第88話~VS国王陛下(後編その1)~
ブンッッー!
先手を打った剣先が、空振りの音を立てる。
隙を突ついて尚、力もスピードもMAXで振り下ろしたにも関わらず、国王はにこやかに(余裕で)私の一撃をかわして見せた。
「うむ、中々の太刀筋!」
「それは、恐れ入ります」
(やはりそうだ……)
普段からロドやクガイの相手をしていれば、目の前の敵がどれ程の強さなのか? 立ち姿でおおよその判別が出来る。
少なくともジェイルドは、セレクタントの中級士官以上の強さだ。
つまるところ……私のレベルでは、とても勝てそうにない。
(なにが『早く終わらせろ』よっ! ……もしや、私が早々に『負けろ』という意味なのか?)
無駄を嫌う祖父ならば、そう考えていても頷けた。
「次は、私から行くぞっ!」
ギンッッッ――。
鈍くて重たい音が、部屋の隅々まで響き渡る。
「うわっっ!」
刀で攻撃を防いだまでは良かったが、その衝撃からは逃れられずに、私は吹っ飛んだ。
「す、すまないっ! 軽くやったつもりだが、体を打ちつけたのではないかっ!? もう、終いにしよう」
「いっ、いえ……陛下。これくらい、何ともありませんわ!」
(この人、とんだけ強いのよ!? ロドやイーサンの護衛なんている!?)
強打した腰と尻の激痛に耐えながらも、どうにか立ち上がる。
『ちょっと、世紘っっ! 何で今日は『刀気取り』なの!? 少しは手伝ってよ!?』
妖刀の力を借りれば勝算はまだありそうなのに、本日の相棒は沈黙だけに留まらず、やる気すら感じない。
これでは、只の『日本刀』だ。
『チヲアビル……アマリ、コノマシクナイ』
久々に聞いた化け物の声に、私は発狂した。
『はぁぁ!? 血を好まない妖刀なんている!?』
『ココニイル……モトヨリ、メノマエノコイツモキライダ』
『国王まで知っているの!? だったら我が儘を言わずに、何とかしてよ!? このまま私が負ければ、いずれ貴方の『食糧庫』も丸ごと消えるんだからね!?』
『……チッ、ワカッタ』
思いの外、すんなり応じた妖刀。
これまでコツコツと私の裏へ溜めていた『瘴気=負の感情』の存在は、世紘にとってそれ程までに大きいのだ。
(暇を見つけては、狩りに勤しんだ甲斐があったわ……)
『ヤツヲクウ、ソコヲネラエ』
『それって王にも、裏の感情があるってコトよね?』
『ソウダ』
(よしっ、それならば!)
私はスピード強化の為に、スカートの膝から下を引きちぎった。
チャンスは一度きり……ブレイムが到着する前にさっさと蛇を出して、国王を仕留めるしかない。
瘴気が喰われている間は、餌食となる人間の意識が飛ぶ――その瞬間(数秒)を狙うのだ。
『ツギノコウゲキデ、デル』
剣と刀を何度か交えた後に、世紘の予告が入る。
『了解っ!』
常人とは違い、瘴気が出るまでに時間が掛かった。
攻撃を受け続けたせいで手は痺れ、感覚も殆ど残っていない。
「これ以上は無意味……攻撃も防御も、弱まる一方だ。非常に残念だが、次で終了とする」
「……(やっと)出たっ!!」
失格の烙印が押される寸前……国王から『希望の闇』が放たれた――。
次回、第89話~VS国王陛下(後編その2)~
21日か22日に投稿予定です。




