表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/97

第55話~春に咲く、狂気の花~

 新学年、初日――。

 馬車で出発した私とヤプを、春風が出迎える。


「でかっっ!」


 やさしい色の草花に寄り添うのは、野球グローブサイズの紋白蝶。

 日本の桜が恋しい……それでも異世界の春は、耐え難い目のかゆみや、滝のごとく流れ出る鼻水に悩まされる事が一切ないので、とても快適だ。


 (花のいい香り……でも、最後の春になるのかな?)


『STOP! ネガティブ思考!』そう心得ていても、つい考えてしまう。


 この異世界で私が生き残るには、救世主として与えられた『使命=条件』を達成しなければならない。

 その条件とは、モスカトア王国の第2王子である、ブレイム殿下との婚約。

 たが……その道のり(同意)は遥か遠く、関係は未だに友達止まりだ。

 加えて、ターゲットは何者かに命を狙われている。お相手が死んでしまっては当然、条件達成は不可能となる。


 (婚約は『他の王子でも可』らしいけど、王太子はブレイム殿下暗殺未遂に関わっているかも? だし、第3王子は留学中。第4に至っては、まだ子供なのよね……)


 どう甘く見ても、順調とは思えない。

 新たな()()が必要だ。

 


 脳内整理が完了したところで、モスカトア・第一女学院が視界に入る。


 (今日から()()()か……何だか緊張してきたわ)


 この感覚(ドキドキ)は、何年振りだろう?


「行ってきます!」


「おう、行ってらっしゃい」


 校門付近でヤプに見送られ、学び舎のある古城まで、足早に向かう。

 やはり()()が気になって、気持ちが焦る。

 1年毎に行われるクラス分け……これそこが、心拍異常の原因だった。



「あっ! 来ましたわっ!」


「ライリー様よっ!」


「道をあけましょう」


 廊下に貼り出されたクラス表を背に、多くの生徒達が私を見るなり、ざわつき始める。

 しかしどうしてか? 嫌な感じはしない。


 (なんなの? それに少し、浮かれているような?)


 注目を浴びつつ、顎を上げる。

 視線の先にある7枚の羊皮紙には、名前が並んでいた。


 (アケビは『19ー2』なのね。私は……)


「えっっ!?」


 その現実に、思わず後ずさる。


 親友(アケビ)と同じクラスに『ライリー・キュラス』の名は無し。


 (『19ー6』……)


 しかもよりにもよって、()()と同じクラス。

 私は少しの間、その場でフリーズした――。




「ライリー様っ! 窓際の席がお好みでしたよね? 私の隣がまだ、空いておりますわ!」


 絶世の美女(恋敵)が、手招きをする。

 教室の空気を察するに、拒否権はない。


 私は無理やり広角を上げて『フロレンヌ・ベイロッサ』の隣に着席した。


「こうして『級友になりたい』と、心より願っておりました!」


「そうですか……」


 これが前世でもたまに遭遇していた、()()()()の難所。


 (スピーチ大会では、明らかに私を睨んでいたよね?)


 アケビ曰く『フロレンヌ嬢の()()なんて、見た事も聞いた事もない』そうだ。


 それが何故、私に?

 やはりブレイム殿下なの!? にしては、今さら感が……。

 何か特別な事情があるとか? それとも企て?


 真意を知るのが、ちと怖い。


「改めてまして……『フロレンヌ・ベイロッサ』と申します。これから、宜しくお願い致しますね? ライリー様!」


「『ライリー・キュラス』です……こちらこそ、お願いします」


「ハイッ!」


 一瞬にして、笑顔の花が咲き誇る。


 (美しい……だけれどもっ!)


 そんなクラスメイトを前に、私はゴクリと息を飲んだ――。

次回、第56話~生徒会長との密会~

明日の早朝に投稿予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ