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第36話~女子会の生け贄(後編)~

 学院の休み時間によく聞かされた、親友であるアケビの父親や兄との確執(愚痴)……。

 どうやら私は嫁入り候補として、知らぬ間に他人のお家騒動へ参加をしていた。


「でもアケビ、その(嫁入り)話は前にも言ったけれど……」


「分かっているわ。私だって()()()な兄に、貴女を渡すつもりなんてないわよ!」


 (あっ、()()()なんだ……)


「それに文化的交流会から、確信を持ったの。私の方が兄達よりも優秀だって!」


「それはまた……衝撃的な発言ね」


「事実なんだもの、受け入れるしかないじゃない? 従ってモンドリリー家は私が()()わ! 将来は嫁ではなく、婿()を貰う予定よ!」


 おそらくこの国では前代未聞なのだろうが、アケビに限り、実現可能な気がする。


「……婿()()()、協力するわね!」


「ありがとう、ライリー! でも何で婿探し限定?」


「初の女性当主……素晴らしいお考えですっ! 私も影ながら応援します!」


 ユーセはアケビの未来予想図に、えらく感銘を受けていた。


「ユーセさんもありがとう、とても心強いわ! ……ネムちゃんはどう思う?」


 アケビはじっとネムを見つめる。

 私と同じく、彼女がお気に入りらしい。

 

 (エルフ耳のツンデレ娘なんて、ハマらずにはいられないわよね?)


「別にいいんじゃない? この国には、女性の地位向上が必要だし……後『ちゃん』付けはヤメてっ! 子供じゃないんだから!」


「あら、子供じゃないの?」


「違うわよっ!」


「アケビ、私の使用人をからかわないでちょうだい。彼女はそのへんの大人より、本当に賢いのよ」


「……」


 照れ隠しに髪を(いじ)るネム。

 これがまた、究極に可愛い。


 (もう少しだけ……弄りたいっっ!)


「しかもこの容姿でしょ? 先日の交流会でも、エデル殿下から花束を送られたのよね?」


 (そういえば預かった花束をネムに渡したけれど、イマイチ反応が薄かった様な……)


「凄いじゃないっ! それで!? ネムはどうなの?」


「いや、年下は興味ないし……そもそも()()()()から」


「まあそうよね。年下も何も、エデル殿下はまだ10才だものね」


 アケビが鼻で笑う。


「そうなの!? それはネムでもないかぁー」


 (しかしあの立ち振る舞いで、まだ10才とは……異世界の子供も結構大変なのね)


「……」


 暫し沈黙が流れる――。


 (何か聞き逃してはいけない事を、すっ飛ばしている気がする……)



「ところでネム? 『相手がいる』なんて、私はまだ報告を受けていませんよ? 確か少し前に、お別れをしたばかりでしたよね?」


()()()()よ。2週間になるわ」


「『報告をしなさい』と何時も言っているでしょう? 一応、貴女は未成年なのよ?」


「忘れていたわ。ごめんなさい、ユーセ」


 使用人同士の、何気ない雑談。


「……」


「……」


 ふと隣を見ると、アケビも口が開いたままだった。


「ネム? もしかして、()()がいるの?」


「かれし?」


「お付き合いをしている男の子……つまりは恋人よっ!」


「いるわよ? それがどうかしたの?」


「『それが』って……ちょっとまだ早いんじゃない? 相手はどんな人なの? まさかっ!? スッゴい年上とか?」


「2つ年上の貴族よ。異性との交際くらい、今は5才児でも普通よ。2人だって経験あるでしょ?」


「……(一度も)ないです」


「まともな記憶が残っておりません……」


 13才になったばかりの小娘に、アケビと私は残念な己の恋愛事情を報告した。


「そっ、それは……まあそういう人も、ごく稀に見かけるわね」


 何のフォローにもなっていない。

 占い師ですらお手上げなのだろう。


「……ていうか、私達の事なんて今はいいのっ! とにかく交際はまだ早すぎるわ! ねえ、貴方もそう思うでしょ!? ()()()!」


「それは……かと……す」


 部屋の片隅で、ひたすら地蔵と化していたクガイ。

 時間の経過と共に、何故か生気が失われている様に感じた。


「何て言ったの? 貴方は先程から意見を求めても曖昧な答えばかりで、今日は様子が変よ? 体調が悪いのかしら? とりあえず座りなさい」


「いえ。体調は良いのですが、できればその……」


「どうしたの? 遠慮なく何でも言って! 私達は『(女子会)仲間』なのですから」


 クガイは大きく息を吸い、ようやくまともに声を発する。


「私をこの部屋から出して下さいっっ!」


 それが初めて聞いた、彼の本音だった――。

次回、第37話~完璧な呪い~

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