第85話~苦手意識~
遅くなりました。
本日より、最終章です。
3つに渡る(人)生を通して、初めての求婚。
その光景は『まるで蛙を狙う、蛇の様だった……』と、後に少年(11才)は証言している。
返事を待つこと1分――。
その間にセージと兵士達が、私を取り囲んだ。
子供であるエデル殿下のみならず、その場に居合わせた誰もが、ブレイムに『危害が及ぶ』と思ったらしい。
誤解は直ぐに、ブレイムが解いてくれた。
しかし、求婚の返事をその他大勢にも聞かせる事態となってしまったのは、もはや罰ゲームとしか思えなかった……。
そんな求婚から、翌々日の午後。
キュラス家では、緊急の女子会が開催されていた。
午前中は両親への説明&打ち合わせで、既に私は疲労困憊だ。
(母の助言で早く済んだから、まだよかったケド……)
「……それはもう、求婚じゃなくて『脅迫』よ!」
青い薔薇のコサージュを胸につけた、少女の台詞。
ランチ抜きで挑んだ女子会。気力が尽きていた私は、ただ黙って皆の感想や意見を聞いていた。
(つか『脅迫』って、何?)
ネムはあのプロポーズを『命を秤に掛けた、結婚の無理強い』だと言う。
勿論そんな意図はないのだが、私を除く他の女子達も、おそらく『純粋な告白』とは捉えていない。
その証拠にお茶を用意するユーセ、眉間にシワを寄せるアケビ、全ての事情を把握したフロレンヌ……誰1人として、異論は無かった。
「あの……それで殿下は、どうお返事を?」
悲しげな表情のフロレンヌが、私を見つめる。
「それを聞くのは、傷をえぐる行為よ? フロレンヌ」
アケビが『まだチャンスはある』と、私の肩を叩く。
「とりあえず、ひと息入れませんか?」
そして執拗に、レモンバームティーを勧めるユーセ。
(フッ! 皆、私の撃沈を確信しているわね? 読みが甘いわよ?)
あの日――。
私は辛うじて、撃沈を免れた。
その理由は、ブレイムに『持ち越し』を言い渡されたからだ。
『……貴女の考えは理解しました。つきましてはその旨を、国王陛下へお伝え下さい。私を守る件を含めて、了承が得られるのなら『契約』を受け入れましょう』
よくよく考えてみれば、相手は大国の王子。
婚姻は自由に決められる案件ではない。
(でも、一週間かぁ……中々の拷問だわ)
基本的に、私は『曖昧』が苦手だ。
YESか? NOか?
好きか? 嫌いか?
白か? 黒か?
0か? 100か?
明確な答えは早期に次の目標を定めやすく、何より気持ちが良い。
しかしそれを求めれば求める程、前の人生では周囲との距離を感じる事が増えた。
皆が簡単に多用する『曖昧』を取り込む為、私も一応は努力したが、未だ使いこなせずにいる。
けれど……今回に限っては、望みがあった。
とりあえず『気持ち(心)』は後回しにして、国王の許可が下りれば、ブレイムとの『婚約』が決まる。
(つまりは『条件クリア=処刑免除』だっ!)
宙ぶらりんの5日間……私は女子会メンバーやクガイ、ヤプの頭脳を借りまくって、国王へのプレゼン計画を立てた。
次回、第86話~VS国王陛下(仮)~
7日に投稿予定です。




