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第71話~王城でのお仕事~

遅くなりました。

「ライリー様……()()()()なりましたよね?」


「そっ、そんなことはないかと……」


 晴れて親友となった私のお腹を、鬼の形相で睨む、絶世の美女。

 2週間の自宅療養後に学生復帰をしたその日――学院の生徒会長執務室にて、早速フロレンヌのチェックが入った。


 冷や汗が止まらない、下着姿の私。

 主がピンチだというのに、妖刀(せつな)は制服のポケットで、呑気にお昼寝中だ。


「いいえっ! ウエストが3cm、ヒップが2.5cm、サイズアップしておりますわっっ! 私が送った手紙は、1通も読まれなかったのですか?」


 療養中にフロレンヌから届いた何通もの手紙には、遠回しに『太るなっ!』と、しつこく書かれていた。


 しかし謹慎中とは違い、主にベッドで過ごしていた今回。脂肪増加を阻止するのは、どうにも無理だった。


 (ストレスで増えたお茶菓子の量については、あえて言わないでおこう……)


「申し訳ありません……()()迄には、元に戻します」


「直前では困りますっ! 今月中に、お願いしますね?」


「そんなっ!? 後、10日もな……」


「……」


 笑顔のフロレンヌ。

 しかしその目は、少しも笑っていない。


「承知いたしました……」


 (ここは素直に、応じた方が良さそうね?)



「……おふたりさん? お話が落ち着いたところで、お茶にしません? 勿論、お茶菓子はナシでね?」


 私とフロレンヌのやり取りを机越しに見ていたアケビが、笑いを堪えながら席を立った――。



「ふぅー」


 無糖紅茶を一口飲んで、溜め息を吐く。


「何? そんなに、お菓子が恋しいの?」


 呆れ顔のアケビに対し、私は首を横に振った。


「いや……『時間が無いな』と思ってさ?」


「交流会ですか? 後、2ヶ月と少しですものね……」


 私と同じ様に息を吐いたフロレンヌが、()()()()が描かれた、用紙の束を手に取る。


「交流会もそうだけど……その()すぐに、舞踏会だってあるじゃない? まだ何の作戦も考えていないし、せめてもう一度、王城へ偵察に行きたかったわ」


 今年の王家主催による舞踏会は、文化的交流会(文化祭)の後に開催される、たった1回のみ。

 つまりその舞踏会こそが『条件達成』のラストチャンスだ。

 ここでブレイム(の心)を仕留めなければ、私の『死刑』が確定。僅か1年で、()()()()()が終了してしまう。



「舞踏会に、()()()()が必要なのですか?」


 首を傾げる、フロレンヌ。


 (そうだったわ……彼女は何も知らないのよね)



『色恋に興味がない』のは、既に分かっている。

 ブレイムと仲睦まじく()()()()()のも、親や周囲の期待を裏切らない為だった。よって本人曰く『特別な感情はない』らしい。


 こうなると親友という立場や知恵を増やす意味でも、彼女に全てを話すべきなのだが、ドレス製作に集中をしている今、()()()混乱をさせたくはない。


 春からの数ヶ月――芸術に向き合うフロレンヌを、目の当たりにしてきた。

『何もない所から、作品を生み出す』……これが命を削る程に大変な作業だと知り、私も真剣に彼女を応援している。


 (打ち明けるのは、交流会が終わってからにしよう……そして私は、ダイエットに励むっ!)



「おっ、王城の雰囲気に見合ったドレスを選びたくて。それとスピーチ大会の際に、()()()様を初めてお見掛けしたので……『ご挨拶を』と思ったの」

 

「オブジュ様に?」 


「ええ、まあ」


 (苦しい言い訳……だったかな?)


「そうでしたの!? キュラス家のご令嬢として、()()()()様にご挨拶をされていないのは、些か問題ですわね?」


 フロレンヌの表情に、疑念は感じない。


「オブジュ様は交流会や舞踏会に、殆ど参加をされないのよね? 私も数える程度しか、お会いした事がないわ」


 ティーカップを置いたアケビが、腕を組む。


 (ブレイム同様、やはり簡単には会えないか……彼にも色々と、探りを入れたかったわ)


「あの……もし宜しければ、来週末に王城へ花を飾りに行くので、ライリー様もご一緒にいかがですか? その日はオブジュ様も『いらっしゃる』と、聞いておりますし」


 思いも寄らない、フロレンヌからの提案。


「えっ! でも、(部外者が)行って大丈夫なの?」


「私の『お手伝い=仕事』としてなら、許可が下りますわ」


「ライリー、良かったじゃないっ!?」


 アケビも喜んでいる。


「う、うんっ! フロレンヌ、ありがとう!」


「お礼を言うのは、こちらの方です。私の我が儘に長期間、付き合わせているのですから……」


「何を言っているの? 友達でしょ? いくらでも付き合うわ!」


「ライリー様……ありがとうございますっっ!」

 

 そう涙を浮かべた、フロレンヌ。

 私の言葉を素直に受け取った彼女は、遠慮なくアイデアの発掘に取り掛かった。



「やっと、終わった……」


 2時間後――。

 ようやく拘束を解かれた私は、選定に夢中のフロレンヌと、仕事が残っているアケビより先に、執務室を後にした。

次回、第72話~初めての斬撃~

29日(土)に投稿予定です。

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