第67話~爺ちゃんと孫娘(中編その2)~
今はもう使用されていない、牢屋や拷問部屋のある地下1階。そこからもう1つ潜った地下2階に、その部屋はあった。
数え切れない量の鍵を開けながら、ロドが語る。
「前世の家では、代々受け継がれていた『刀』でな……エルフの手違いで、私と一緒にこの世界へ来てしまったのだ。奴は極度の人見知りで、触れる事が許されたのは私と息子、そして孫のライリーの他にはいない。しかし2人には刀の受け継ぎを拒まれ、正直困っていた」
(誰も貰ってくれないのね……それにしても、意思表示をする刀なのかしら?)
「父はまだ分かりますが、お孫さん(元・ライリー)にもですか? 貴方様と彼女は昔、とても仲が良かったと聞いておりましたが……」
「ライリーは幼い頃から、何時も私の側に居た。元々備わっている素質から、てっきり『剣士や軍人』を志しているのかと思い、かなり厳しく指導をしてしまった。あの子が『心から求めていたモノ』に気付いた時には、もう別世界へ行った後だったよ……」
世界中を飛び回る両親に、軍人の祖父……彼女はきっと『家族』を欲していたのだろう。
「それで私に?」
「……そうだ。今の私では体格に合わず、子供の頃のように上手く扱えない。奴も色々と不満が溜まっていたのか、この部屋に閉じ籠ってしまった」
『引きこもりの、日本刀ねぇ……』
全てを解錠したロドは、常人1人では到底動かせないであろう、大きくて分厚い扉を開ける。
彼は人間1人を通す隙間が出来たタイミングで、私を先に室内へ誘導した。
「少し……不気味ですね?」
中は真っ暗で、何も見えない。
さっきまでとは違う、妙に穏やかな祖父の声が、背後から聞こえた。
「君が剣士を志願した時は驚いたが、どちらに転んでも、これで問題が解決する……礼を言わなくてはな?」
「問題……どういう意味です?」
「直ぐに分かるさ……『妖気』の滞りも限界が近く、本当に助かったよ」
(それは大変……って、妖気!?)
「妖気だなんて、聞いおりませんがっ!?」
「おや? 『妖刀』だと言わなかったか? まあとりあえず、異世界での暴発だけはどうしても避けたい。私でも被害が想像つかんからな? 君……いや、ライリーには奴の愚痴を存分に聞いてもらい、是非とも彼の主になって欲しい。これは、夕飯と茶だ」
しおむすび(2個)と竹水筒の入った巾着袋を、私の胸に押し付ける祖父。
「――!? もし断られたら……」
「相手は化け物だが、少しの恐怖と苦しみに耐えるだけだ……亡骸はちゃんと『弔ってやる』から、安心してくれ。友達も全員、葬儀には参加させる」
「えっっ!? ちょっと、待っ……」
バタンッッ!
秒で閉じた扉――。
お察しの通り、内側からの開閉は不可能だ。
「……」
(これだからあの人、嫌いだわー)
滅多にない祖父との(まともな)交流から、突然訪れた命の危機。
未知の化け物との対面は、こうして幕を開けた――。
次回、第68話~爺ちゃんと孫娘(後編)~
明後日の深夜に投稿予定です。




