第20話~魔法陣~
『本日の成果』まとめ。
ブレイム(王子)に会えた。
ガラスの靴が手元に戻る。
『本日の失態』まとめ。
王子一行に下着姿を見せる。
その王子一行に対し、上がった足と突き出した尻まで惜しみなく披露。
「ガラスの靴を履いた、下着令嬢か……」
成果を失態が超大幅に上回っている。
「うわぁぁぁぁぁー! どう……どうしよう!? ヤプゥーッ!」
いつの間にか妖精に戻って気配を消していたヤプが、首を横に振る。
「どうにもならんだろ? 大人しく新たな『-』を受け入れるんだな」
「うぅぅ、冷たい……」
「あの、ライリー様。殿下も穏やかなご様子でしたし、きっと楽しい時間を過ごされたと思いますよ? さあ、外は冷えますから中へ入りましょう」
「……うん」
背中に添えられたユーセの手から、私の全身を癒しが巡る。
「甘いわ、ユーセ! この人はこれから先もまだまだやらかすわよ! 私が指導するっ!」
ヤプからユーセ、そしてネムが織り成す、飴と鞭――。
憐れんだ表情を見せるクガイに「大丈夫だ」と頷き、今回ばかりは素直に従った――。
「変更は無理っっ! 他に希望者なんていないし、私1人は絶対に嫌よ!」
翌日、午前中の学院――。
移動教室へ向かう廊下で、私は現在アケビからも怒りを買っている。
原因は王子による、あの台詞だ。
昨日の深夜にネムの長い指導(説教)に耐えた私は、ベッドに入るなり絶叫した。
すぐさま駆けつけたクガイとユーセに、一応尋ねる。
「交流会……って、殿下が来るの?」
「えっ? ええ……交流会ですから、殿方を含めた他校の生徒をゲストとして招待しています。ブレイム殿下も毎年参加をされていますよ? そうよね? クガイ」
「はい」
『そんな日に男装……すなわち自分下げをしてどーする!? フロレンヌ嬢(恋敵)だっているのにっっ!』
「とにかく認めないわよ! 分かった!?」
「そんなぁぁー!」
アケビへの説得は、あえなく失敗に終った。
(こうなったら、その都度着替えるしかないか……ん?)
肩を落として下を向いたこのタイミングで、ある奇妙な存在に気付く。
(チョーク? いや、ペンキかな?)
初見の記号や文字が中を埋める『円』――。
目を凝らさないと見えないほどに薄いそれは、床に複数描かれていた。
「アケビ……これは何?」
「何って? どれが?」
アケビには見えていないのだろうか?
「だから、これよっ! 白く書かれているじゃない!?」
「んんー? ああ、魔方陣の事? 何を今更……『元・魔法学院』なのだから、当たり前にあるわよ」
『魔法学院……だとぉぉぉー!?』
「そうだっけ……」
「確か『魔法使い』が正式に存在していた、503年も前の話よね。魔法が強ければ強い程、消えにくいらしいわよ。それよりまだ寝ボケているの? まあ、今は貴女だけではないけれど。でもテストが……」
(魔法、過去……)
「ねえ……アケビは今でも、魔法使いは存在すると思う?」
「私は噂通り『いる』と思うわ。戦争へ駆り出されたり迫害を受けない為に、きっと力を隠しているのよ」
(もし魔法使いを味方につければ、王子争奪戦が有利に働くのでは!? 探る価値はあるわね……)
「魔法について、もう少し詳しく教えてくれない? 放課後でいいから!」
「はぁ!? 私は準備で忙しいのっ! ライリー、貴女もよ? それに魔法なんて性別関係なく教育過程に組み込まれていないから、私も詳細は分からないし……そうだわ! 放課後『魔法研究クラブ』にでも行ってみたらどう? 但し手短にね」
「クラブ!? この学校にクラブがあるの!?」
自主性や積極性が求められる、クラブ活動があるとは考えてもいなかった。
「道楽クラブなんて、山程あるでしょう。どうしたの? ……まさか、また体調が!?」
「ううん、大丈夫! 早速手短に行ってみるわ。ありがとう、アケビ!」
「ええ……本当に大丈夫?」
何だか兆しが見えてきたわ!
ひょっとしたら、魔法が手に入るかも!?
こうして私は、新たな『王子攻略法』の糸口を見つけた。
次回、第21話~キノコの願い~




