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夢なき転生者 〜空虚を埋める旅に出る〜  作者: 熊野 猫
第1章 ミレンデル村編

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第四話 「父の怖心と娘の退屈」

目標「さらに上手に魔法を使うこと」

天才だ、この子は。

この子は神から与られし、二物を持っている。

いつ、誰が魔法を教えたんだ。

母さんにも聞いたがしていなかったし、ルスヴァフもしていなかった。

スザーナが教えられるわけがない。


魔導書片手になんでそんな魔段の魔法を連発出来るんだ。

俺ですら得意な炎魔法すらそんなに連発できないんだぞ。

なぜ出来る。

それも複数種の魔法をなんて。

魔級の魔法ならまだわかる。

それを魔段の魔法なんて…。

普通じゃない。

俺もアンヘラもとてつもない魔法が使えるほど得意なわけではない。

どちらもせいぜい魔将程度だ。

確かに普通に考えれば桁外れな夫婦ではある。

でもその程度だ。

一つの町を一人で壊滅させる魔王とか、国をとかいう魔帝とかそんなことは一切ない。

この辺鄙な村なら一人でもできるかも知れないが…。


泣くことはほとんどないし、ずっと一人で部屋に篭っているし、変だとは思っていた。

1歳になったあたりから特に一人で部屋に篭っていた。

ナーリアを探すといつもどこかになぜか開けられない部屋があった。

母さんが呼んだりするとつの間にかリビングにいて、俺に抱きついたりしてきた。

まるで何かの許しを乞うかのように。

なんと声を掛けたらいいんだろうか。


ナーリア、君は素晴らしい。

ナーリア、なんて比類なき才能を持っていらっしゃるのですか。


両方自分の娘にかけるような言葉ではないな。

それでも、こんな言葉しか出てこない。

喉の奥に引っかかるとかでもなく、ただ、言葉がない。

俺の子供は、娘は、ナーリアはとんだバケモノだ。

でも、めっちゃ可愛いし、大好きだ。

俺が3歳の時はどうだっただろうか。


まず間違いなく魔法は使えなかった。

もちろん剣も握ったことすら無かったかもしれない。

初めて握ったのが多分5歳。

魔法を使ったのなんて少なく見積もっても10歳を超えてからだ。

剣をずっとやってきた。

でも、いつだったか一刀将から全く上がる気もしなくなった。

ただ、魔物も良く出るこの村の次期村長としては弱すぎた。

ただの兵卒程度ではいけないのだ。

村長として、村を守る者としてそれではいけなかった。


そう考えると初めて挑戦したのは15を超えてからだ。

確かに一刀将の時点で、周囲の魔物には負けることは無くなった。

しかし、親父が一刀帥だったことを考えるとダメな気がした。

魔法をできるようになる必要があった。

それから、毎日、炎魔法を使った。

なんで炎にしたのかなんて分からない。

初めはやっぱり炎球だった。

それから炎級、炎段、そして炎将にまでなった。


最近はもう剣すら使わなくて良くなった。

普通の魔物には魔法をテキトーに放つだけで終わりだ。

そして、ついでに焼却処分をしてしまう。

アンデッドになられるのは面倒だからな。


――


「ナ、ナーリア!」

「どうしたの父さん。」

「な、なにしてるんだ?」

「うーと、魔法の練習。今日は岩魔法をやるって決めてたんだー。」

「そ、そうなのか。え、偉いなー、ナーリアは。もう魔法が使えるのか。」

「そうだよ?」


どんな神聖な湖よりも透き通ったそんな()

俺の目を焼き尽くすかのような一筋の光を向ける()

そんな目に俺の心は言っている。

これは必然なことなのだと。

彼女は言っている。

これは必然なことなのだと。

たとえ、たった3歳子供が魔法を使ったと言うことを生まれてこの方聞いたことが全く持って無いとしても。

これは偶然なんらかの奇跡が起こったのではなく、必然なのだと。

俺の体、その全てがそう言っている。

何が必然なのかなんて分からない。

ただこれが必定なことであることは何故かわかる。

解りはしない。

ただ、判る。

そんな気がする。


――


父さんは何て言いたかったんやろか。

うーむ分からん。

まぁなんでもええか。


外での特訓を終えた俺はベッドに転がっていた。

あースマホが使えたらなー。

ゲームがあればなー。

ときどきそう思う。

あの世界には暇がなかった。

いつも、いつも忙しいと思ってばかりだった。

確かにゲームなんかやってられん日もある。

でも、多分スマホを触らん日はなかった。

その上で忙しいからとか訳分からんことを言って、勉強をサボったりした。

もちろん0になるわけではない。

5出来たはずのものが4や3、時には1になってしまっていた。

中学に入ったら小学校は楽やったなとか、高校では中学は楽やったなと気づいたりした。

それでも、いつも今が一番忙しいと思い込むことで逃げてきた。

それで良かったんかな。


とはいえ、今は暇を感じている。

筋トレは早すぎるかも知れんけど、運動ぐらいはするか。

サッカーでもやってみよう。

プロを目指して。

あるのか知らんけど。

とはいえサッカーなんて単語、聞いたことないな。

ボール…。

ゴール…。

とりあえずボールについて聞いてみるか。

ボールがないと始まらない。


――


「ルスヴァフさん。」

「どうされました?ナーリアお嬢様。さん付けはいいですよ。」

「えっと、丸いこれくらいの大きさのボールってある?」


手でサイズ感を示しながら言う。


「少し小さいですが木製のものならございますよ。」

「木製か…。」


そんなもん蹴ったら足が…。

サッカーボールって何で出来てんねや?

多分プラッチックとゴムやんな。

知らんけど。

ゴムは探せばあるかも知れんけど…。

プラスチックはないやろな。

名前忘れたけど原油をいい感じの温度で蒸留する炉みたいなのあったな。

石油、ナフサやっけ?あとは…。

重油とか軽油とかか。

うん、忘れた。

もし本気で使うならその時でええか。


「お嬢様、何にお使いになるのですか?」

「蹴って遊ぶねん。」

「なるほどサッカーですか。」


そう、サッ!?

サッカーあるのか?

まぁ聞いたことない単語やからほんまにサッカーかわからんけど。

少なくとも球蹴り遊びがあるってことか。

ここでのサッカーについて聞いてみる。


「サッカーって?」

「えっと、ボールを蹴ってゴールを目指すゲームのことですよ。」

「へー。」


それっぽく返答しておく。

本当にサッカーがありそうだ。


「じゃあ、そのボール無い?」

「この家にはございませんが、買いに行けばございますよ。お父様にお頼みになってみては?」

「やったー。」


父さんは今はいない。

仕事だ。

だいたい昼過ぎにはいつも出ていく。

父さんの仕事は村長として、村役場?でなんかするみたいな感じだ。

あとは魔物対策の巡回警備らしい。

この辺りには少し強めの魔物が出るらしい。

山が近く、森も近いかららしい。

観欲はあるけど死にたくはないな。

やめておこう。


うーむ昼からはどうしたものか。

本でも読むか。


『槍帝と子竜』

その竜は天才とも称された槍家(そうか)によって討ち取られた。

白銀を彷彿とさせる一枚一枚のブリリアントカットされた鱗。

それを全身に纏し、その巨体。

鱗には空、森、周囲のもの全てが映し出された。

ただ、一点を除いて。

暗赤色に変わりつつある血の海。

そのマグマの火口には一本の槍が突き刺さっている。

そう、稀代の天才リリー・リザーボスの槍だ。

彼のトカゲのような体は筋一本がその力の120%を生み出してしまうそんなことさえ思わせる。


ガザガザッ


彼は冷静に槍を握る。

まだ敵は視認できない。

弱くはない。

この竜以下であることは間違いないが、強い。

白竜を一撃で葬り去ったその右腕に力が入る。

何と言う威圧であろうか。

草原は逆立ち、動物たちは姿を消す。

晴れ渡る空に何が現れた。

この白竜にすればハエのようなサイズの何かが。

ただ、速い。

人の目に止まるような速さではない。

たが、リリーには違う。

見えている。

それが楽しそうに空を飛ぶのが。

ただどこか哀しさを思わせる飛び方をするのが。

愛らしいとさえ思える。


いつのまにか彼の筋肉は解き放たれ、伸びている。

中空を浮く小さな竜と彼は見つめ合う。


この子竜はこの白竜の子供だったんだろうか。

この子は私に怯えないのだろうか。

人間ですら私に怯えると言うのに。

その気になればすぐにでも殺せてしまう距離にいるのに。

どうしてそんな愁悦を感じさせる顔を、飛び方をしているのか。


「来い、白竜の子よ。こちらへ来い。」

「キュルルルー。」

「お前はこの竜の子どもか?」

「キュルルルー。」

「そうか、残念だったな。俺が来てしまったばっかりに。」

「お前俺について来ないか?ドラゴンとはいえ一人では生きていけまい。それとも、親を殺した私ではダメか?」

「キュルル、キュキュルー。」


不満げな顔をしている。

ドラゴン属は親子関係の薄い動物だが、ここまで小さい子どもにはそんなこと関係ないだろう。

だが、私はこの白竜の子を守らねばならない。

親を殺した者として。


子竜は付いてきた。

私が白竜の片付けをすれば、自身の親を埋葬する。

街へと歩き出せば、その後ろを空から眺める。

いつの間にか打ち解け、相棒となっていた。

ドラゴンというのは意外と人懐っこいのかもしれない。


私は今日もドラゴンと共に旅をする。

色々な冒険をしながら。


あーあ、一話が終わってしまった。

ダメだこりゃ。

完全に内容覚えてる。

めっちゃ面黒いわ。

ただ、毎回別の訳を出来る日本語は素晴らしい。

同じような意味でも伝わってしまう日本語は素晴らしい。

そこは面白い。

言葉と言うプールの中で勇気を出して目を開け、宝物を探す。

そんな作業が面白い。

動画を見ても、ショート動画を見ても感じられないinteresting がそこにはある。

よく分からんことを語ってしまった恥ずかしい。


「ご飯ですわよー。」

「はーい。」


姉さんがどこからか返事する。

意外と時間、経ってたんやな。

というかよく考えればもう本も読めるようになったってことか。

後は書きか?

英語でもよく、リスニング、リーディング、ライティングって言うもんな。

書きは大変そうやな。

あの蛇文字は。

右から書くんやろうか。

確かアラビア語は右から書くはずやけど…。

分からんな。


――


昨日はまさかのカレーやったからな。

今日はなんだろうか。

日本ならカレーの続きってのが定番やけど…。

うん、その定番はここでも変わらなそうやな。

あのカレーの匂いがする。

椅子に座って待つ。

あの甘いカレーが置かれる。



「お父さん、買って欲しいもんあんねんけどええ?」

「お、おう。どうしたんだ?」

「えっとボール、サッカーボール買って欲しいねん。」

「っ分かった、買ってやる。」

「ありがとう、お父さん。」

「ズルイー。わたしもー。」

「お姉ちゃんはちょっと前に、あのぬいぐるみ買ってもらったでしょ。」

「えー。ナーリアだけズルい。」

「はい、早く食べなさい。」

「はーい。」


何とも不満げそうな顔だ。

そんな顔を横目にぱくぱくと食べ進める。

俺食うの遅ない?

既に全員が8割ぐらいを食べ終わっている。

何で皆んなこんな速いねん。

俺はまだやっと半分かって感じや。

おかしいやろ。


サッカーボールは買ってくれるらしい。

ちゃんと外に出るんは初めてレベルや。

悪いスライムじゃないことをアピールしておこう。

これからも外へ出れるように。


お金についても覚えよう。

ちょうどいい機会やし。

市場?について知るのも大切だ。

ここは日本みたいには発展してないんやから。

スーパーとかそんなんちゃうやろう。

テンプレなのは屋台が立ち並ぶとか、市場が…とかそんな感じやけど。

いや、それは大体食べもん屋か。

服とかそんなんは店の中が多いっけ?テンプレやと。

まぁ、明日のお楽しみか。

サッカーできるぞ。

この無限へと広がる青い空の下で、ただボールだけを見つめて。

って何やこのポエム、下手くそやし。


明日は初めての外や。

早く寝よう。

まだ体力は少ない。

回復は早いかもしれんけど油断は禁物だ。

早く寝よう。

明日を楽しむために。

ダズタン・フェングラー(31)

炎将、一刀将

ミレンデル村時期村長

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