第82話~つまり文化祭での勝負(後編その2)~
切り所が悪く、本日は短めです。
明日も投稿します。
静まる場内――。
その要因である、舞台の中央で一手に視線を集めている『新たな騎士』はというと……ただただ焦っていた。
(……んで? こっから『どうしろ』とっ!?)
王子を逃がす時間を稼ぐ為に、居残った私。
とりあえずレプリカの剣を抜いたものの、その先はノープランだった。
『……どうされたのかしら?』
『これも、演出でしょう?』
『何かトラブルでもあったのか?』
『フロレンヌ様は、どちらへ行かれましたの?』
舞台上で動かない演者を前に、観客がざわつき始める。
(何かせねば……そうだわっ!)
私はある『儀式』を思い出し、声を張り上げた。
「我が名は『ライリー・キュラス』! 新たな騎士誕生の証しとして、英雄『ロド・キュラス』直伝……『出陣の儀式』を、これから披露する!」
「わぁぁー」
「本当にありましたの?」
「これは貴重だぞっ!?」
私の発言に、全観客が一気に沸く――。
出陣の儀式とは、ズバリ『殺陣』の事だ。
異世界においてその歴史は非常に浅く、兵士の精神統一や鎮静を目的とし、ロドが前世(日本)の能楽や歌舞伎からヒントを得て考案したものである。
しかしこれまで、公に披露された事はない。
セレクタント城のみで行われる『神聖な儀式』として、位置づけられていたからだ。
「スゥゥー」
目を瞑り、呼吸を整える……。
握っている剣は細身で、偽物だ。
(これなら、日本刀に見立てる事が出来るわね……)
※1・抜刀は済ませているので、私は呼吸と動作を合わせ、※2・正眼の構えに入った。
そして、10分が経過――。
(やっと、終わった……)
大きな拍手と、歓声に包まれる。
私は辛うじて笑顔を保っているが、実は今にも倒れそうだ。
スタイルキープの為に朝から何も食べていないので、エネルギーは0(ゼロ)を振り切っている。
しかもヒールの高いブーツのせいで、体の軸が流されないように踏ん張っていたもんだから、足までつりそうだ。
『……おっ!? これでようやく1人舞台から、解放されるわ』
丁度※3・納刀のタイミングで、フロレンヌと複数の兵士……そしてクガイの姿が、舞台袖に見えた。
※1抜刀とは、剣や刀を抜くこと。
※2正眼の構えとは、相手に剣先を向けて、構えること。
※3納刀とは、剣や刀を鞘に納めること。
次回、第83話~つまり文化祭での勝負(後編その3)~
明日投稿予定です。




