7ランチを終えて
このあいだ、桃乃とランチに行った。
俺が誘ったのを桃乃が受け入れてくれたのだ。
すごく、すごく、嬉しかった。
ランチが決まってから、俺は気軽で、でも少し洒落た喫茶店をSNSで調べまくった。大学から近場の店を電話予約した。とても緊張したけど、頑張ったことに喜んだ。
もちろん、当日もめちゃくちゃ楽しかった。
出てきた料理はおいしかったし、桃乃はかわいかった。白いニットに黄色のロングスカートを履いていて、今度こそスカートなんだなと思った。おいしそうに定番のランチセットを食べていたし、話も途切れることなく続いた。
でも、それだけだった。
なんにもなかった。
いや、ただそれだけが目的だったのだけれど、なんだか、「無」だった。
桃乃の俺への接し方は完璧だった。
同級生の異性とご飯を食べる時に間違わない距離感、間違わない話題、間違わない服装。それでも、彼女の個性が細やかに感じられた。
「また、一緒にご飯食べない?」
ランチを終えて、別れるとき言った。もう本当にどきどきしながら。
桃乃は言った。
「え~、どうしよっかな。私もそんなに暇じゃないんやお笑。コロナもまた広がるかもなんやし。。また、時間があればね、行こっか。」
これは妥当な返事をもらったのだろうか。
これ以上触れてくれるなというような圧を感じた。
私、ランチに来たよ?誘われたから来たんだよ?という満足感だけ与えられた。
苦しい。
苦しい。
苦しい。
彼女は何を考えているのだろう。
彼女に恋をしてしまったのに。
彼女にこれ以上踏み込めない。
なんで?
どうして俺を拒絶するんだろう。
どうして強い瞳で俺を刺すんだろう。
でも、君は、笑うんだ。
何かを諦めるように、喜ぶんだ。
まったく、ほんの少しの付き合いであるのに、彼女が見え隠れするんだ。
全て見てみたいと思うんだ。
でも、彼女の圧を破れるほど、俺は果敢でなくて。
ランチが終わって、4日経っても何も出来ない。何もしていない。
頭の中をぐるぐると回るんだ。
でも答えは回らないんだ。
これは、恋の枷ですか?
これは、彼女の罠ですか?