第47話~最後の悪あがき(クガイ・セマムの忠誠心その3)~
クガイが頻繁に通っていた村――。
そこは稀少な茶葉の産地で、最近は国外からも評価を得ていた。
その噂を聞きつけたモスカトア王妃が、他国への訪問ついでに『産地を直接見たい』とクガイの国へ申し入れる。
勿論大国からの要望は断れず、国王は了承していた。
しかしそれは、反逆罪で村への攻撃が決まった後の話。
普段から適当な貴族の仕事ぶりが災いを呼び、軍との情報共有を怠るという、あり得ない事態が起きたのだ。
こうして、村への攻撃と隣国王妃の訪問が、同日に重なった――。
その名を名乗る前に、王妃は砲弾で1番最初に命を落とす。
それを知ったモスカトア国王の怒りが総攻撃となって、国家滅亡にまで追い込んだ。
「ウオォォォー!」
どんなに不遇を強いられていても、クガイは祖国を守る為に剣を振る。
そんな戦いの中で、彼はロドと出会った。
「とっくに勝ち目はないぞ? 諦めろ、小僧」
「家族は皆殺された……俺は絶対に、お前達を許さないっ!」
「家族の仇討ちか? お前の親や親戚、そして国王が犯した罪を考えれば、当然の報いだろう?」
「王妃の命1つで、どれだけの命を奪えば気が済む? モスカトアはいつから、残虐を遂行する国家に成り下がった!?」
「もしや……祖国の『真』を知らないのか? ならば教えてやろう、クガイ・セマム」
「どういう意味だ!? それに何故、私の名を?」
「生き残った村人に頼まれたからな……『お前を助けて欲しい』そうだ」
周囲に味方は1人も居ない――。
目前の敵から殺意は感じられず、その証拠に大剣を鞘へ納めている。
「話を、聞かせてくれ」
クガイは大人しく、ロドの言葉に耳を傾けた――。
約30分後、落ちた王城の手前にある軍事テントの下で、ロドが話を締めくくる。
「……とまあ、有名な悪事を並べてみたが、余罪はまだまだある。王妃の件を除いても、これ以上見過ごすのは難しい状況だったのだ」
「……」
黙り込むクガイ。
というより、ショックで声が出せなかった。
他国への侵略行為と、人身売買。
密輸や賄賂に、罪無き自国民の処刑。
特に心を痛めたのは、今回襲われた村が国連の定める違法植物の栽培を強要されていたという事実。
村人達は罪の意識から『人の命を奪う植物の栽培を辞めたい……その代わりに、上質でお金になる茶葉の産地を目指す』と国へ直訴していた。
実際に努力が実り、村は違法植物の栽培中止を求めたが、下された審判は『消去』だった。
「感想はどうした? 言い訳でも良い、何か申せ」
「……ろせ」
「ん? 何と言った?」
「私を殺せっっ!」
それが彼の願いだった。
もう全てがどうでもよくなったクガイは、生きる事を放棄。
(でもせめて、コイツだけは……)
最後に隠しナイフで『ロドを仕留めよう』と目論んだ少年。
結果『死』さえ許されず、獄中生活となった――。
「ポタッ」
時折天井から垂れる、水滴の音。
1年目、それだけが彼に癒しを与えてくれた。
しかし獄中生活2年目のとある夏日、我慢比べに負けた少年クガイは、とうとう声を発してしまう。
その演出を担ったのは他でもない、ライリー・キュラスだった――。
次回、第48話~恋のゆくえ(クガイ・セマムの忠誠心、その4)~




