第16話~家庭内格差(アケビ・モンドリリーの野心その2)~
(スピーチの成功……つまり賛同を得る為にはまず、目の前に座るクラスメイト達から、意識改革が必要ね)
この国の女性は、男性や役職に準ずる者の意見に流される傾向にあった。
大昔より根づいた風潮なのでそれが常識であり、ごく自然だ。
しかしアケビは、その根本を学院から覆したいと考えている。
『男女関係なく議論を重ねる事こそが、国の繁栄に繋がる』と確信していた彼女は、皆が学生のうちに悪き考え方を断ち切ろうと目論んでいた。
とは言っても、現実は厳しい。
初文化的交流会の年(15才までは謝恩会)――。
その話し合いでアケビは、困難に直面する。
結局多勢には敵わず、出し物や執行計画を委員長の彼女が1人で決める事になってしまったのだ。
そんな逆境に打ちのめされた放課後……。
午後のティータイム(3時)を過ぎても、教室に居残っていた疲労困憊の彼女に、1人のクラスメイトが歩み寄る。
それが『ライリー・キュラス嬢』だった――。
『子息であれば、お前を差し出すのにな……』
これはアケビの父親が酒をキッカケに発する、お決まりの台詞。
国内随一といわれる軍事力を誇るキュラス家――以前の戦争でも彼等の功績により、モスカトア王国は勝利を納めた。
本来であれば『自分の息子とライリー嬢の婚姻を』と考えるところだが相手が格下の伯爵家なので、侯爵の中でも1番の名門・モンドリリー家としては、息子を出すわけにはいかない。
(次の戦争で勝利をすれば、キュラス家は晴れて侯爵へ昇格が決まる……)
そう今は指を咥え、モンドリリー家はおあずけをしている状態だ。
『キュラス家の令嬢とは、懇意にしておきなさい』
この台詞も、今思うと理由は明白――。
そんな風に父や兄達から入学時より言われ続けていたが癪なので、特に中等部(13才~)からはあえてアケビはライリーを避けていた。
「話をしても宜しいかしら?」
「あの、今は少し忙しくて……後日でも大丈夫でしょうか?」
忙がしいのは、本当だった。
今週中に『催事計画書』を提出しなければならないからだ。
「それ(出し物)をおひとりで決めるつもり? クラスの一員である私にも、提案を述べる権利があると思いますの」
「え……?」
「ですから、2人で決めましょう。協議や会議は、貴女が興味を持つ『国政』に必要不可欠です。1人で行えるほど、容易ではありません。それに知恵を出し合えば名案も多く生まれます」
「どっ、どうしてそれを!?」
「貴女が休み時間に読んでいた書物、私も読みましたから」
『政治経済学なんて、自分以外に興味を示す生徒(女性)など存在しない』と思い込んでいたアケビは、暫く呆気にとられた。
それから少し時間を置いて開始された、互いにとって初めての『協議=意見交換』――。
やはりそう上手くはいかない。
アケビとライリーは協議……ではなく意見の衝突を繰り返し、その日は学院を後にした。
しかし次の日の放課後も、どちらともなくまた教室に居残る2名。
非常に勉強熱心な彼女達は、各自協議方法の予習を済ませてから2回目に挑んだので、今度はしっかり意見交換ができた。
更にその次の日は学院の許可を得て、ライリーの使用人であるユーセも教室へ入る。
疲れた時や集中したい時に、最適なお茶を用意してもらう為だ。
アケビは『同級生による心からの気遣い』と『お茶の効果』に、とても感動した。
そして提出期限、当日。
後に唯一無二、創設以来と絶賛される完璧な計画書を、2人は完成させた――。
◇◇
「話し合う事がそんなに『苦』なのかしら? 皆さん、クラスの一員でしょう? 委員長1人に任せていないで、協力をするべきだと思います、わ!」
「……」
張り詰める空気――。
(とうとう、言ってしまった……)
余計な事に、首を突っ込んでいる場合ではないのに!
学校行事なんて、王子争奪戦とは何の関係もないのに!
私はアケビ1人へ全てを押しつけようとする『不公平』や『無責任』の流れに、どうしても我慢ができなかったのだ。
(何やってんのよ、私……)
「ライリー……」
私を見て、固まる委員長。
ホームルームは、もれなく延長戦へ入った――。
次回、第17話~想定外の反応~




