第26話~つまり文化祭(前編その1)~
「お帰りなさいませ、お嬢様」
文化的交流会当日。
私はまだ午前中だというのに、もうかれこれ30回以上のお出迎えを繰り返している。
15分交代制にも関わらず『使用人サロン』は、予想を遥かに越えて大盛況だ。
メイド服に着替えたクラスメイト数名と執事服姿の私。呼び込みをしようと、教室(店)から廊下へ出た瞬間に客が殺到。
そして現在――待ち1時間の超繁盛店となっている。
午後からは学院にゲストを招き入れる予定なので『メイド服を着たお嬢様』目当ての男性陣も加わり、益々忙しくなるだろう。
(とはいえ、この客数は想定外だわ……他にも仕事があるのにっっ!)
「あの、ライリー様。黒髪も良くお似合いですわ、素敵ですっ!」
「ありがとう。そういう貴女様は、いつにも増してお美しいですよ」
「まあ!」
「キャァァー!」
(執事役も、だいぶ慣れてきたかな?)
黒髪のウイッグにしたのは、前々回の前世を睡眠(夢)をキッカケに思い出したからだ。
好きな人の好みに合わせ、セミロングの天然茶髪をわざわざ黒髪に染める程にまだ純粋だったあの頃が懐かしい……結果は、完膚なきまでにフラれたけど。
(ショートではなく、当時と同じ長さにしてもよかったかな……)
「……しかし意外だったな? ライリー君が『黒髪』に憧れていたとはね」
案内役の私にそう声を掛けるのは、休憩を終えた同僚の長髪(1つに束ねている)執事だ。
「アケビ様よっ!」
「はぁー、お美しい……」
(私に負けず劣らず、大人気ね)
「アケビ君こそ『銀髪』を選ぶとはね。しかも眼鏡まで用意をして……嫌がっていた割にしっかり役に撤するとは、予想もしなかったよ」
「なぁーに、売り上げの為さ。2通りある方が、より多くのお客様に楽しんで頂けるだろ?」
そうニヤリと笑う、男装侯爵令嬢。
間違いなく商人の顔だ……。
「さすがは経営者ね……だな?」
(おっと、油断をした)
「お褒めの言葉をどうも。では交代の時間だ。今のうちに休まれては? と言っても『掛け持ち』か……無理しないでね」
「ありがとう、行ってくる!」
名ばかりの休憩に入った執事。
私は着替える間もなく、速攻で第2の職場へ向かった――。
校舎を出て目の前に広がる庭園には、控えめなオータムカラーの草木達がイベントを彩っている。
オレンジ、赤、黄、紫……他の季節にはない幻想的な世界に、生徒も多く集まっていた。
(草木だけでここまでとは……なかなかやるな、アフラ会めっ!)
「……」
どんな男装やっかみ女子でも、結局はその美しさに、目を奪われてしまう。
午後にお披露目される『花のドレス』が恐ろしい……。
「でも負けないわっ!」
私は気を取り直して表から裏へ入ったが、そこから頭を抱えるまでにさほど時間は掛からなかった。
「……はっ? 嘘ですよね!?」
「いえ、本当です。まだ誰も来ていません……」
裏庭の元・家畜小屋では、黒いローブを着たキノコ(頭)達が下を向いている。
「……たかが『占い』の為に、こんなボロ小屋へわざわざ来る? 仕事がないのなら、もう帰っていいかしら?」
テーブルを挟んで部屋の奥に鎮座するのは、バイト占い師の『ネム・ストック』だ――。
次回、第27話~つまり文化祭(前編その2)~
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