第77話~つまり文化祭での勝負(前編その1)~
「よっ!」
初秋――いよいよ『文化的交流会』当日の朝だ。
午前中のみ暇人の私は、校舎裏ある魔法研究クラブ(元・家畜小屋)を訪ねた。
「おはようございますっ! ライリー様」
ローブを羽織り、エルフのつけ耳を装着した新クラブ長のアルデ(青キノコ)が、笑顔で出迎える(旧クラブ長のミラ(紫)は卒業)。
「ささっ、どうぞコチラへ!」
「本日は『お客様・第1号』を引き受けて下さり、誠にありがとうございます!」
ラヴ(緑)もフランソワ(黄)も、元気で何よりだ。
(ていうか……みんな揃って『陽キャ寄り』になったような?)
「外……凄くない!? 開始まで30分以上もあるのに、もう行列がてきているわよ? それにまた、会員も増えたみたいね?」
去年の初動とは、真逆の盛況ぶり。
小屋の外から、まほ研・新会員の数名が、慌ただしくお客様対応をしている声が聞こえる。
しかも漏れなく全員、キノコ頭だ。
(強制? そんなワケないか……)
「それもこれも、ライリー様のお陰ですっ! 午前の部は予約で既に埋まってしまい、今は午後の抽選を行っております」
クラブ長のテンションは、明らかに弾んでいる。
「でしたら……わざわざ私がお客(サクラ?)をやらなくても、良かったのでは?」
「いいえっ! ライリー様はこのクラブの名誉会員なのですから、オープニングには、必ず参加をしていただかないとっ!」
ラヴ(緑)よ……いつから私は、役職に就いたのだ?
「……何でもいいから、早く終らせましょ? 時間が勿体無いわ」
部屋の奥では、私が貢いだ本物の水晶玉にも顎を乗せる、日雇い占い師『ネム・ストック』がスタンバイしていた。
(小遣いだけでは足りず、セレクタント城の『清掃バイト』までして買ったのに……)
しかし苦労をして購入をした成果は、大いにあると思う……エルフ耳を披露したローブ姿のネムと水晶玉の組み合わせは、最強の『萌え』を演出していた。
「それじゃあ……サクッと『恋愛運』でも、占ってもらおうかな?」
「……は? それって、今さら必要なの? 私がどう占ったって、今日中に『勝負』する気よね?」
「ええ、でも気になるじゃない? ……そういえば、ネムは自分を占ったりしないの? 失恋の傷が、癒える方法とかさ?」
「今回は相手の干渉がウザったくて、私から振ったのっ! もう『恋愛』でいいから、始めるわよ!」
ネムは最近、年上の彼氏と別れた。
(これでミニ王子にも、チャンスが回ってきたわね!)
「はぁーい……で? 私の恋愛運はどうなの? 初回は、うまくいきそう?」
「『初回』って……何度も求婚をするつもり?」
「当たり前でしょ!? 数回ぽっち断られたくらいで、この私が諦めると思って?」
「あっそう……貴女らしいわね? これから、結果を言うわ」
「早っ! それで、それでっっ!?」
「常に冷静でいないと、大暴走を起こすわよ?」
「えっ!? 彼(ブレイム殿下)が、暴走?」
まさか自暴自棄になって……とか?
「違うに決まっているでしょ!? 『貴女が』よ!」
「は? 私っ!? とうとう我慢が限界に達して、押し倒すのかしら? しかし……それもアリか?」
「馬鹿なコトを言ってないで、気をつけなさいっ! 学院では、かなり目立つわよ?」
「ハイ……そうします」
敵が潜んでいるかも知れない、校内での目立った行動は、なるべく避けた方が良い。
伯爵令嬢っぽく、スマートに王子を落とさなければ……。
『大暴走なんて、絶対にないわ』
私は目の前にある水晶玉に『冷静』を誓った――。
次回、第78話~つまり文化祭での勝負(前編その2)
13日(土)に投稿予定です。




