガイガーカウンターを前方にかざしながらゆっくりと[星屑]に近づいていった。

 遠くから測定して放射線が感知されなかったからといって、安全とは限らない。

 距離が離れる程に検知される線量は低下する。離れていた時に大丈夫であっても、近づくと危険、という事態は想定しておくべきことだった。


(どうか、カリカリ、鳴りませんように! )


 ガイガーカウンターが反応するあの独特な音が聞こえてこないように祈りつつ、少女は残骸へ接近を続ける。

 ———微かに、カリ、という音が聞こえた気がした。

 慌てて立ち止まり、機械に表示されている数値を確認してみたが、自然に存在する放射線以上の大きな数値は検出されていなかった。どうやら誤作動か、たまたま通過したなんたら線に過敏に反応しただけらしい。


「よかった……」


 ここまで来て、収穫なしでした、ではたまらない。

 空腹的な意味で、腹の虫がおさまらない。

 ほっとした少女はまた、前進を開始する。

 クレーターの端までたどり着いた。若干放射線量は増え、稀にカリカリ音が聞こえるが、まだまだ無視できる線量に留まっている。防護服でなくとも、今身につけている衣服だけで十分に身を守れる。

 だが、念のためにマスクを着用する。ポンチョの内側から防毒防塵機能を持つゴーグルつきのガスマスクを取り出して被り、じぃじから教わった手順に従って気密をチェックし、フィルターがきちんと取り付けられているか、呼吸をしていて違和感がないかを確かめる。

 放射能についてはさほど警戒しなくても良さそうだったが、残骸は化学物質で汚染されている可能性もある。だからマスクはつける必要があった。

 ただ、どんな化学物質があるのかを検知する手段を持ち合わせていなかった。中には、触れた時は大丈夫でも、後になって酷い障害が出る、という危険な化学物質も存在するから、どんなものがあるのかわからない以上、ここから先は一種の賭けになる。

 内戦時代、地上人の抵抗に手を焼いていた天上人達は、化学兵器、いわゆる毒ガスなども使っていたらしい。

 宇宙から降って来る[星屑]の中には稀にそうした化学兵器が含まれている場合があり、そうと気づかずに近づいてしまったら恐ろしいことになる。

 少女はマスクの内側からゴーグル越しに、じっくりと残骸を凝視する。

 化学物質の検知器などを持っていない以上、安全を遠くから確かめるには目視による観察以外に手段がなかった。

 化学兵器は大抵ボンベのような容器に封入されているから、もしそういったものが顔をのぞかせていれば危険と判定できる。その場合は即座にきびすを返し、モトを走らせて全力で逃げなければならない。

 残骸は、どうにも乗り物であるらしかった。

 軌道上居留地で使われていた、作業艇とか、そういう物に見える。コックピットらしいものの後部に人や荷物を乗せることのできるスペースがあり、その後方にはエンジンらしきものがついている。

 大気圏に突入した際に、機体に付属していたものの多くは燃え尽きるか、脱落するかした様子だった。元々宇宙空間で使うためのもので大気圏に突入するための装備はなく、表面に耐熱処理などは施されていないのかすっかり焼け焦げ、ところどころ溶けたりしている。

 コックピット部分はすっかり潰れてしまっていたが、これはおそらく、地表に激突した衝撃でそうなったものだろう。作業艇は斜め十五度くらいの浅い角度で地面に突っ込んでおり、半ばで折れ曲がって[へ]の字になっていた。

 貨物スペースが、破損している。こちらも墜落の影響なのか、あるいは、他のスペースデブリと衝突してできたものなのか。

 大きく開いている穴から、内部を確認できそうだった。少女は慎重に距離を保ったまま大きく回り込んで、手の平で頭上にひさしを作り、眉をひそめ双眸を細めながら観察する。

 どうやら、ボンベの類は搭載されてはいない様子だった。


(大丈夫、そう……? )


 本音を言えばもっとしっかり確認したかったが、目視以外の手段を持っていない以上、これ以上時間をかけてもさらなる情報は得られないだろう。

 今はなにより時間が惜しいし、腹ペコで、とにかく何でもいいから価値のありそうなものを拾いたかった。

 だから少女は希望的な観測に従ってまた歩き始め、すぐに作業艇の残骸の脇にまでたどり着く。

 ガスマスクのおかげなのか息苦しくはないし、異常はなさそうだった。


(ご飯! )


 味はなんでもいい。お腹いっぱいに食べたい。

 そんな思いに突き動かされながらいそいそとグローブの上に厚手の革手袋を重ねて身につけ、残骸に手をかけてよじ登る。船体にハッチはついているが、開くかどうかわからないものより、内部に直通の穴を通った方が手っ取り早いのだ。

 大気圏に突入して墜落したばかりの[星屑]は熱を持っている。わずかに露出している肌からは熱気が強く伝わってきた。手袋をしていなかったらきっと、火傷をしている。

 熱い、ということは、これが出来たてほやほや、まだ誰も手をつけていない残骸だということでもあった。


(どうか、良いものが見つかりますように! )


 そう祈りつつ少女は船内に入り込み、きょろきょろと周囲を見回す。

 原形をとどめて大気を突き破って来ただけに、内部は外部よりもずいぶんときれいに残っていた。

 衝撃であちこち壊れてはいたが、この作業艇がなんの目的に使われていたのかはわかる。座席がいくつも並んでいた。この船は作業目的のものではなく、二十人ほどの人員を乗せて運ぶことのできる連絡艇か、緊急時の脱出艇だったのだろう。ただ、座席のほとんどは空席だった。

 少女は少しがっかりしてうなだれる。

 もしたくさん乗客がいたのならその人たちが持ち込んだ荷物があったはずで、その方が絶対に実入りは良かったはずだからだ。

 しかしながら、完全に無人、というわけではなかった。

 コックピットに近い側、最前列。

 そこに一人だけ、座席にシートベルトで身体を固定したままの、宇宙服姿の乗員がいた。


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