第87話~VS国王陛下(前編その2)~
「陛下と……『手合わせ』をするのですか?」
聞き違いの可能性も0(ゼロ)ではないので、一応確認してみる。
「そうだ。つい先日、私の元に脅迫状が届いた。だからこそ未熟な剣士に、息子の護衛を任せるつもりはない。いい機会だ……貴女の腕前を見せて欲しい」
(はい、手合わせ決定! しかも……)
「脅迫状っっ!? そこには何と書かれていたのでしょうか?」
ジェイルドが、ロドに目配せをする。
脅迫状の説明は、彼の担当らしい。
「……ブレイム殿下に対する『殺害予告』だ。それと『邪魔をするならば、例え国王でも命の保証はない』とも付け加えられていた。従って暫くの間、私はこの城で国王陛下を御守りする。お前の手助けは出来ないからな」
「そんなっ!」
(少し……とは言わず、実はかなり期待していたのにっ!)
「申し訳ないが、ロドとイーサンには常に私の護衛を優先させている。戦争の絶えない、現時点での『国王の死』……それだけはどうしても、避けねばならないのだ」
国王あってこその、モスカトア……そうなるのも当然だ。
(でも私にはまだ、彼等がいるわ!)
「……分かりました。セージ様やクガイと共に、必ず殿下を御守り致します!」
「そうか……ならば早速、手合わせを始めるとしよう! 暗殺者は単独とは限らない。今は1人でも多く、腕が立つ剣士が必要だ」
意気揚々とジェイルドが立ち上がる。
その姿を改めて見ると、髪色はオブジュ(王太子)と同じだが、端正な顔立ちや背格好はブレイムとよく似ていた。
『早急に終わらせろ、ライリー。特に遅れて来たブレイム殿下の前では、手の内を見せるな』
世紘を渡すついでに、私に耳打ちをするロド。
彼はブレイムを警戒しているようだ。
『……そのつもりです』
私も極力、本来の力は隠していたい。
(まあ、ロドとは異なる理由だけど……蛇を出す女性なんて、きっと『ドン引き』されるわ)
最終目標はあくまで婚約だが、どうせならその先(未来)で『愛ある結婚』がしたい。
彼が何を隠していても受け入れるつもりでいるし、そもそも私だって常人とは言えない――そこはお互い様だ。
しかしブレイムにとって『契約結婚』である限り、用が済めば婚約破棄をされる可能性も捨てきれない。
いや……心優しい彼が私を気遣って、愛情も無いのに関係を続けてしまう恐れだってある。
(それこそ、生き地獄だわ……)
どんなに『ポジティブに偏った』人間(私)でも、プライドはズタズタ……暫くは立ち直れないだろう。
「……どうした? これしきの事で恐怖や躊躇があっては、ブレイムは確実に死ぬぞ?」
「恐怖なんてありません、覚悟は出来ています!」
「それなら安心だ……後1つ言い忘れていたが、もしも全ての企てが『本人の所業』であれば、彼の望み通りに、命を奪っても構わない」
「……」
(あっぶなっっ!)
ジェイルドの言葉に、危うく舌打ちが出そうになった。
どうしてこうもハーロッジ家の人間は、私の心を揺さぶるのだろう?
「参りますっ!」
世紘を強く握りしめた私は、遠慮なく国王陛下を襲った――。
次回、第88話~VS国王陛下(後編)~
体調が戻り次第、投稿します!




