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夢なき転生者 〜空虚を埋める旅に出る〜  作者: 熊野 猫
第1章 ミレンデル村編

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第六話「サッカーやんぞ!」

今日からはサッカーすんねん。

昨日ゲットしたボールで、服で。

父さんは今日休みらしい。

昨日の事件?は片付いたんやろか。


朝ごはんを食べるないなや父さんと一緒に庭に出た。

小さな靴を履き、ボールを抱き抱える。

いつもより何となく雄大な風景。

でも、いつもと同じ森、空、山。

そこに小さく存在する俺。

違いなんてほとんどない。


さて、やりマッカーサー。

懐かしいな、マッカーサーって誰やっけ。

・・。

よし、やろう。

準備運動からね。

たぶん、要らんけど、一応ね。


はい、いっちに、さんし、ごろく、しちはち。


置いといたボールに近づく。


「父さん、行くよー。」

「バッチこーい。」


父さんはそう言いつつ、ゴロを処理するキーパーのようなポーズを取る。

てか、バッチこーいって野球か?

なんでもいいか。

三歩ほど下がり、ボールを見る。

ま、行くぜ。

はぁぁぁ、ていやー、インサイドキッーク。


え?

チキンなって?

うるさーい。

俺の信念は『安全マージンは取れば取るほどいい』なんやで?

何があかんねん。

怪我するよりよっぽどええやろ。


ボールはゆっくり進み、父さんの手に綺麗に収まった。

俺は下手ではなかったらしい。

次はもう少し力入れるか。

父さんが転がしたボールを止める。

少し下がって蹴る。

はっ。

いい感じやな。


その後も何球も何球も蹴り続けた。

体が悲鳴を上げるまでは。


――


風呂に体を浮かべ考える。

もう三年か。

玲たちの生活も変わったんやろな。

地球と時間の流れが一緒なら俺はもう大学も卒業してんのか。

院生になってたんやろな。

何研究してたんやろ。

分っかんね。

三人はどうしてんねやろ。

就職?

教師に、イラストレーターに、起業家やったけ?

起業は流石にまだやろうけど二人はどうなったんやろ。

元気かなぁ。

どんな先生してんねやろ。

なんの絵描いてんねやろ。

楽しんでんのかなぁ。

俺は楽しいんかなぁ、今の生活。

楽しいんかもなぁ。

若干、退屈やけど魔法もサッカーもまだ楽しめてると思う。

ま、サッカーは今日からやけどな。


――


今日も今日とて魔法と、サッカーやんで。

このボールも古なったな。

まぁ、もう冬やしな。

半年ぐらいか。

母さんのお腹も少しずつ大きくなってきた。

俺が出て行く直前ぐらいに生まれる予定や。

俺と入れ替わりみたいなもんか。


今日も陽光は冷澄をキラキラと照らす。

薄い呼吸すらも光輝く。

寒い。

じゃあ初めての炎魔法やってみっか。

クッソ寒いし。

家に背中を向ける。

手を前に、あの本を片手に書いてる魔法を読み上げる。


「何時の求るところに紅蓮の末端を与へよ、炎球。」

炎の球が形成される。

全神経を手に向ける。

完成した。

発射。

飛んだな。


「はぁ、はぁ。」


何でこんな疲れんねや。

目の前に白霧が霧散する。

水と木は魔段ですらめっちゃ楽に出来たのに。

向き不向きの話か?

遺伝的に考えると炎は使えそうなもんやけど。

父さんもお姉ちゃんも使ってたし。

そういうもんちゃうんかな?

わっかんね。

とりあえずやり続けるしかないか。

最悪、水と木は使えるんやし。


「はぁ!」

「はぁ!」

「はぁ!」


魔力が半分無くなった。

すぐやったな。

枝作りやったら軽く数時間は余裕やのに。

まだ30分ぐらいちゃうかな?知らんけど。

下手やったら減りやすいとかあるんかな?

もしくは不得意の属性は魔力消費が多いとかか?


よし、サッカーしよ。

一人やからあれやな。


「ダートウォール(土壁)。」


土が盛り上がり、壁を作り出す。

木に止まる小鳥が囀り、飛んでいく。

音にでもビビったんか?

そんなことは置いといて、魔法ってホンマに便利やな。

壁に向かって蹴る。


まだまだ蹴る力が弱いのか跳ね返りもほとんどない。

たった齢三歳と数ヶ月なのだから当然ではある。

ナーリアとしては納得できない。


はぁ、トラップどころかちゃんと蹴れるようになるとこからか。

身体の成長を待つとともにそれを速めるためにも運動やな。

今日も楽しくボールを蹴る。

魔法は…ま、まぁある程度やったし…。

ええよな。


――


あっという間に時間は過ぎ、あたりは真っ赤に染まっている。

家からはええ匂いがする。

唾液に連れられるようにして、家へ入った。

先に風呂を勧められ、風呂に入る。

悴んだ手足にお湯が染み渡る。


「ああ、気持ちええ〜。」


そんな声を漏らし、体を洗う。

そして、湯舟へダイブを決めた。


風呂から出ると、夕食だと言われる。

はーい、と返事をしつつ、椅子へと向かう。

就卓し、ご飯に手をつける。

いつも通りの日常が詰まっている。

今日はシチューとパン。

これもいつも通り。

日本食でも、中華でもなんでも無いこの世界の料理。

人類の生み出すごく普通の料理。


「ナーリア、お前ももうすぐ学校だな。」

「うん。」

「寂しくなりますわね。」

「そうでございますね。」


もう一人の声はない。

そこにはいない。

姉の声は聞こえない。


――


ベッドに転がりながら晩飯のことを思い出す。

こんな世界でも学校にはやっぱり行かなければならないらしい。

この春から学校か。

この世界最初の友達はどんな奴かな。

頭のいい奴やろか。

オモロい奴やろか。

分からんな。


あと約三ヶ月、学校では何を知るんやろうか。

三ヶ月、短いようでとても長い、でもあっという間の1年0学期が始まった。

・・・。

我ながら何言ってるんか分からんな。

3年0学期は聞いたことあるけど、入学前にいうことではないな。

そもそも、3年0学期って何やねんって感じやけど。


ちなみに学校生活は一年生つまり四歳児からもう寮に入るらしい。

この世界は親離れがヤバいくらい早い。

こんな家にずっといる三歳は珍しいらしい。

まぁ何でもいいが…。

ぶっちゃけ親っていう感覚はあるけど、ちゃんとした感情があるわけでもない。

前みたいに、急死しても多分何も感じない。

酷いけど、親ってのはいつか見えなくなって、消えて行くものやって知ってるから。

どんなに急でも、消えることは変わらない。

全ての生物は孰れ死んでしまうんやから。


四歳から十年間、つまり四〜十四歳がいわゆる義務教育。

基本的に寮と学校を往復する生活らしい。

こう聞くとおもんなそうやけど、行事は日本に比べて年単位で3倍はありるっぽい。

一年の日数は変わらんのにすごいよな。

頑張れ、日本。

どんなんがあるんやろな。

胸の奥で何かがポヨン、ポヨンと跳ねた気がした。

誰だ、絶壁のくせにとか言ったやつは。

俺はまだ四歳やぞ。

欲しいかは置いといて、まだ成長してないわ。

おい、そこのお前、今四歳の体にそんな目向けてんのかって思ったやろ、分かってんねんぞ。

白状しやがれ。

聞こえへんけど。

女の体やねんぞ、ちょっとは考えても許されるやろ。

元男としては。


寮は同性の年が反対の生徒と基本二人部屋やって。

つまりは、一年生には十年生、二年生には九年生のように寮は割り振られ、年下の生徒は年上の人に助けてもらい、生活するらしい。

面白い制度やんな。

問題とか起こらんのやろか?

年が離れてる間は大丈夫やろうけど…。

とはいえ同学年とは相部屋にならんから大丈夫なんかな。

知らんけど。


帰れるのは主に夏休み、冬休みだけらしい。

全寮制の学校って考えたらそんなもんか。

行ったことないから分からんけど。

俺はもうすぐ帰ってくるお姉ちゃんと一緒に初登校って感じになるんかな。


行く前にやれることはやっとこ。

したらあかんとか言われるかもしれんし。

勉強はさすがに大丈夫やろ。

あるとして、理科、社会、国語的なやつ、数学かな?

音楽とかいわゆる副教科はどうなんやろ?

言語系と魔法についてが厳しいかもぐらいかな?

あと何があるんか全然知らんけど。

体育の時間ってやっぱあるんかな。

サッカーやりてー。

魔法でズルしまくれそうやけどな。

そこは紳士ルールなんかな?

まだまだ知らんことばっかやな。

学校ダメかも…。


とは言っても、家におる間はまぁ結局いつも通りって感じになるかな。

魔法の練習、習得、ボール蹴り。

これ以上何したらええんか分からんし。

母さん、大変そうやから手伝いとかしとくか。

情が湧いてくるかもしれんし。

ぶっちゃけどうでもええっちゃええけど、親に情を持てないって悲しいやつでしかないからな。

情はあったほうがええやろ。

今もないことは無いと思いたいけど…。


――


おはようございまーす。

どうもこんにちは、高階浩也改め、ナーリア・フェングラーです。

最近はボール蹴りと魔法にハマってます。

ただいま三歳の私ですが、もうすぐ始まる学校に向けて、勉強しようかなと思っております。

あ、ちなみにもうすぐ弟か妹が産まれます。

あれから約一ヶ月が経ちました。

母さんの腹は随分と大きなって、生活が大変そうです。


何を畏っているんやろか。

頭の中で。

それに誰に言ってんねやろこれ。

とまぁ、最近の振り返りにはなったな。

勉強なぁ。

した方がええんかな?

わっかんね。

まぁ、えっか。

流石に大丈夫やろ。

朝も食ったし、ちょっと運動するかな。


「お嬢様、どこに行くんですか?またお散歩ですか?前にも言いましたが、アンヘラ様か僕に言ってから行って下さいね。」

「ここで言おうと思っててん。行ってくるね。」

「はい、行ってらっしゃいませ。」

「うん、行ってきまーす。」


最近は外出を増やしている。

若干ではあるが、体力付けんと困るかもしれんし、学校で寝たらあかんやろ?


汗かかんしええ感じ。

少し着込めばそんなに寒くは無い。

あと数週間もすれば雪が降り始めるだろう。

ボールネットに入れたサッカーボールを蹴り上げながらポテポテと歩いて行く。

ボールは友達ってね。

ちょっと休憩するか。

木のほとりに座り込む。


丘の上の木の周りにはもう茶色になってしまった枯葉が落ち、風が吹けばそれが舞い上がる。

小動物は足元から脆響を響かせ跳ね回る。

鳥は枯れ木に止まっては宙空に翼を広げる。

遠くの山には緑に赤、黄色まで多種多様に染められ、青い空がそれを見渡渡している。

枯れかかった揺穂が黄金の波を作る。


まだ早い時間だからか人はほとんど見えない。

今、何時ぐらいやろ。

いや待て、朝起きたんが早かったとしても、日はもう出てたから、今9時は過ぎてるやろもう。

そんな早い時間ちゃうやんけ。

確かにもう畑の時期でもないし、タネ撒くぐらいの時期やからまずまず農村ではそんな人出てくる機会ないんかな。

寒いし。

そう考えたら父さんたちってめっちゃ働いてんねんな。

今日も起きた時にはもう居らんかったし。

村の警備ってゆうか村長の仕事って大変やな。

子供やけど継がなあかんかったりすんのかな。

嫌やねんけど。

なんかめんどそう。


さて、帰りますか。

またボールを蹴り上げつつ歩いて行く。

来た道とは違う道に向かって歩いて行く。

え?迷わないのかって?

迷うに決まってるやろ。

感覚で家の方向に向かって歩いてるだけやねんから。

とか言ってたら迷った。

辺りには畑しか無い。


「すいませーん、フェングラー家ってどっち方向?」

「え、なんて言ったんじゃ?」

「村長の家ってどこですか?」

「おう、お前さんダズタン様の娘さんか。」

「はい、ちょっと迷っちゃって。」

「えっと、あの家はあっち方向じゃな。」

「ありがとうございます。」


畑仕事をしていたお爺さんに話しかけると、指差しで方向を教えてくれ、連れて行ってやろうかとも言われたけど、流石に断った。

そして、またほボールを蹴り上げつつ歩いて行く。

ナーリア・フェングラー(3)

炎、土級、水、木段

言葉は大丈夫。

もうすぐ学校に入学。

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