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【短編】その他の短編

自殺するなら売ってくれ

作者: 烏川 ハル

   

 10年ひと昔、という言葉がある。

 だが俺たちにしてみれば、10年も20年も、ほんの一瞬に過ぎない。インターネットが普及し始めたのだって、ついこの間の出来事のように感じてしまう。

 そんな俺でも、実は、個人サイトを運営しているのだ。


「おっ、来た!」

 また今日も、新規の書き込みがあった。自分で開設したサイトが賑わっているのを見ると、それだけで顔がニヤけてしまう。

 借金で首が回らないとか、病気で苦しいとか、いじめられて辛いとか、失恋のショックが激しいとか。様々な理由で「もう死んでしまいたい」という人々が、集まってきているのだ。

 いわゆる自殺系サイトの一つ。だから、サイトで知り合った自殺志願者たちは、集団自殺を試みたりするのが一般的なのだろうが……。

 俺のところが少し変わっているのは、管理人である俺からの、このメッセージの存在だった。


『自殺するなら、その前に。その魂、俺に売ってくれ』


 俺から金を受け取った上で、自殺する者たち。

 連中が何を考えているのか、正直、俺にもよくわからない。どうせ死ぬのだから、今さら金なんてあっても仕方ないだろうに。

 もちろん、「借金で首が回らない」という奴らを救えるほどの大金ではなかった。しょせん端金はしたがねであり、例えば「最後にパーっと遊ぼう」という使い方をするにしても、ちょっと足りないかもしれない。

 まあ、それでも。

 俺と取り引きする連中が――思い切って『魂』を売ってくれる者たちが――後を絶たないということは、死出の旅の支度金には十分なのだろう。


 このように。

 俺も頑張って、時代に適応しているつもりだ。

 かつての俺たちは、魂を刈り取る存在などと言われていたが……。

 21世紀の現代、死神はネットで魂を買い取る存在となったのさ。




(「自殺するなら売ってくれ」完)

   

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