第65話~爺ちゃんと孫娘(前編)~
春の『キュラス家危機一髪』から、3ヶ月――。
私は自宅で、のんびり休日ランチを堪能していた。
ベイロッサ家との関係は、至って良好。
これまでと変わらずに、使用人達やネム、ユーセ、クガイは、キュラス家で働いている。
ただ私のみ……伯爵(父親)から4時間の尋問と、1ヶ月間の自室謹慎処分を受けた。
約束を破った上に、計画性の無い単独行動。父であるイーサンの逆鱗に触れたのは、当然の結果だ。
学院以外の外出は、一切禁止。
セレクタント城での訓練すら、許されなかった。
「ライリー様。ロド総帥がお呼びです」
セレクタント城の使者が、キュラス邸にて頭を下げる。
「どうせなら、朝(訓練時)に言って欲しかったわ……」
のんびりから早食いに切り替えて、私は昼食を済ませた。
走って移動をする時間もない為、馬車でセレクタント城へ向かう――。
車内では、従者役のクガイと2人きりだ。
「……」
「私の顔に何か?」
無表情のクガイ。
十分に反省の後、謝罪をしたのだが……以前にフロレンヌを試す『餌』として、暫く学院に放置したのを、まだ根に持っているのだろう。
「何でもないわ……」
このチャンスを生かすべく、私は自分の心を観察していた。
(今回も『無し』か……結局、ネムが正解だったのかしら?)
スピーチ大会を終えた夜――私は緊急女子会を開いた。
ネムにユーセ、疲れているであろうアケビも、久々のお泊まり参加をしてくれた。
「はぁー!? 『クガイを、好きになった』ですって!?」
「『かも?』よ! かもっっ!」
ネムの解釈に多少訂正はしたものの、私は皆へ診断を求めた。
「えっ! そうなのですか?」
「どうしてまた、そう思ったのよ?」
少し嬉しそうなユーセに、冷静なアケビ。
「それは……」
スピーチ大会で、胸が『キュンキュン』してしまった時の状況を、事細かに説明する。
「それはきっと……恋だと思います!」
「ブレイムに会えない寂しさから、逃げているんじゃない?」
「どれも違うわね……危機の共有から、緊張と恋を勘違いしただけよ」
上から、ユーセ・アケビ・ネムの診断結果だ。
ここから3名による、恋愛談義が開始されたが、明確な答えの出ないまま、お開き(就寝)となった――。
『クガイと2人になった時に、自分の気持ちを確かめてみたら?』
翌朝の帰り際に、アケビからアドバイスを貰った私――。
それを今、揺れる車内で実行している。
「ライリー様、到着しました」
数回に及ぶ確認の結果――『偽の恋』だったと判定を下す寸前で、クガイが先に馬車を降りる。
「あっ、はい……」
差し出された手を握りながら、私は彼にブレイム殿下を重ねていた――。
「呼び出して申し訳ない。ライリー」
畳の部屋で聞くその声に、全身が強張る。
時に厳しく、時に冷たく、時に理不尽な祖父に対し、私は『恐れ』と多少の『嫌悪感』を抱いていた。
「いえ……」
「そう、固くなる必要はない。これからお前に、剣を渡そうと思ってな? 明日以降でも良かったのだが、奴が急かすので、こうして呼んだまでだ」
「剣……ですか」
「嫌なのか? 木刀が良いのなら、無理にとは言わないぞ?」
「いえっ! ありがたく、頂戴しますっっ!」
(……本当にっ!? 死ぬほど嬉しいっっ!)
前にお試しで、クガイのを持たせてもらった時は、それはもう興奮した。
『欲しくて、欲しくて、堪らないっ!』
その熱量は、ゲーム機を欲しがる小学生にも匹敵する。
それがやっと、この手にっ!
私の剣……私だけの本物!
「鼻を広げる程に喜ぶとはな……令嬢らしからぬ反応で、安心したよ。ならば早々に『対面・対話の儀』を行うとしよう」
「対面・対話の儀?」
「ああ、そうだ……と言っても、お前は何もする必要はない。ただ、話を聞いてやれば良い」
「話を? どなたのですか?」
「何を言っている? 剣に、決まっているだろう?」
「……」
この返し……。
大歓喜から一転、私を瞬時に不安の渦へと突き落としたのは、やはり祖父のロドだった。
次回、第66話~爺ちゃんと孫娘(中編)~
明後日に投稿予定です。




