第86話~VS国王陛下(前編その1)~
体調不良(コロナ、2回目)の為、遅くなりました。
明日も投稿します。
「……今日に限って、これかぁー」
豪雨、強風、雷。
国王陛下との謁見当日、外は荒れに荒れていた。
それでも予定は変更されず、私はヤプとクガイを連れて、王城ではなくセレクタント城を目指す。
内通者の懸念から、国王は謁見の場にセレクタント城の地下を指定。
そう……元・世紘(妖刀)の部屋だ。
「本気に、死ぬかと思った……」
4時間後――。
様々なアクシデント(倒木や馬の暴走等)を乗り越えてようやく城にたどり着いた私達は、濡れた髪も服も拭かず、真っ直ぐ地下へ向かった。
「此処でお待ちしております、ご武運を……」
身なりを整えている数十秒の間に、修繕済みの分厚い扉を開けたクガイが、一礼する。
「ありがとう、いってきますっっ!」
『いってきます』に気合いを入れた私と、妖精仕様のヤプ……それから、腰元で沈黙を貫く世紘が、室内へ入った。
「遅いっ! 国王陛下がお待ちしているのだぞ!? 何をしていた!?」
扉が閉まり、1分にも満たない遅れにすっ飛んで来たのは、祖父のロドだ。
「申し訳ありません。悪天候で、思うように馬車が進まず……」
「言い訳を聞く気はない! 陛下の元へ早く行けっ!」
「はい」
沸き上がる感情を堪えて顔を上げると、広い部屋の奥に国王らしき人影があった。
顔はよく見えないが、半端ではない正体不明の『圧』だけは、ひしひしと感じる。
「……あのう、殿下はどちらに?」
通常サイズの世紘をロドへ預けた後に、隅々まで部屋を見渡したが、ブレイムの姿は無かった。
室内の家具は世紘の置かれていた台座と、国王が座る高価な椅子が一脚。
人間は私を含め、国王と祖父の3名のみだった。
「殿下は遅れているそうだ。この嵐では、それも仕方がない。まだ暫く掛かるだろう」
「……そうですか」
(もう、反論すら面倒だわ)
祖父との会話を早々に切り上げ、私は国王の元へ足を進めた――。
「悪天候の中、よく来てくれた。感謝する」
(これが、国王陛下……)
威圧だの威厳だのを超越した『覇気』――。
存在そのものに圧倒された私の体は、瞬く間に硬直した。
(息まで苦しい……)
モスカトア王国の頂点に君臨する『ジェイルド・ハーロッジ』は、この空間の全てを支配している。
(でも負けては駄目っっ! 私は此処へ、王子を勝ち取りに来たんだっ!)
「……この度は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます」
「礼には及ばない。私も貴女から、話を聞こうと思っていたのだ。まさか『婚約』とは、想像もしなかったがな?」
「驚かせてしまい、大変申し訳ありません。詳細は殿下がご到着後に、改めて……」
「ブレイムは居なくてよい。その方が寧ろ、好都合だ」
「……? それは、どういう事でしょうか?」
(全くもって、意味が分からない)
「大筋はセージより報告を受けている……『息子の命を守る見返りに、婚約を認めて欲しい』そうだな?」
「はい。相違ございません」
私は何とも言い難い底知れぬ恐怖から、頭を深く下げた(目を反らした)。
「では、私とこの場で『剣の手合わせ』を願いたい。剣士として、確かな実力が貴女に認められるのであれば、婚約を承諾しよう」
(はっ? ……痛っっっ!)
国王の、斜め上をゆく発想。
それを『どうにか処理しよう』と奮闘した私の前頭葉に、激痛が走った――。
次回、第87話~VS国王陛下(前編その2)~
明日、投稿予定です。




