第74話~ひねくれ者の集い(後編)~
「……どうした、ネム? まだ何かあるのか?」
クガイの言葉に、少女へと視線が集まる。
「1つだけ『注意事項』があったのを忘れていたわ……言ってもいいかしら?」
「それはOKよ! 世紘も目の前にいるし、心配事は皆で共有するべきだわ。貴方もそれでいい?」
『アア、マアナ』
机上の刀掛けに置かれた妖刀が、ぶっきらぼうに答えた。
本来の姿に戻ったからか、今は機嫌も悪くなさそうだ。
一呼吸置いた後、ネムが口を開く――。
「前の持ち主であるロドには、元から魂に防御が備わっていたわ……無装備な貴女の場合、少しでも感情が裏へ回れば、他人の瘴気に侵食されて『狂う』わよ? ねぇ、世紘様?」
『フンッ……ソウダナ』
「げっっ!? 初耳だけどっ!?」
『狂う』と聞いて、ハーブティーを吹き出しそうになった、私――。
『マザルト、メシガクサル。キヲツケロ』
夕方の狩りで余った瘴気は、今現在『心の裏=私の内側』にある。
先程チラッと覗いてみたが、1人の男性を中心に、激しい嫉妬と憎悪が見えた。
(あれに飲まれるのは、ちょっと勘弁だわ……)
「世紘……食欲を少しだけ、抑えられない?」
『コトワル』
主が気を使って聞いているのに……即答だった。
「絶食や我慢は、なるべくさせない方がいいぞ? 彼は餌が無くても力が弱まるだけで、死にはしない。しかしそれが異世界で長期間ともなれば、周囲に何らかの悪影響を及ぼす可能性があるそうだ。ロドは何十年も前から、その危険を感じ取っていたらしい」
天井付近から聞こえるヤプの声に、ユーセの表情が強張る。
「『悪影響』とは、実際にどんな事があるのです?」
「前例がないからな……その度合いも、範囲も『予想困難』だ」
「そうですか……」
「ていうか、本人はどうなの? 自分の妖力でしょ? 解らないのかしら?」
ネムは、世紘を凝視していた。
『シラン……オマエタチモオナジ。ジブンノヨウリョク、アマリワカッテイナイ』
「『同じ』? それってどういう……?」
「彼は何と言っているの?」
世紘との会話を、ネムに教える。
「……それもそうね」
そう笑みを浮かべて、少女は小さく呟いた――。
「……えっ!?」
「だからっ! 私達が『魔法使い』だと、何となく分かるみたいよ?」
後輩の詳細な説明に、ユーセが強い反応を見せる。
「それなら、ブレイム殿下とお会いすれば『彼の真実』が見えませんか!? あっ……でも週末は確か、ご不在でしたね」
以前よりユーセやネムには、私とクガイが苦労して手に入れた、ブレイムの髪の毛を調べてもらっている。
魔法の痕跡や過去の記憶を明らかにし、私は条件達成の為にも、彼の隠された『秘密』を知りたいと思っていた。
分析の結果――はやり普通の人間とは少し違う特徴があるそうなのだが『かなり巧妙に隠されていて、それ以上の情報が出ない』と報告を受けている。
けれど……。
「そうよっ! ブレイム殿下が不在でも、王太子のオブジュ様はいるわ! もしかしたら世紘(妖刀)を通じて、何か分かるかも知れないっ!」
ブレイム暗殺未遂後のスピーチ大会で、不可解な行動を取っていた王太子を探るのは、決して無駄ではない。
これで週末が、より楽しみになった――。
次回、第75話~王太子のあだ名~
明日か明後日に投稿予定です。




