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第90話~勝負服~

「はぁぁー……」


 国王の謁見から、1週間後――。


 モスカトア第一女学院・生徒会長執務室にて、私は溜め息を連発させていた。


「まったく……此処に来ると、貴女は溜め息ばかりね!? それで、今度はどうしたの?」


『面倒臭い』と言いつつも、何時だって私の話(愚痴)を聞いてくれる、アケビ。


「国王陛下より、婚約の許可が下りたわ……」


「えぇぇぇー!?」

 

「まあ! ライリー様、おめでとうございますっっ! ……あっ、もう少し腕を上げてもらえますか?」


 驚く生徒会長と、私の隣で喜ぶ絶世の美女。

 フロレンヌの方は何の説明も無しに、再び私の寸法取りをしていた。


「良かったじゃない? なのにどうして『溜め息』なのよ?」


「ブレイム殿下が、私との婚約を望んでいなかったの……」


「えっ、今更? それを『覚悟』で、求婚したのよね?」


「それはそうだけど……」


 アケビの言う通り、私は相手の気持ちを後回しにして事を進めていた。 

 しかし彼の本心を知った後のダメージは、予想以上に大きく……今日まで心が凹んだまま、どうにも戻らない。


「とにかくっ! これで貴女は『死なずに済む』のよね? だったら……」


「……まだなの」


「は?」


「まだ正式に、婚約してない」


「どういう事?」


 フロレンヌの寸法取りが終わったので、ソファーへ腰を下ろす。


「実は……」




 婚約が(仮)だと知ったのは、セレクタント城から帰った翌日の午後だった――。

 

「ライリー様、お加減はいかがでしょうか?」


 主の顔を覗き込む、眼鏡。

 クガイが1人で私の部屋に入るのは、この日が初めてだった。


「……クガイ? 『誰も部屋に入れるな』と、ユーセに命じた筈だけど?」


 (駄目だ……どうしても、口調がキツくなってしまう)


 私は風邪を引いて高熱を出し、ベッドに寝ていた。

 昨晩から体調も機嫌もすこぶる悪い……その自覚はあったので、あえて人を遠ざけていたのだ。


「申し訳ございません。しかしながら、一刻も早くお伝えしなければならない『言付け』がございます」


「言付け?」


「はい、王室からです。この場でお伝えしても宜しいでしょうか?」


「……直ぐに聞かせて」


 クガイの支えを借り、私は上半身を起こした。

 

「ではお伝えします……『国の法に従い、婚約は互いが存命かつ、意識が正常の上で交わすものとする』――『契約の日時は決まり次第、追って伝える』とのことです」


「承知したわ……クガイ、下がっていいわよ? ご苦労様」


「……ライリー様?」


「大丈夫よ。ちゃんと理解しているし、後(対応)はとりあえず、熱が下がってから考えるわね」



 (……ヤバい、どうしよう!?)


 クガイを帰した後、布団に潜った私は頭を抱えた――。




「そうきたか……あくまでも王室は、ブレイム殿下の無事と()()()()で、婚約を交わしたい訳ね?」


 自身の見解に、アケビも息を吐く。


「……うん」


「まあ、貴女も『ブレイム殿下を守る』と宣言したのだから、想定内でしょ? で? 『追って伝えられた』日時は何時なの?」


「……舞踏会の3日後よ」


「『3日後』って……ライリー! 貴女の誕生日じゃないっ!?」


「ええ、私も驚いたわ」


 まさかのギリギリ……婚約を交わすのは条件達成の期限でもある、ライリー・キュラス(私)の誕生日だった。


 (『救世主』にしては、運なさすぎ……)


 そう下を向いた時――。

 これまで私とアケビの会話を聞きながら何かを手縫いしていたフロレンヌが、勢いよくソファーから立ち上がった。



「それは、()()()恵まれましたね!」



「幸運? フロレンヌ……話、聞いてた?」


 アケビが怪訝な表情を見せる。


「勿論、聞いておりましたわ! 婚約がライリー様の誕生日に()()()()のですよ? 次の日でも来月でもないのは『幸運としか』言いようがありません!」


「――!?」


 目の前の景色が一変する……フロレンヌの捉え方ひとつで、気持ちが前を向いた。


「なるほど、一理あるわね」


 アケビも納得の様子だ。


「フロレンヌッ! 助かったわ、ありがとう!」


「笑顔のお返しは、こちらを()()()()()()()、お願い致します」


 ソファーの後ろにある大きな包みを取り出した彼女が、私に『開けろ』と促す。


「何なの? ……わぁー、綺麗っ!」


 ふわりと現れた『青』を感じるオフホワイトのドレスが、私の視界を覆う。


 (確か……交流会前に試着したドレスだ。この為だったのね)


「少し早いですが、誕生日プレゼントです! 今度の舞踏会で()()()くださいね」


「ありがとう……フロレンヌッ!」


「お礼は()()()()に。私は彼女から依頼を受けて、この『戦闘用ドレス』を製作しましたの。腕の寸法が合わなかったので、まだ多少の直しは必要ですが……後、この髪飾りもどうぞ! こちらは()()()からです」


 フロレンヌから手渡された、青い薔薇の髪飾り。ネムのコサージュとお揃いだ。


 (嬉しい! こんなに感動したのは、初めてかも……ん? 『戦闘用』とは?)


 妙な違和感が、崩壊寸前の涙腺を塞いだ――。 

次回、第91話~祖父の助言(仮)~

明日か明後日に投稿予定です。

今週は話数が多いので、夕方にも投稿します。

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