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余命マイナス王女のバフ係 ―寿命口座チートの俺が選ぶのは、最悪じゃない地獄―  作者: のだめの神様


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3/5

第一話 寿命口座と余命マイナスの王女③

「魔物だ! 南の谷から群れが上がってくる!」


 怒鳴り声と足音。

 医務室の窓の外を、鎧に身を包んだ兵士たちが走り抜けていく。


 メイラの顔が強張る。


「……早い。今月二回目じゃない」


 独り言のように呟いてから、俺の方を見た。


「ごめんユウマ、負傷兵が来るかもしれない。

 本当に、絶対にここから出ちゃダメだからね。立てても、今日は寝てて」


「分かりました」


 そう返事しながら、窓の外を覗く。


 灰色の狼のような影が、谷底から群れをなして押し寄せていた。

 その中には、岩のような皮膚を持つ大型の個体も混じっている。


 砦の上から、矢と光の弾が放たれる。

 悲鳴と怒号が混じり合い、空気が一気に戦場の匂いに変わった。


(……ゲームとか小説なら、ここで主人公は部屋を飛び出すんだよな)


 俺はベッドの上で、膝を抱えたまま、しばらく動けなかった。


 二周目の人生。

 二十四歳で過労死して、やっと手に入れた「やり直し」の五年。


 ここで首を突っ込んで、いきなり終わりました、じゃ笑えない。


(俺はヒーローじゃない。ただの“残業の延長線”で死んだモブだ)


 前の人生でも、歯を食いしばって、結局何も変えられなかった。

 そんな自分を、俺は一番よく知っている。


 それでも。


 医務室の窓の外から聞こえてくる、悲鳴と金属音が、胸の奥を引っかいた。


 自分の寿命を誰かに使うつもりはなかった。

 でも、「何もしないで聞いてるだけ」も、どうしても飲み込めなかった。


「……クソ」


 小さく舌打ちして、ベッドから足を下ろす。

 足はまだふらつくが、立てる。歩ける。


 扉を開けると、廊下を走る兵士たちの頭上に、白い数字が躍っていた。


 ──一一・一年。

 ──九・八年。

 ──一三・三年。


 さっき医務室で見たより、微妙に減っている。


(この世界でも、“死に近づくと寿命が削れる”ってことか)


 意味なんて、すぐには分からない。

 ただ、数字が減っていくのを見ていると、胃が重くなる。


 俺は流れに逆らって階段を上がり、砦の上へ出た。

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