第一話 初出勤
こんにちは。お楽しみください。
『ケイル・苑に魔法警本部十課への異動を命ずる。』
俺にこの手紙が届いたのはまだ寒い3月の日だった。20年近く刑事をやってきた功績がようやく認められたんだ。
魔法警。この世界で日常から戦争まで様々に使われる魔法による犯罪を取り締まる組織だ。そんな魔法警でも頂点に君臨するのが魔法警本部(通称本部)。各地の魔法警に司令を下す、魔法警のまとめ役だ。また、組織犯罪や重大事件の捜査も行う。そんな本部に出入りできるのは勿論かなりのベテランか、才能ありと判断された者だけ。30年経っても出入りが認められないなんて、ザラにある。そんな世界で俺は出入りを許されたのだ。
「噂以上の作りだな。」
俺は本部の建物の前にいた。重厚感のあるレンガ造りに魔法警のシンボルのオリーブの葉の文様。嫌でも背筋が伸びる。少し自分は場違いではないかと考えつつ、入口の警備員に声をかける。
「どうも。」
「ん?ああ、見ない顔だね。新しく来た人?」
「はい。十課に配属となりました、ケイル・苑と申します。」
「十課!?」
いきなり警備員が大声を上げる。何もそんなに驚くことは無いだろうに。
「あんた、耐えきれなくなったらすぐに辞めな。あそこは無理をしてでもいるようなところじゃないよ。」
そういって二枚の地図を渡してくる。
「一枚は1階から上。もう一枚は地下の地図だ。十課は地下にあるからね。大変だろうけど頑張るんだよ。」
「はあ、ありがとうございます・・・。」
十課というのは評判が良くないようだ。
エレベーターで地下まで降りると、そこは薄暗い地下道が続いていた。その途中には「倉庫」、「証拠品庫」、「解剖室」、「霊安室」と部屋があり、その全てが「十課専用」と書かれていた。どうやら十課はかなりの権力を持つらしい。そして、地下道の突き当たり。そこに「十課」と書かれたプレートが掛かった扉があった。ノックすると「どうぞー」と気の抜けた返事が帰ってきた。長年刑事をやっている上で、このようなタイプは相手にするとややこしくなると分かっている。だが、ここまで来て引き返すわけにも行かない。意を決してドアを開ける。
そこにいたのは、若い男だった。短い銀髪に、碧の瞳。一見すると軽薄な印象を受けるが、油断ならない気配がしていた。
「えーと、どちら様?」
・・・この先大丈夫だろうか。
「新人・・・?のケイル・苑くんだね。いやぁ、すっかり忘れていたよ。」
俺の異動に関連した書類を引っ張り出して、ようやく思い出したようだ。・・・本当にこの先大丈夫だろうか。
「さて、それじゃあ自己紹介をしようか。僕の名前はスルブ・シェイン。この十課の課長にして、先日まではただ一人の課員だった者だ。全く嘆かわしいよ。僕は頭脳労働専門であって、肉体労働は管轄外なのに。そもそも・・・」
二時間後・・・
「おっと、少々話しすぎた。」
「・・・話し出すと止まらないタイプなんですね。」
「そうだね。やはり人との会話というのは脳を活性化させるのに一番良い手段なんだ。」
「・・・そうですか。」
とりあえず、話を聞いてみて分かったことがある。この人、意外と寂しがりだ。
「なにか失礼なことを考えているような気もするが、とりあえずこの十課の仕事を説明しようか。」
・・・そういえば一切仕事の話は出てこなかったな。
「この十課の仕事は、他の課で解決できない事件の解決だ。」
「・・・はい?」
「端的に言えば、この十課は未解決事件を生み出さないための部署だ。」
お読みいただき、ありがとうございます。作者の暁です。
私がずっと考えていた作品を書いてみることにしました。お楽しみいただけましたら幸いです。
よろしければ、私の書いている東方project二次創作もお読みください(宣伝)。