37話 行方不明の魔法少女
ここは病院? まるでいろいろな薬品が混ざったような匂いがする……。
見上げる天井も壁もすべて真っ白な部屋の中で、私とルリカは隣合ったベッドの上にいた。
「ルリカ、大丈夫?」
「う、うん、リリカ、ここはどこ?」
私たちは双子の姉妹だ。二人とも適性があるとかで魔法少女育成学校に通わされていた。
私たちはまだ正式には魔法少女にはなっていないのだけど、歴代の魔法少女と比べてもかなり高レベルの魔力を保有していると言われていた。
確か、魔力をもっと増加させるという薬を飲まされたところまでは覚えている。
起きたら知らない部屋で寝ていた。
ひとまず安心できたのは隣にルリカがいたことだ。生まれてからずっと一緒に過ごしてきた双子だけに、精神的な安心感がある。
体が少しダルいのは薬の副作用だろうか? 他は……大丈夫な気がする。魔力がかなり増えているみたいだけど、特に問題はなさそう。
「ルリカ、体は大丈夫? 動く?」
「う、うん、あ、あれっ、下半身に力が入らない……かも」
「そ、そう……。やっぱり、危ない薬だったのかもしれない。次からはもう断ろう。回復魔法を扱える人か回復ポーションをもらってくる」
コクっとうなずいたルリカを見て、私は部屋の扉に手をかけた。
「どうしたのリリカ?」
「それが開かないの。カギが閉まってるみたい」
「えっ、閉じ込められてるの……?」
すると、突然スピーカーから声が聞こえてくる。まるで私たちが起きたのを見ていたかのように。
『あー、目覚めたようですね。検査の結果、君たちの身体から異常を発見しました。しばらくはこちらの監視下の元、投薬治療を進めさせてもらいますね』
「異常? どういうことですか?」
声に聞き覚えはない。おそらく学校の人ではない。
『詳しいことは説明できないのですが、一ヶ月程度の治療で問題なく完治するはずです。その間、この部屋から出ることはできませんが、欲しいものがあれば何でも言ってください。できる限り応えましょう』
監視されている。向こうからはこちらが見えているということに、何とも言えない気持ち悪さを感じる。
何を言ってもこの部屋からは出られないのだろう。
さっきから魔力を使用しようと試みているが集めようとした魔力が霧散してしまう。この部屋に対魔力結界が張られている。
今は言うことを聞くしかない。
「どのような異常なのでしょうか? 閉じ込めるということは感染を伴うものなのということでしょうか?」
『申し訳ないのですが、それも話すことはできません。しかしながら、早期発見できたためすぐに回復すると聞いています。ちゃんと薬を飲んで栄養をとってくださいね』
「……わかりました」
※※※
観察三日目
まだ不信感を抱いているようで、薬は飲んだふりをしている。しかしながら、食事と飲み物に混ぜこませている薬の効果で精神状態はかなり不安定になってきているようだ。
観察七日目
ふたり目が虚ろになっている。昨日から睡眠はほとんどとれていない。食事の量もかなり減ってきているが、ルリカが薬を飲むようになった。リリカが止める様子もない。時間の問題だろう。
観察十二日目
二人ともベッドから起き上がることができない。魔力を急激に増やしすぎたせいだろう。容態が安定するまでもう少し薬の量は減らすべきか。
観察十八日目
魔力量が上がってきているようだ。魔力だけをみればAランク魔法少女と変わらない。実験は成功している。
観察二十二日目
ルリカの様子がおかしい。当初から薬の相性が悪かったが、ここにきて急激に悪化している。ここ数日はベッドから起き上がれずに食事もとれていない。もう切り捨てるべきか。
観察二十八日目
ルリカが死んだ。遺体を回収しようと部屋に入るものの、リリカがなかなか遺体を離そうとしなかった。思考能力はかなり低下しているにも拘わらず驚かされる。
観察三十五日目
リリカの魔力量が歴代記録を更新した。これは魔女月野を超えるものだ。ようやくSランク魔法少女になった。御剣の能力を考えれば、更に上を目指さなければならない。ここから更に倍に、SSランク以上にしなければならない。




