第15話~家庭内格差(アケビ・モンドリリーの野心その1)~
「美しいオレンジの髪に、可愛い笑顔……お前は我が家の『宝物』だよ、アケビ」
モンドリリー侯爵家の長女『アケビ・モンドリリー』は、幼い頃から何不自由もなく、両親と3人の兄から深い愛情を受けて育った。
蝶だの花だのと持ち上げられ、お姫様扱いの日々。
うんと幼い頃は、それで充分満足だった。
しかし、アケビが10才になったばかりのある晩。
父親が屋敷へ持ち帰った仕事により、彼女の世界が一変。
『ステキだわ……』
普段の優しい父とは違い、仕事へ取り組むその姿勢は、どんな高価な宝石よりもキラキラと輝いて見えた。
羨望の眼差しは父親だけに留まらず、その仕事内容にも向けられる。
それは『国政の世界』だ。
日を追うごとにアケビは『国の運営に携わる仕事をしたい!』と、強く考える様になった。
『大好きな父親の助けに……』そんな思いも勿論ある。
(先ずは誰よりも、賢くないと!)
まだ幼いアケビはとりあえず、学校の勉強に励むことにした。
元々成績は悪くない方だが、1番を目指すのは非常に困難を極めた。
成績上位を陣取るのが学者や教師を親族に持つ、遺伝子レベルで超優秀な生徒達だからだ。
学力テストでは、たった1、2問の間違いで順位が簡単に入れ替わる。
それでも夢を叶えるべく平日は6時間、休日は半日以上、机にかじりつくこと2年……アケビはついに学年トップとなった。
「そうか……頑張ったな」
1等賞に対する、家族の反応はいまいちだった。
一方の兄達は、成績が少しでも落ちると烈火の如く叱られている。
「先代の勲位を汚すつもりか!? そんな体たらくでは、国の繁栄や防衛を任せられない! 国政を軽く思うな!」と……。
(兄達と私とでは『求められている未来』が違う?)
違和感を探るべく、アケビは兄の部屋で(男子)学院の教材を覗き見た。
「ナニ……コレ?」
脳が焼ける程の衝撃――。
彼等の『学び』は、アケビのこれまで(教養)とは全てにおいて異なる。
法律や国交の手引き、商売の仕組みに、戦争対応まで……そこには国を担う人材を育てる為の、ノウハウが詰まっていた。
『私達女性は、国の運営に必要ないって事ね……』
『ショック』と同時に、激しく好奇心を掻き立てられた、侯爵令嬢。
『もっと国の仕組みを……政治を知りたいっっ!』
翌日からのアケビは、これまで女性は誰も立ち入らなかった屋敷の書庫に籠り、欲求のままに国政や法律等に関わる本を読み漁った。
「アケビはどうした!? 王家主催の舞踏会に姿を見せないとは……何をしている!?」
高価な宝石や流行のドレス、そして舞踏会にも一切興味を示さなくなった娘に対し、ついに父親が激怒する。
「お前は美しく着飾ってさえいればいい! 過度な知識は必要ないんだ。嫁ぎ先に、生意気だと思われるだろ!?」
自分の価値は『結婚の道具』でしかない。
そう現実を突きつけられた瞬間、アケビの心が決まった。
それから数年――。
反抗期と猛勉強は、変わらずに続いている。
テーマは『性別格差の払拭』――。
政治家への第一歩。
彼女は総委員長(学院代表)となり、卒業式のスピーチで国政・経済への女性参加を訴えるつもりだ――。
次回、第16話~家庭内格差(アケビ・モンドリリーの野心その2)




