第21話~キノコの願い~
「……本当に此処なの!?」
放課後、私は人目を避けて学校の裏庭へ来ていた――。
そこには今にも崩れそうな古小屋が建っていて、扉を見れば『魔法研究クラブ』と直に書かれて(彫られて)いる。
(でもどこか、懐かしい感じがするな……)
ノック後に扉を開けると『4つのキノコ』が、私を出迎えた。
天使の輪を形成させるキューティクルに、耳の下で切り揃えたボブヘアー。
小柄な体格も似通って、髪の色でしか見分けがつかない。
4つのキノコ……ではなくこの小屋に居る4人の生徒が、まほ研(校内での愛称)会員なのだろうか?
「魔法研究クラブへようこそ。ライリー・キュラス嬢」
「私の訪問を知っていたのですか?」
「ええ勿論! 私達の力を持ってすれば、簡単な事です」
「……」
(そー言えばアケビが、顧問に私の事を伝えたと言っていたな……)
「私は、まほ研クラブ長の『ミラ・ファルド』です。宜しく」
紫1号……。
「会員の『アルデ・バランデル』です」
「同じく『ラヴ・アトリナ』です」
「同じく『フランソワ・ロキオン』です」
青2、緑3、黄4号……モチーフは毒キノコとみた。
「あっ、はい。あのう……このクラブだけ城(校舎)の外に活動室があるのは何故です? 魔法だけに、何か伝統的な理由があるとか?」
「いえ。此処は去年までただの家畜小屋でした。以前の主な活動拠点である、校内地下の元・拷問部屋から、学院の心遣いでより広いこの場所へと移りました」
「はあ……」
(どう考えても、冷遇だよね?)
はめ殺しの窓から見える少し離れた場所には、新しい家畜小屋が建てられている。
おそらく私の捉え方で正解なのだろう。
しかしこのクラブは『前髪で目を隠さなくてはならない』ルールでもあるのか?
誰の表情も見えないが、とりあえず本題へ入る。
「クラブ長。この中に魔法使いの方は居ますか? 他言は絶対に致しませんので、教えてください!」
「……残念ながら、魔法使いの『血統』を持つ人間はこのクラブにはおりません」
「では、お知り合いではどうです? どうか紹介をしていただけませんか!?」
「知り合いでも居ません。現在『100人にも満たない』と言われている魔法使い達は、徹底的にその能力を隠して私達と同じ通常生活を送っています。国の誰に聞いても、見つからないと思いますよ?」
「そうですか……」
(やっぱ、迷信に頼るのは無理か……)
休み時間に複数の生徒へ尋ねてみたが、そもそも魔法の存在すら信じていない人間が大多数だった(アケビの考え方はかなりレア)。
世間一般では前世同様『儀式やまじない』に位置づけされているのだ。
妖精は、存在するのにっっ!
でも、魔法は使えないし……。
因みに妖精の能力は、他者の転生、物を浮かせる(軽量限定)、後は自身の伸縮くらいだ。
「ライリー嬢、魔法に興味が?」
「はい……魔法の力でも借りないと、解決困難な案件があるのです」
「うーん……何か大きな問題を抱えているようですね?」
(だから、そう言っている……)
「一般の人間でも『使用可能な魔法』の存在はご存知でしょうか?」
「えっ! そのような(便利な)魔法があるのですか!?」
希望が一気に溢れる。
「ええ、ありますよ。これまで学院にも秘密にしていましたが、私達は『一般魔法』が掲載された書物を所持しています……お貸し致しましょうか?」
「はいっっ! 是非!」
「クラブ長! 散々苦労をして手に入れた、門外不出の『魔法書』ですよ!? クラブ会員でもない生徒に貸すなんて!」
「お願いします、貸してくださいっっ! 料金もお支払いしますから!」
「お金はいりません。しかし1つだけ、お願いがあります」
やはりお嬢様だ――金では動かない。
「……分かりました。願いは何でしょう?」
「簡単な事です。我が魔法研究クラブの会員になってください」
「会員に!?」
「勿論、名前を貸して頂くだけでも構いません」
「それだけで宜しいのですか?」
「はい。クラブ長の私は、来年学院を卒業します。そうすると存続規定ギリギリだった会員数が、4名から3名に……解散せざるを得なくなってしまうのです」
「……分かりました。会員になります!」
(困っているみたいだし、名前を置くだけならいいわよね?)
私は『入会届け』にサインを書き、割と簡単に魔法書を受け取った――。
次回、第22話~本物~




