第80話~つまり文化祭での勝負(中編その2)~
(おかしい……)
前日の衣装合わせでは、半ズボンなど履いた記憶がない。
色がオフホワイトのなので、まだ辛うじて女性らしさが保たれているが、次にアフラ会員から差し出されたのは、ダークブラウンのブーツだった。
上半身は、キュロットと同系色の軍服。
磨き上げたデコルテも一切披露されず、分厚い生地に覆われた。
ドレスとは程遠い衣装……しかし髪型は、色とりどりの花が一緒に編み込まれたロールアップで、華やかではある。
「レプリカですが、こちらをお待ちください」
「……『男装』ですよね?」
「いいえ、違いますよ? テーマは『女性騎士』です! 後はこれで……描いていた通り、素晴らしい作品に仕上がりましたわっっ!」
満足げに私を愛でる、フロレンヌ。
仕上げの飾りは輝く宝石……ではなく、剣だった――。
「『騎士』って……」
大きく削がれた、自信。
私は舞台裏で椅子に座り、すっかり項垂(うなだ
)れていた。
『女性が剣を携える』など、この国では奇行と見なされる。
これではとても、ブレイムを落とすどころではない。最悪――拒絶される可能性まであるのだ。
(次回〈舞踏会〉に、全力を注ごう……)
そう気持ちを切り替えた矢先、どうやらターゲットである『私の王子様』が、劇場2階のボックス席に姿を見せたらしい。隣には、ミニ王子も居るという。
「うーん……」
私には『待機命令』が出されているが、気になって仕方がない。
(会いたい……何はともあれ、ほんの僅かでも『ブレイム不足』を解消したいっ!)
私は忍び足で、舞台を目指す――。
遠くからでもブレイムを拝む為に、気付けば行動を起こしていた。
とはいえ、舞台袖ではアフラ会員数名によるバリケードが張られている。
案の定……私を見つけたアフラ会員が、血相を変えて飛んできた。
「『舞台袖から客席を覗く事』は、絶対に禁止ですっ! お客様の目に触れる行動は、とにかく避けてください!」
「お願いしますっ! 一瞬だけだから、見逃してっっ!」
瞳を潤ませて祈りを捧げる(懇願する)が、会員の生徒は頑なに、首を縦へは振らない。
「2階……舞台裏の通路からで宜しければ、客席が一望できます。お客様側からも見えませんから、許可しますよ?」
私の背後で、フロレンヌがため息混じりに白状した。
「そうなのっ!? ありがとう、フロレンヌ」
「20分後に開演ですから、眺めるのは5分だけに留めてくださいね?」
「はいっ! 直ぐに戻りますっっ!」
2階まで駆け上がり、舞台裏の細い通路へ入った私は、手のひらサイズの小窓を見つけると顔を押しつけて、必死に目を凝らす。
「居たっっ! ……やっとだわ」
相変わらずの、超・美青年――。
幼い弟へ笑顔を見せる彼に、全身の力が抜けた。
(あっ、そうだ!)
私は相棒の存在を思い出し、胸元からペンダント(妖刀)を取り出した。
「世紘っ、起きてっっ!」
『ナンダ……オコスナト、イッタダロウ』
「ちょっと、見て欲しい人がいるのっ! 私の婚約者(仮)よ!」
『……アア、アイツカ』
「やっぱり、ブレイムの事も知っているのね?」
『シラン。ダガ……オブジュニニタ、ヨウリョクミエル』
「そう……」
兄であるオブジュ王太子のアレを考えると、納得の結果だ。
それに問題はその中身……彼が狙われている現状と、何か関係があるのだろうか?
『ヨウリョクアル……シカシ、スコシヘン』
「『変』? ……どんな風に?」
『ウイテハ、シズム』
「何それ? 『安定しない』ってコト?」
『ソウトモチガウ。ココカラデハ、ヨクワカラナイ』
「なるほど……」
『ソレデドウスル。クウノナラ、シツヲミタイ』
「『喰う』ってことは、裏があるのね? 貴方の餌になるかは別として、先ずは彼を守るわよ? ……おそらく『命のみならず』になると思うけど」
『……』
私はブレイムの秘密に、少し近付いた気がした。
次回、第81話~つまり文化祭での勝負(後編その1)~
20日か21日に投稿します。




