第79話~つまり文化祭での勝負(中編その1)~
「ココは……天国?」
目の前に広がるのは、お花畑。
耳に入るのは、天女達の緊張と緊迫に満ちた声だ。
(ん……? 緊張? そして緊迫とは?)
「――って、結局ドコなのよっっ!?」
ベッドから飛び起きた私の周辺には『ほうれんそう(報・連・相)』が飛び交っている。
「クラブ長! ライリー様が、お目覚めになりましたっ!」
「では直ぐに、ウエストの測定をお願いします」
「はいっ!」
2人の女性が強制的に、寝起きの伯爵令嬢を直立させた。
「……問題ありません! サイズクリアです」
「それは良かったですわ! 次は下の準備を……なるべく、急いでください」
「分かりました! ……花は、どういたしましょう?」
「『無し』にします。ですから後もう1cmだけ、ウエストを細く出来ますか?」
「必ず、絞ってみせますっ!」
「えっ!? しぼっ……うぎぁぁぁーっっ!」
装着済みコルセットの紐が複数の手によって、思いっきり引っ張られる。
内臓が口から飛び出る程の衝撃……私の悲鳴が、部屋中に谺した――。
「おはようございます、ライリー様。本日は宜しくお願いしますね」
かしこまった挨拶。
フラワーアートの会・会長のフロレンヌは、制服の袖をたくし上げ、珍しく髪をアップにしていた。
「ちょっとっっ! いくらなんでも、キツいわよっ! これだとまともに歩け……」
これ以上ないどアップで、美女の顔面が迫る。
そのサイコパス的な瞳に、背筋が凍った。
「えっと……どうして私は此処に? 医務室で寝ていたような気が?」
二度寝から目覚めた場所は、学院内にある劇場に隣接する控え室だ。
教室より広い部屋には、大量の花と生徒が入り乱れている。
「ええ……確かにライリー様は、先程まで医務室にいましたよ? 『ベッドで眠っている』と医師から聞いて、急ぎ様子を見に行きましたの。何をしてもお目覚めになりませんので、控え室へ運んでもらいました」
「『控え室へ』? もう展示会(ドレスお披露目)の準備を?」
「はい、お昼を過ぎましたから……そろそろブレイム殿下も、学院へご到着しますわ」
「は……? そんな時間だったのっ!?」
体感15分の『ちょい寝』は、2時間以上にもなっていた。
「キャァァァー!」
庭園(外)から聞こえる『歓声=合図』――。
(来たっっ!)
私は窓側までダッシュの後、勢い良くカーテンを開けた。
「いけませんっ! ライリー様!」
「カーテンを閉めてくださいっっ!」
「今は下着姿なのですよっ!?」
アフラ会の生徒達が、私を窓から引き剥がしにかかる。
寝ている間に制服を脱がされ、コルセットを装着されていた伯爵令嬢。しかし『羞恥心』ごときでは、決して怯まない。
(久々のブレイム殿下……せめて、一目だけでもっっ!)
「……その姿で、再会を果たすのですか?」
「えっ?」
とても冷たく……そして静かに、フロレンヌが私へ問う。
「貴女はこれから『この世で最も美しい姿』になるのですよ? それを先に見せずして他にどのような方法で、お相手の心を捕らえましょう?」
「――っ!?」
親友の指摘から、私は冷静になった。
(そうだ……)
この後『芸術作品』として、私はお披露目される。最高に美しく変身した姿をブレイムに見せれば、すんなり『惚れる』かも? 知れないのだ。
シャーッッ!
直ぐ様カーテンを閉める、下着令嬢。
「……では、そろそろ始めましょうか? ライリー?」
「ハイッ! 宜しくお願い致します、先生っ!」
素直に頭を下げる私に、フロレンヌから衣装が手渡された。
「先ずはこちらを、履いてくださいね?」
「へっ!? ……これは?」
「キュロットですわ」
「……」
私の思考は『半ズボン』を手に、暫し停止した――。
次回、第80話~つまり文化祭での勝負(中編その2)~
17日か18日に投稿予定です。




