第93話~ラスト呼吸~
大変遅くなり、申し訳ありません!
間違えてストックを消去していまい、書き直しをしておりました。
本日より、投稿を再開します。
「は? 国王を食べたの!? 聞いてないんだけどっ!?」
午後のキュラス邸に、少女の声が響く。
「あのう、ネムさん? その言い方はちょっと……」
「そうですよ? ネム。誤解を招く言葉は慎みなさい。これから王城へ行くのです。下手な冗談なんて、一切通じませんから……ねっ!」
私の代わりに注意をしたユーセが、力任せにコルセットの紐を引いた。
「うぐっっ! わっ、分かったわよ! だからもう少し、緩めてくれない?」
私の隣でネムが苦しそうに、自身の腹を擦る。
「舞踏会において『ウエスト』は正義っ! 自分を飾らないと、他の女子にエデルを取られるわよ?」
「そこは別に……どうでもいい」
私の助言に極薄な反応を見せるも、ツンデレ少女は鏡を凝視していた。
(今日で、全てが決まる……)
『ドレス=戦闘服』に着替えた私は、長々と息を吐く。
ブレイム主催の舞踏会。
『このチャンスを逃すまい』と、敵は彼の命を狙う筈だ。
だからこそ、ネムの申し出は嬉しかった。
散々手を尽くしたが、暗殺者の正体や動機は今日まで不明……見えない敵を相手に、彼女の『予知能力=魔法』は、正直心強い。
(でも……)
「ネム、本当にいいの? 王城へ行くのはやめて、屋敷でユーセと待っていたら?」
間接的ではあるものの、ネムは犯人の呪いを受けている。
その痕跡は完全にユーセが消したそうだが、それでも不安は拭いきれない。
敵は『色保有の魔術師』……この世界では魔法と知識の両方を併せ持つ、能力の高い魔法使いがそう呼ばれている。
だからこそ、見えないほどに小さな呪いの痕跡から、ネムの正体を簡単に見抜く可能性があるのだ。
「平気よっ! 常にあの子と一緒にいるもの。彼の兵士(護衛)に守ってもらうわ。それに何より、死ぬ気がしないのよね」
『あの子』とは、ブレイムの弟……エデル殿下だ。
少年(11才)の恋心が築いた、歪な主従関係。
勿論、ネムが王子を従えている。
「それでも心配……あっ、そうだ! ユーセも一緒に行きましょう! 貴女なら私の代わりに、ネムの暴走を制御できるわ!」
「いえ……ライリー様。私は屋敷に残り、例の魔法薬を完成させます。相手が『白の魔術師』である以上、攻撃魔法で怪我をしたり、以前より強い呪いをかけられた際に、通常の薬では効果がありません」
ユーセはブレイムが呪われたあの日から、魔法薬(主に回復系)を研究している。
薬学専門の女子校出身で『調合資格(薬師ってやつ?)』を取得している彼女は、魔法攻撃による汚染を警戒していた。
「そうだったわね……無理を言って、ごめんなさい」
「てゆーか、私が暴走!? 国王を襲った貴女にだけは、言われたくないわ!」
私の口癖を真似て、ネムが怒りを露にする。
(チッ、逸れていた話が戻ったわ……)
「だからあれは『手合わせ』で、ついでに国王の裏(瘴気)を、世紘に与えただけなの! 昔から定期的に、溜まった瘴気をロドと妖刀で除去していたみたいよ? 余計な感情による政治判断ミスとか、避ける為じゃないかしら?」
「国王の瘴気ね……で? どんな内容だったの?」
「やめなさい、ネムッ! 大国の主である国王陛下のお心を、そう軽々しく覗いてはいけません。きっと私達には身に余る、深い問題を抱えておられるのです」
「そっ、そうよっ! 私もロドから『決して覗くな!』って、言われてるしっ!」
「ふぅーん、そうなの?」
「うん、まあ……ね」
相手の顔を見ずに、何もない壁へと視線を外す。私は辛うじて? 危機を逃れた。
(今更、言われても……)
5日前の警告は、既にあとの祭りだった。
『国王が抱いた闇』
興味がない……ワケがない。
熱が下がった私は間も躊躇もなく、あっさり彼の裏を覗いていたのだ。
「……ショボッッ!」
国王の瘴気は質量のみならず、その内容もしかりだった。
医者に酒を止められた。
テリップ公爵(国王の弟)から『交渉が高圧的だ』と、注意を受けた。
夕食のステーキが、息子(まさかの、エデル)より小さかった……以下、同レベルの案件が多数。
(世紘が嫌がる理由は、ひょっとして味かも?)
私はこの時を境に、相手が誰であろうと『覗き』をヤメた――。
「……着いたぞ」
ヤプの声に、顔を上げる。
「ライリー様、どうぞ」
クガイの手を借りて、馬車を降りる。
王城に到着した私は、真っ直ぐ前を見据えた。
「……よしっ! 行こう!」
深呼吸と同時に溜めた、決意と覚悟。
私は終幕へと、大きく足を踏み出した――。
次回、第94話~ヒーローとヒロイン~
明日投稿予定です。




