表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2300年のカレンダー

作者: 夜桜紅葉

 自分が死んだ後のカレンダーを見るのが好きだった。


スマホのカレンダーアプリ。

あれでずっと先の未来の日付を眺めるのだ。


例えば2300年。

私は絶対に死んでいるし、私のことを知っている奴も皆死んでいる。

それを見ていると、なんだか落ち着くのだ。


カレンダーは私の命日から先も続いている。

自分が死んだ後も世界は問題なく続いていく。


だから私一人がいなくなったって大丈夫だ、と思える。

私に勇気を与えてくれる。



 私の部屋にあるカレンダーには2024年12月24日から先がない。

1ヶ月くらい前に破り捨てた。

そして今日はクリスマスイブだ。


私はビルの屋上にいた。

ビルの屋上から、浮かれた街を眺めていた。

見下ろしていた。

靴を脱ぎ、目を瞑り、足を踏み出そうとしていた。


しかし……。

この期に及んで私は死ぬことが少しだけ怖くなったらしい。

気づけば一歩後ろに下がっていた。


ふと、2300年のカレンダーが頭に浮かんできた。

あれは私に勇気を与えてくれる。

死んでもいいよと背中を押してくれる。


それと同時に、自分の部屋にある、明日の日付がないカレンダーのことも脳裏をよぎった。


そういえば、もうカレンダーを捲ることもないんだな。

そう思うと、寂しくなった。

考えを振り払うように激しく頭を振る。


決意を新たにするため、私はスマホを取り出し、カレンダーのアプリを開いた。

2300年を見る。


しかし、いつものように勇気を得ることはできなかった。

私は酷く焦り、叩くように画面をスクロールした。


どれだけ先の未来のカレンダーも、私の背中を押してくれることはなかった。


私は未来に裏切られたような気持ちになり、途方に暮れた。


その時、ほんの思いつきで画面をスクロールした。

今度は未来から現在へと遡り、2024年12月のカレンダーを見た。


しばらく見ていなかった2024年12月25日の枠を見て、捨てたと思っていた人生が、私次第でまだ続けられることを悟った。


私は通販サイトで2024年のカレンダーを検索した。

……。

売っている。


まだ生きていてもいいよと言われた気がした。



 数日後。

もう師走も末だというのに、私の部屋には買ったばかりの新しい2024年のカレンダーがぶら下がっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
少し難しかったですが、希望をもって前に進めて良かったと思います。 読ませて頂き、ありがとうございました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ