第81話~つまり文化祭での勝負(後編その1)~
遅くなりました!
「次は、No.12! テーマは『明けの月』ですっ!」
「わあぁぁぁー!」
「おぉぉー!」
舞台上で作品が披露される度に、劇場内がどよめく。
「この作品は、会員6名で作製を……」
「……」
司会者の解説には、多くの観客が耳を傾けているようだ。
「『明けの月』かぁ……どんなんだろう?」
覗きたい衝動が、またまた沸き上がる。
庭園の見事な出来映えと会場の反応から、その欲にどうしても駆られてしまう。
「だから『いけません』って! それよりも、やっと跡が消えましたね? 顔に線のついた状態で戻られた時は『どうしようか』と、頭を抱えました」
ヘアメイク担当の会員が、うっすら涙を浮かべる。
「それに関しては……大変、申し訳ございませんでした」
ブレイム観察後、小さな窓に顔を押しつけていた私の肌には、深い跡が残されていた。
患部を暖めたりマッサージをする為、メイクはやり直しに……1人(私)の身勝手な行動のせいで、多くの会員に迷惑をかけてしまったのだ。
そんな失態から、約1時間半後――私は舞台袖へと呼ばれた。
「最後を飾るのは、クラブ長であるフロレンヌ・ベイロッサが手掛けた、こちらの作品……No.20! 『新たな騎士』ですっ!」
出る直前に羽織ったコサージュ付きのブルーマントが、全身を覆い隠す。
「……よしっ!」
私は紹介と同時に、舞台を踏んだ――。
ここぞとばかりに、沸き上がる会場。
しかしそれは私と、もう1人の主役へ向けられたものだった。
『……お前もおるんかいっっ!』
久々にエセ関西弁で、突っ込みたくなる状況。
反対側の舞台袖から『絶世の美女』が、同時に登場していた。
私の衣装や髪色に合わせた、花のドレス。
これがまた文句を言わせないまでに、作品としての完成度が高い。
中央で合流したフロレンヌの手を取り、無理やりの笑顔で舞台上を歩く――その姿はどう見ても、花嫁と花婿だ。
(恥ずっっ! しかもこんな時に限って、殿下が見てるし……)
最近は勝負服どころか、マトモな格好で彼に会っていない。
これでは去年同様……『面白い』と笑われて終りだ。
半ば諦めつつ、私は2階のボックス席へ目をやる。
そこには『満面の笑み』で拍手を送る、ブレイムとエデルの姿があった。
(もう、嫌だぁぁぁぁぁー!)
『……オイ、クエルニンゲンガイル』
主の機嫌などお構いなしに、餌を求める妖刀。
『絶対、無理だからっっ!』
私は秒で断った。
『イマニモ、ソトヘデル……ヒトツデハナイゾ』
(外へ? それに複数? ……もしやっ!?)
再度、2階席へ視線を向ける。
「いないっ!?」
弟を残して、ブレイムの姿は消えていた。
裏の感情(瘴気)が、外(表)へ出る……それは『行動を起こす』事を意味していた。
この世界で大きく成長した瘴気は、命に影響を及ぼす可能性が高い。
(暗殺……ブレイムッッ!)
私は隣で手を振っているフロレンヌに、彼の行方を聞いた。
「殿下は挨拶がありますので、今は此処へ移動中かと……」
(狙いはそこかっ!)
『フロレンヌ、そのまま聞いて……ブレイム殿下の命が、狙われているかも知れないの』
『えっ!?』
『前を向いたままでっ! 敵に気付かれるわよ?』
こちらを見ようとしていたフロレンヌが、前に向き直る。
『そっ、そうですわね……それで、どうしますの?』
『この事を殿下の従者……出来れば、セージさんに伝えて。それと、クガイを呼んでもらえる? 劇場の外に居るわ』
『分かりました……任せてっ!』
笑顔で手を振り続けながら、フロレンヌが舞台上からはける。
(私は時間を……)
1人残された『令嬢騎士』が、一歩前に出る。
そしてマントを払い、レプリカの剣を抜いた――。
次回、第82話~つまり文化祭での勝負(後編その2)~
24日に投稿予定です。




