第83話~つまり文化祭での勝負(後編その3)~
『お願い……』
私の視線に、フロレンヌが頷く。
「あっ、彼女だ!」
「フロレンヌ様ーっ!」
クガイや兵士を置いて、先にフロレンヌが舞台へ戻り、私の隣で手を振った。
『……どうかしら?』
『問題ありませんわ、それでいきましょう!』
揃ってお辞儀をしている隙に伝えた『(暗殺者)捕獲作戦』に、クラブ長であるフロレンヌが同意を示す。
舞台袖で待機中のクガイには、腰の後ろで『待て』のジェスチャーを送っていた。
「ではここで、御来賓のブレイム・ハーロッジ殿下より、ご挨拶をいただきたいと思います。今年も5名の方に、舞台上での謁見が許されておりますので、ご希望の方は挙手をお願い致します」
司会進行がフロレンヌに代わり、多くの観客が手を挙げる。
「今回は……見事な剣術を披露してくださった『ライリー・キュラス様』に、人選をお願いするのはいかがでしょう?」
作戦に沿ったクラブ長の提案。
賛成の拍手を受け、私は再度お辞儀をした。
「大変、光栄に存じます。では早速……」
そのまま胸元のペンダントへ、人選を丸投げする。
『世紘、教えてっ! 5人で間違いないわよね!?』
『ソウダ……』
1人につき、1~2分――。
妖刀の選んだ男女5名を、私は舞台へ招いた。
「これで全員がお揃いになりましたね? それではブレイム殿下に、盛大な拍手をお願い致しますっ!」
フロレンヌの掛け声で大きな歓声と拍手が巻き起こったが、それは瞬時に鳴り止んだ。
「……えっ!?」
「殿下は?」
会場の全員が、明らかな違和感に気付く。
そう……颯爽と登場したのはブレイムではなく、クガイと軍の兵士だった。
「何だとっ!?」
「くそっっ!」
舞台上の暗殺者(5名)が逃走を試みるが、兵士達によって阻止される。
「……皆様にご報告があります。殿下は体調不良により、ご退席をされました。従って発表会はここで終了となります。尚、舞台上の5名の方々は『王家よりお詫びの品』をお預かりしておりますので、そのままお待ちください」
「えぇぇー!」
「これで『おしまい』ですのっ!?」
案の定、ブーイングらしき声があちこちから聞こえる。
(マズイな……クラブ賞を逃すかも知れない)
私の心配をよそに、フロレンヌが逆転の一手を投じた。
「客席の皆様には『コサージュ』を劇場出口にてご用意しております。記念に是非、お持ち帰りください!」
思わぬ『お土産』に、エデル殿下を含めた観客達が、大喜びで劇場を後にする。
お土産は花が余った年にだけ、配られるらしい。去年は『無し』だったが、今年は開演前に準備されていた。
『静かになった……』
観客の居ない劇場で、クガイの指示が響く――。
「彼等はおそらく『毒』を仕込んでいる。徹底的に、身体検査をしてくれ!」
「ハイッッ!」
「……ありがとう、助かったわ!」
私は感謝を込めて、クガイの背中を軽く叩いた。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません。しかしよく『毒を持つ暗殺者が紛れている』と、お気付きになりましたね?」
「校門では厳重に、所持品検査をしていたでしょう? 忍ばせるとしたら『毒しかない』じゃない? 他は全部……彼のお手柄ね」
『フンッ』
餌を前にして『おあずけ』を食らった妖刀は、ふて腐れている。
ボディチェック&簡易毒薬検査の結果――。
髪飾りやブローチ……『殿下へのプレゼント』と称して手に持たれていた花束(白い薔薇の棘)にまで、毒が塗られていた。
「で? ブレイム殿下はご無事なのかしら?」
「はい。セージが劇場から遠ざけましたので、何も被害は受けておりません」
「それは安心したわ」
「後『ライリー嬢と話がしたい』……そう殿下から言付かっております」
「まあっ!? でしたら、着替えを……」
(何よりも嬉しい『ご褒美』っっ! 苦労した甲斐があったわ!)
「いえ……『早急に!』とのご要望でして、その時間はございません」
「えっ!? この格好で会うの?」
「はい。殿下は少し動揺されているご様子でしたので、出来るだけ早く緊張を解いて差し上げた方が良いかと……」
「そうよね、分かったわ!」
これだけ頻繁に命を狙われると、心が疲弊するのも当然だ。
(彼の求めに、応じなくてはっ!)
令嬢騎士は一刻も早く『癒し=私』を届ける為、家畜小屋へと急いだ。
【四章完結】第84話~つまり文化祭での勝負(後編その4)~
28日に投稿予定です。




