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33話 ドラゴンの誤算

私は、炎の精霊の住処にエビルゲートが開いたと聞き、精霊の住まう火山地帯へ呼ばれていた。


「なるほど、ゲートに連れていかれた仲間が戻ってこないというのかい?」


エビルゲートは、邪悪なる門を意味する言葉とされており、ゲートの先は異界に繋がる。そこでは闇の世界の住人が棲息する場所らしいと聞かされた記憶がある。そう、確か曾祖父さんが族長だった親父殿に聞いたとか言っていたような……あれっ、どうだったっけ。


まぁいいか。


エビルゲートは、一度開くと数百年は消えることはない。仲間を助けたいという気持ちはわからないこともないが、数百年程度なら我慢してもいいのではないかと思っている。


これは、ドラゴン種や精霊にとって数百年がたいして長い時間ではないからだ。


「なに? エビルゲートにとらわれた者がとても苦しそうにしていたと。あれは呪いか何かではないだろうかだって」


この地に住むサラマンダーとイフリートはとても怯えていた。

どうやら、一度エビルゲートが開くと近くにいた精霊が一定数吸い込まれるまでゲートは閉じないらしく、離れて様子を見ていた者もゲートから多量の魔力が溢れ出して何体も連れていかれたのだという。


住む場所を変えればいいのではないかとは思うが、精霊はそう簡単に住む場所を移動することはできない。その土地に生まれ、その土地を守るために生きるのが精霊という種族なのだ。



「しょうがないな。それなら私が様子を見にいってあげよう。エビルゲートの先に行った精霊たちも見つけられたなら連れ戻してやろうじゃないか」


精霊たちから大きな歓声があがる。とっても期待されているのがわかる。そんな大層な思惑があるわけでもない。なんとなく、ただなんとなく興味を持ってしまっただけだ。


単純に暇を持て余していたからというのもあるが、エビルゲートの先にある世界に興味があったのも確かだ。

あとは、何だろう。一応は炎に連なる一族の長として困っている者を助けてあげようという、ちょっとした軽い気持ちだろうね。


そして、ちょうどエビルゲートから眩い光が輝き始める。どうやら門が開く兆候らしい。精霊たちがあわてて距離をとりはじめる。


「えっ? どうやって、あの小さな門に入るのかって。そうか、勝手に連れていってもらえる訳ではないのか……。ならば、私の身体をイフリートの姿にして分割しよう」


すぐに自分の体を十体のイフリートに分裂させてエビルゲートへと向かって歩いて行く。


この門の先にあるのはどんな世界なのか。


そう、これはちょっとした、わくわくドキドキな冒険のつもりだったのだ。


まさか二度と戻れなくなるなんて知らなかったのだ。



※※※



人間という種族は、話し合いによって問題を解決していく生き物だと聞いていた。これも確か曾祖父さんが族長だった親父殿に聞いた話だったか……。


少なくとも、問答無用で攻撃してくるような蛮族ではないし、かつては仲間として共に行動した歴史もあったとかなかったとか……。


しかしながら、これは一体なんなのだろう。



問答無用で苦手属性の魔法攻撃を放たれ、驚いていた隙にとんでもない規模の召喚魔法を完成させていた。


『えっ? な、なに、その召喚魔法!?』


人間の男はコキュートスと叫んでいた。


逃げられないように四方を一瞬で囲われると、第一の攻撃が襲いかかってきた。第一のと言ったのにはもちろん、続きがあったからなのだけど、現在、おそらく最後と思われる第四の攻撃が剥がれた鱗に突き刺さるように何度も何度も鋭い攻撃が繰り返し撃ち出されていた。


『信じられない……。話し合いをしようと待っていたら、あっという間に体力が半分削られてしまった。こ、このままだと殺される……』


ようやく召喚魔法を耐えきったと思い、今度こそ、こちらからは話しかけようと一歩踏み出したところを鋭い円盤状の魔法が口元の髭をスパンっと斬り裂きながら横切って行った。


「ちっ、外してしまったわ」


と、とても鋭い魔法だ……。とんでもない魔力が込められていた。多分、このコキュートスという召喚魔法を繰り出している間に練りに練られていた魔法だったのだろう。


「冥府より召喚せし嘆きの川よ、地獄より喚びし悪魔達よ、この者に永遠の……」

『は、はいっ! そこの君、ストップ! 言葉わかる? 私に敵対の意思はありませんよー!』



「変ね、藍之助。あのドラゴン喋ってるように聞こえるんだけど……」


「そうですね、僕にもあのドラゴンが喋っているように聞こえました。こちらの油断を誘おうとしているのでしょうか?」


「うーん、時間稼ぎにしては特に変な動きをしている感じでもないのよね」


『あー、ああ、助かった。殺されるかと思いました。言葉が通じるようで本当によかった』


悠然と佇んでいたファイア・ドレイクが急にわちゃわちゃしだした。鱗が剥がれ、かなり血を流している姿をみるに、コキュートスはそれなりに効いていたのだろう。朱里姉さんと二人ならギリギリ倒せそうな感じがしなくもない。


「門から出てきた者とは話が通じなかったので、問答無用で攻撃をしてしまった。その、申し訳ない」

「藍之助、まだ敵の可能性はあるのだから謝る必要はないわ。まずは、ドラゴンさんのお話を聞きましょうか」


『あれっ、話が通じなかったのですか? 炎の精霊たちは優しい性格の者が多いのですけど』

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