表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/97

第6話~消えた主(ネムの葛藤その2)~

「申し訳ございません、ネムさん。今日は父も母も不在でして、私のもてなしでは至らないところもあるかと思いますが、どうぞ召し上がってください」


 (スゴい、ご馳走……)


 屋敷に到着後、想像以上の豪華な料理で歓迎をされたネム。

 外見(しか)り14才とは思えない程に礼儀正しく気さくな令嬢と、穏やかな使用人達のおかげで、身分不相応な食事も心から楽しめた。




「ネムさんは、どちらにお住まいなのですか?」


 食後のティータイムで、紅茶の入ったティーカップをソーサーに置いたネムが、うつむき気味に答える。


「シンリョクの森()()()、家もちゃんとあります」


「シンリョクの森……確か『神秘的な緑』で有名ですね。しかし、とても深い場所に位置すると聞いています。国境も越えなければいけませんし、かなりの長旅ですよね? 目的地はどちらですか? 何処へでも馬車でお送りしますよ」


「いえ、森へ帰ります……『耳の形が普通ではない』のに、町へ出た私も悪いのです。気にしないで下さい」


「耳……ですか? 良く似合っていますよ? ネムさんのチャームポイントですね!」


 澄みきった青空のような笑顔を見せる、伯爵令嬢。

 晩餐終了後、ネムはキュラス家の使用人を志願した――。




「……」


 出会いから3年が経過した昨日――(あるじ)は消えた。

 

「壊れそうだよ……また助けてよ、ライリー」


 ()()()悲しみに襲われる少女。

 3年前のライリーが直してくれた、黒頭巾を握り締める――。



「ネムー! ドコにいるのぉー!?」


「……チッッ!」


 今現在『最も聞きたくない声』が、直ぐそこまで迫っていた――。



 



 ◇◇


「あっ! 見つけた! こんな所で、何をしていたの?」


 ライリー・キュラスとなった翌日――。

 ヤプに居場所を聞き、私はクガイを連れて森へ入った。

 目的はネムと話をする為だ。


 子供が条件達成に役立つのかはまだ不明だが、私の存在(中身)が原因で、12才の心に傷を負わせたのは確かだ。

 (あるじ)……又は保護者として、無視はできない。


「そっちこそ、何しに来たの? この際だからハッキリ言うわ。私はアンタが大嫌いよ! 仕事はするけど、他は関わらないで! 鬱陶しいのよ……あっっ!」


 強気発言の後に、何故か慌てて頭巾を被る少女。


 (髪型が()()()()()だから、恥ずかしいとか?)


「……何も言わないの?」


「『言う』って何を? 私が嫌いなんだよね? 理解したわよ」


「違う! そこじゃなくて……今、私の耳を見たでしょ!?」


「耳? ……ああ、自慢をしたいの? ハイハイ。可愛いー可愛いー、()()()()()()()()


「えっ?」


「まだ足りない? 言われ慣れてるでしょうに……でも続きは後で! もうすぐ日が暮れるから、屋敷へ戻りましょう」


 (直ぐに暗くなるわ。早く帰らないと! 来た道は確か、向かって()だったわね)


「右はダメっ! 獣が()()から、左の道を通って」


「あら? 『大嫌い』なのに、危険は教えてくれるのね?」


「別に……アンタの()を傷つけたくないだけ」


「ふぅーん」


 (ヤバッ! 母性本能が開花しそう……)


 ()()()()のツンデレ娘が可愛い過ぎて、ニヤニヤが押さえられそうにない。


「もうっ! ほんっとに、鬱陶しい人ね!」


 顔を赤くしたネムは、怒って先に行ってしまった――。


「……どう思う? クガイ」


「なかなか手強い()()かと」


「思春期? こっちにもあるのね、懐かしいわー! ……ところでクガイ? 眼鏡を外してくれるかしら?」


『日暮れ時の視界悪化』を理由に、今日もイケメンは拝めなかった――。

次回、第7話~変態の境界線(いざ、舞踏会へ!)~

もし、少しでも気に入って貰えたら、広告の下にある☆☆☆☆☆のクリック(正直な感想、大歓迎です!)やブックマーク登録を是非お願い致します!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ