表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

絵について雑記。フィギュアの“デッサン人形”の関節可動域について。百聞は一見にしかず、いや、何事もやってみなきゃわからないことも多いのだなと実感した話

作者: 堀田真裏

絵がうまくなりたい。

そんな気持ちで、生まれてはじめて“デッサン人形”という形でフィギュアを購入した。


「ボディちゃん(くん)」と呼ばれる、デッサン人形のなかではけっこう高価なものである。昨年の冬に再販のものを予約してやっと届いた!


思ったよりずっと小さくて壊しそうで怖いというのがはじめの感想。まだ動かすだけでビクビクしていて絵に使うどころじゃない。


関節可動域の再現性の高さを売りにしたもので、確かに動かせる関節はそれなりに多いと思う。多いし、満足すべきだろうと思う。思う、のだが……


やはり、描きたいものに合わせるには、微調整は自分でやるしかないのだなと感じた。


どういうことか。具体的な話をする前に――


実は数ヵ月前から殺陣(たて)をかじりはじめた。すべては絵を描く上で、やはり基本的な動作(あくまでも日本の剣術に限定されてしまうが)の型をきちんと学んで反映したいという想いからだった。


以下は(初心者マークだが)その知識と経験をもとにした話である。フィギュアと関節可動域の問題に関して。


殺陣入門教室で学びながら注意をされたからこそ気付いたことのひとつに、“構えたとき内股にならないように気を付ける”というのがある。


たとえば剣を鞘から抜くとき(いわゆる抜刀のシーン)で、左足を肩幅くらい下げるのだが、そういったヒネリが加わると、腰骨も足の動きに連動して斜めを向くのだが……


これ実は、股関節・膝関節の向きを、骨盤の向きに対して真っ直ぐにしていると、内股にするつもりがなくても、自然と“内股(うちまた)”になるのだ(構造的に)。


決して私が、女々しくてナヨナヨしているから内股構えになったわけではない(必死に強がってみた)!


まぁ、それはともかく……これは構えとしては、見た目も、なよなよして弱々しく見えて、カッコ悪いのは事実だ。


もちろん、女性キャラを(可憐に、守ってあげたい雰囲気に)女性っぽさを強調して描く上ではこれはテクニックにはなる。女性なら、カッコ悪いというほどにもならないだろう(というとジェンダーの問題に引っ掛かり、不快に思うかたも出てしまうかもしれない……が、絵的なものとして、と受けとめていただけると幸いです)


が、……男性キャラだと特に微妙な雰囲気になる。カッコ悪い、なんか弱そうに見えるし――というのはもちろん問題だが、それ以上に問題なのは、「構えとしては致命的にNGな点がある」ことが、絵としてネックだと思う。


殺陣初心者マークの私が書くのは気恥ずかしいことだが、これは講師に指摘されたから間違いなく事実として書かせていただくが「内股の構え」は「横方向から押される向きに弱く、崩されやすい姿勢」となるのだ。


だからこそ、「キャラの個性うんぬん」の問題ではなく、たとえ可憐な女性キャラであろうと、「訓練された剣士(強キャラ)」であるならば、構えが内股姿勢になるというのは、設定として 少なくとも武術をかじったことがある人の目線でみると「変」ということになる。


ただでさえ、体格や力押しでは不利になりやすい女性戦士がある向きから押されたら倒されやすい構えなんかするわけがないのだから(これは剣に限らないと思われます……)


それは可愛さ優先という作画上の都合として譲ったとしても、である。

これが男性キャラとなるとまして「作画上の都合」としても成立せず、おかしいことになってしまう。


本題になるが、「デッサン人形」の限界を感じたのがここである。


それはデッサン人形(ボディちゃん、ボディくん)で同じ動きをさせようとすると、構えさせると関節可動域の都合上「内股になってしまう」ことだ。


膝までは角度を調整すればできる。が、足首の関節可動域の問題で、そうすると足首(足関節)から下がどうにも変な向きを向いてしまうのだ。


人間は、意識すれば矯正できる。だがそれは、人間の関節がデッサン人形よりも微妙な部分で柔軟に動くからだ。


デッサン人形としてはなかなか高めで、関節可動域に定評があるボディちゃんボディくんでも、これをちゃんと再現するのは、私が試した限りでは無理だった。


3Dでもなんでもそうだが、やはり人間の自然な動きを完全に再現するのは困難だ。最後は鏡の前などでやってみて、確認することは必須だし、


自分でやってみて調整しなければ、やはり表現として本物には近づけないのだなと思う。


見ているだけではわからない。

もちろん、ものすごく観察力に長けた、本格的にデッサンを学んだ人とか、めちゃくちゃ専門に勉強した人ならわかるのかもしれないが、


少なくとも私にはプロの殺陣士らの演技の動画をどれだけ見ても、自分で教わるまでは気付けなかっただろうことを、

体験してみたなかで学びとることができた。



ポーズ集でも動画でも、(もちろんそれを見るしか手段がないことも多いが)、実際学んでみると「えっそんな細かいところ大事だったんだ、知らなかった!」と気付くこともある。


抜刀の構えで、抜く手の向き次第では、抜刀してすぐに斬りかかれないなど、言われてみれば初歩的なことなのに、少なくとも私は殺陣(たて)教室に足を運ぶまで知らなかった。


鞘におさめるときの刃の向きが上なので、右手は下から掬うような向きで というようなことだ。

言われてみれば、剣で戦う人間にとって、どっちの向きに刃が来ているか。それは確かにきわめて重要だ。


もちろん、リアリティーを追及することだけが全てではないだろう。それでも、カッコいい絵を描きたいなら、やはり、戦いの基本を自分自身が知っているかどうかは関わってくるような気がするのだ。


同じようにポーズ集を眺めていても、具体的にどこに気を付ける必要があるのかを知っているかどうかで応用できる幅は変わってくると思う。


デッサン人形についても、なかなかいいと思っている。けれども、その通り描けば間違いがないはずだ!とは限らない。


やはり、最終的には自分の体でやってみる作業も大事かもしれない。


きっとこの話は、特にアクションを描いてみたいかたには有益なこともあるかもしれないと思い、お知らせすることにした。



抜刀の構えのイラストは、かなり多いと思います。描きやすいし刀だ、と見せることができるためだと思います……。


剣の種類などによっても差はあると思います。流派などによる微妙なちがいも含めて。


それでも、構えの基本であったり、心構えであったり――これも教室の受け売りなのですが――に関しては、大筋は共通することが多いのではないかなと思うのです。


たとえば、抜刀する際は、そのまま斬りかかれる向きであることが前提。刀を鞘に納める際も、目線を下げたらだめ(いつ襲われるか警戒を怠らない)、とか。手もとを見ずに納める(いつでも応戦できる状況は保つことが前提)のですが、きちんと刀を鞘に納めるには、やはりちゃんとしたやり方があるんですよね。


正直、殺陣ってはじめはなめていた面があったんですよ。お芝居でしょう、ショーでしょう、というような。剣道よりは楽で――と、どこかで亜流のような気持ちもありました。 もちろん、ケンカする上で役に立つかは別でしょうが、少なくともイラストを描いたり、いつか小説のなかで活かす上で(キャラクターを脳内で動かす際に)は、あくまでも剣での戦闘を演出するものであるがゆえの細部へのこだわりを学ぶことができた気がします。


内股になった構えは横向きに押されると倒されやすいのでダメ、というのも やはりズシンと来ましたね。デッサン人形に付属した解説書にも「女の子を描くときは膝、肘を内向きにすると、守ってあげたくなるような可愛さが醸し出されます」とおすすめ記載されるくらい、


女性キャラを描く上では定番のやり方のようなのです。実際に、思い返すと、そういう絵柄は多い気がします……。


もちろん、イラストは受け手に「カワイイ!」と訴える力が大事だし、リアリティーを採るほうが正解とは限らない気がします。

これは戦う女の子の構えじゃないだろう、なんて、

気付かない人のほうが多いでしょうから。


この最終判断は、絵でも小説でも作者の流儀、どんな作品をどんなキャラを描きたいか次第かなと思います。


できるだけ多くの人に人気が出ることを願うのか。わかる人に分かってもらえるこだわり抜いたものを描きたいのか。もちろん、両方を採れるならそれがいちばんでしょうが、難しいこともあると思うんですよね。


言い出したらきりがないです。それこそ、剣どころか包丁ですら、本格的に何時間も握り続けて酷使をしていたら握力はもちろんつきますが手の形も変わります。

助産師さんなどは赤ちゃんを引き出す利き手だけ別人みたいにごつくなったりするくらい、

手の大きさが左右で変わる(手は手のひらの部分もいろんな骨が複合した形をしているので)し、

指は握力がついて 過重労働に耐えられるようになれば太くなります。筋肉も靭帯、腱鞘も太くなるからです。


なので、白魚みたいな指をした女性剣士 いえ、戦闘員は 現実には存在しないでしょう。小さな手でムリをするほど(脂肪や浮腫みはなくても)太くなります。


私はそういう部分も含めて、自分自身が納得できるほうが大事で、ある程度再現したくなっちゃうタイプですが(リアル追及したいほうです)

そういう、必ずしもカワイイとか美しいとは限らない方向でのリアル追及について、って現実的に需要があるかは怪しいですよね。


なので、より多くの人に受けることを第一に狙うなら、やり方は変わることもあるだろうなとも思うんです。


それでも、女の子の手を描くときはこういうものだ、これでいいんだと画一的になるよりは、自分が何を目指したいのか明らかにしておくことには意味があるだろうし、本来はこうなるはずだ、と知っているかどうかで表現の幅が広がる面はあるんじゃないかなという気はします。


あるいは、女性キャラを複数描くときは、そこでキャラクターのシルエットの描きわけもできるような気もします。たとえば身体能力が高い武闘派の女性キャラと、同じ戦うキャラでも後方からの魔法攻撃がメインの女性キャラで描きわけてもいいかもしれませんし。


実戦を想定した動作、所作に関する知識、それはマニアックなことかもしれませんが、知っておいて損はないかなと思うのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 絵を描いてた頃は、シームレスのドール素体を使ってました。 見た目全裸の女のコだから、人前にはとても出せない…… そこはもう、リアルとリアリティは別物と割り切るしかないかなぁ、というのが自分…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ