第78話~つまり文化祭での勝負(前編その2)~
まほ研で30分程時間を稼いだ後――次に私は、生徒会長執務室のドアをノックした。
「……何をしに来たの?」
氷よりも冷たい、親友の対応。
本日のアケビは、普段の数百倍は忙しいそうだ。
「いやぁ。午前中は暇なもんだから、生徒会長様のお手伝いでもしようかと思って……」
「気持ちは嬉しいけれど、貴女に頼める仕事はないわ。家畜小屋にでも行ってみたらどう? あそこのお友達なら、何時でも話し相手になってくれるじゃない?」
「『今は清掃中だ!』と、飼育クラブの先輩に追い出されたわ。小屋掃除なら私も頻繁にしているし、加勢するをつもりだったけれど『汚れをつけて、フロレンヌには返せない!』そうよ?」
飼育クラブの副長とフロレンヌがお友達なので、私は動物達との会話を楽しむ事なく、校舎へ戻っていたのだ。
「あら、そうなの? でしたら教室……には、行けないわよね」
アケビの言う通り、そもそも自分の教室に『居場所がない』から、暇を持て余していた。
フロレンヌが在籍するクラスの催し物は必ず『花』関係と決まっていて、フラワーアートの会が『展示会(私のドレスも含む)』で使用する草花を、ブーケやリース等に加工して販売している。
クラブ賞(受賞確実)との相乗効果もあって、毎年のように売り上げがトップクラスだと聞いた。よって今頃、私のクラスは多忙を極めているだろう。
だからこそ……フロレンヌや私が教室に居ると余計に客を集め、現場に混乱を招くらしい。
フロレンヌはフラワーアートの準備があるので問題ないが、何もない私は暇人となった。
「……失礼しますっ! 会長、追加搬入の確認をっ!」
執務室の外から、生徒会員の声が聞こえる。
「ええ。直ぐに向かいます」
「……邪魔をしたわ。頑張ってねっ!」
私は空気を読んで、撤退するしかなかった。
「貴女もあまり無理をしないで、水分だけでも小まめに摂りなさいよ?」
「うん、ありがとう」
(さて……これから、どうしよう?)
これといった策が浮かばないので、とりあえず校内を散歩してみる。
去年の『使用人サロン』を期に、今年は各クラスが催し物にかなり力を入れていた。
様々な形態の喫茶店や、ダンスレッスン、模擬カジノ? まである。
活気に溢れる校内。
私の気分も自然と上がる。
(……でもなぁー)
『午後に向けての最終調整で、みんな忙しいのよ!? くれぐれも、他のクラスやクラブの邪魔をしないでね!』
生徒会長からの警告を思い出す。
既に『文化的交流会=文化祭』は開催中――勿論お客も迎えているが、本番は他校の生徒や王族が訪れる午後だ。
昔から人気者のライリー・キュラス(私)が各クラスに顔を出せば、それだけで『商売の妨げになり得る=午後にもそれが影響する』ので、遠慮しなければならない。
因みに……王族からの来賓は、ブレイムとエデル。
一応手紙でオブジュ王太子もお誘いしたが、見事に既読スルーされた。
「失礼しまーす」
返事のない医務室。
悩んだ挙げ句、私はあえての『静寂』を求めた。
学院専任の医師や看護師は不在。
「……うーん、こんな時は少し寝るかな?」
話し相手がいない(妖刀は寝ている)為、仕方なしにベッドへダイブする。
(清潔な匂い……)
それは遥か昔に、病院で嗅いだものと同じだった。
懐かしいけれど……『死ぬ直前』を思い出す。
人間だった方の前世で、私は交通事故に遭った。
重体でもギリギリまで生きようと粘ったが、1ヶ月後に『帰らぬ人』となってしまう。
「まあ……あの時の『選択(行動)』に、反省はないけどっ! ふぁぁぁ、おやすみなさい」
窓から流れる乾いた風に、主張を抑えた柔らかい日差し……私は、少し遅めの二度寝を堪能する事にした。
次回、第79話~つまり文化祭(中編その1)~
14か15日に投稿予定です。




