第91話~祖父の助言(前編)~
遅くなりました。
その分、少し長めです。
後、5日……。
何をしようが、誰が目の前に居ようが、落ち着かない。
(こうなるなら多少強引でも、ブレイムの護衛に付けばよかった)
『ブレイムを頼む』……国王に言われた言葉を鵜呑みにして王城入りを志願したが、私の病み上がり(風邪)を理由に、王子には体裁よく断られてしまった。
(けどまあ、今はまだ心配ないか……)
暗殺者から王室へ届いた脅迫状――。
そこに実行の期日は、記されていなかった。
今日も王城は厳戒態勢を敷いているが、私は暗殺の日時を『舞踏会』だと踏んでいる。
この推測は暗殺者の行動を読み取り、導き出した――。
私が知る、ブレイムへの暗殺未遂は計3回。
その内2回が王城の外で実行されていて、1回目の犯人は捕まっていないが、3回目の交流会で拘束された5人は、他国の殺し屋……『雇われ』だった。
『敵対国の仕業』として抗議ようにも、口腔内に隠し持っていた毒で全員が命を絶ってしまい、証言も証拠も残ってはいないらしい。
2回目は唯一『暗殺者が城内へ外から侵入した』と聞かされたけれど、どうも腑に落ちない……。
フロレンヌの手伝いで王城を訪れた際に警備の穴をチェックしたが、城をぐるりと兵士が取り囲んでいて、クガイの報告同様に侵入経路は見当たらなかった。
(もしや……全てフェイクとか!?)
その思いつきを期に、私は(王城)内部への疑いをより一層強めていたのだ。
『数回の暗殺未遂を得て、監視を限界まで城の外へ向ける……そうして手薄になった城の内部から、攻撃を仕掛けようとしているのではないでしょうか? 特に舞踏会当日は多くの人間が城内を行き交い、目立たずに行動可能な状況から、最も注意するべきかと思われます』
一番近くでブレイムの護衛を勤めるセージに、私はクガイを介してそう伝えた。
しかし返事は『承知しました。気を付けます』と、こちらの熱量に比べて、かなり淡白なものだった。
「セージなら心配ない……彼の立場であれば、当然それも視野に入れているであろう。当日は兵士を大幅に増員する筈だ」
今現在――モスカトア最強の騎士が、私の自室で呑気にお茶をすすっている。
彼がキュラス邸を訪れる直前、ユーセと茶葉を配達に来たビオラが『どちらがお茶を淹れるか』で、揉めに揉めていた。
(結局クガイに頼んだけど、あの現場を思い出すと、なんか腹立つわね……いや、それよりもブレイムだ!)
「それを分かっているのなら『舞踏会』は中止にすべきですっ! 国王陛下には、助言をしてくださったのですよね?」
「それは……無理だ」
「何故です!? 殿下の命に関わるのですよ!?」
「秋の終わりに殿下が舞踏会を仕切るのは、国の未来の為だ。代々国王が息子達の存在を示す目的で、毎年開催されている。何があろうと、これまで一度も中止になった事がない。まして理由が『暗殺に怯えた』では、それこそハーロッジ家の評価を悪くする」
(意味が分からない……)
息子の命よりも大事な未来なんて、一般思考の私には、理解不能だった。
「……あっ、でも『息子達』でしたら、オブジュ王太子殿下こそ、主催者に相応しいのでは!?」
普通に考えて、次期国王の彼が表に出れば、何の問題もない。
後はブレイムを隔離し『守り通す』までだ。
「それも無理だ……オブジュ様は、社交の場を極端に嫌っている。期待するだけ無駄であろう」
(チッ! 『冷血のプリンス』……つかっ! 『コミュ障・王子』めっっ!)
「では、エデ……」
「まだ子供だぞ? 今回のそれが、初の舞踏会になるそうだ」
(あぁぁー! やっぱ、イライラするっ!)
「そうですか……では何故、わざわざ此処へ来たのです? 『無理と無駄』の二言なら、手紙で済みましたのに」
精一杯の嫌味……しかしロドは、ちっともダメージを受けてはいない。
「国王の気遣いだ。たまには良いだろう? 此処へ来るのは6年振りか……懐かしいな? 昔は幼かったあの子にせがまれて、この部屋で遊び相手をさせられたものだ」
「お孫さん(元・ライリー)とですか?」
(ちょっと、想像つかない……)
「まあな。あの子が旅立って、もうすぐ1年……後悔しても遅いが、意地を張らずに『説得するべき』だった」
以前セレクタントの兵士が『喧嘩をして以来、2人は会っていない』と言っていた。
(まさか『永久に会えなくなる』とは、思わないよね? ロドも辛かったのかな……)
「お孫さんと、何があったのです?」
『剣士になるのを拒んだ話』は本人から聞いていたが、他にも理由がありそうだ。
「ある男との付き合いについて、口論になってな……私が反対したのが、仲違いの主な原因だ」
「その男性とは『別の世界へ行った』という、恋人ですか?」
「そうだ」
元・ライリーは、救世主として条件を与えられた恋人を追い、この世界を捨てた。
初めてそれを聞いた時は『自分勝手』と否定的だったが、今ではその気持ちが少しだけ理解できる。
(私も『ガチ恋』をしたからかな?)
理屈での制御が理想だが、愛情は時に暴走する。
「それだけ、恋人を愛していたのですね」
「それは違う……あの子が別世界へ行ったのは、奴を『殺す』為だ」
「えっ?」
ロドの告白は、それまで私が抱いていた元・ライリー・キュラスに対する印象を、完全に覆した――。
次回、第92話~祖父の助言(後編)~
1~3日間に投稿予定です。




