17話 門の管理
翌朝、目が覚めると何故か星那の部屋にいた。というか、隣では星那がスヤスヤと寝ている。小さい頃に僕の部屋に星那が来て、一緒に寝ると言い出して聞かなかった時はあったが、それ以来、久し振りかもしれないな。
あの頃と比べると星那も大人になったものだ。綺麗にカールした長いまつ毛、プクりと膨らんだ小さな唇。寝間着からは白い肌の肩が見え隠れしている。
「星那、もう朝だぞ」
「はい、起きております。お兄さまがまだ寝ておりましたので、起こさないように静かにしておりました」
「そうか」
「体調はもう大丈夫なのですか?」
「ああ、一晩寝て魔力もすっかり回復している。朱里姉さんも飛行機をいじりたいだろうから早く代わってあげないとな。それから、星那、エリーゼにまたこれを飲ませてやってくれ。その後、身体に問題がないようなら門へ連れてきてもらえるか」
「かしこまりました。すぐに朝食の用意をいたします」
夜には目が覚めると思っていたのだが、思いの外、魔力の消費が大きかったらしい。全く、昨日一日で面倒なことに巻き込まれたものだ。
顔を洗って目を覚ますと、魔力の具合も確認する。八割、いや九割がた回復している。これならば、十分だろう。
朝食を兼ねながら、父さんと打ち合わせをしなければならない。少なくともエリーゼが戦えるようになるまでは、僕が門を管理しなければならないだろうから。
「起きたか、藍之助」
「おはようございます、父上。昨日はすみませんでした。魔導飛行機の移動に、かなり魔力を持っていかれてしまったようです」
「聞いている。朱里が喜びそうな話だな」
とりあえず、昨日のドロップアイテムの話をしながら、今後の方針について話を進めることにした。
「炎の欠片はエリーゼさんに優先的に回そう。回復ポーションは母さんのいる診療所で管理すればいいか」
「そうですね。力の秘薬についても、エリーゼの強化に優先的に回しましょう。私たちにはそこまで必要とは思えません」
「うむ、それで残ったアイテムについてだが、炎柱石については朱里に任せてみようと思っている。これは燃料としての使い道になるはずだからな」
「そうですね。朱里姉さんなら細かく調べてくれると思います」
「残る一つ、炎魂については鑑定出来ぬ代物となれば保管しておくしかあるまい。何かわかればいいのだが、私も文献を開いて調べてみよう」
「よろしくお願いします」
「それから、例の魔法少女についてだが、月野女史より提案をもらっている。本土のモンスター駆除には、魔法少女の力はまだまだ必要らしく、引渡しの交換条件として本土で手に入れているドロップアイテム、それから異界の門の管理権限をこちらに渡すと言ってきている」
「それは大盤振る舞いですね……」
「こちらの要望を大幅に呑んでもらった。魔力の種はあった方が藍之助も助かるだろう。まあ、政府にとってそれだけ魔法少女が大事な戦力ということなのだろうが。今回の件で、大臣に貸しを作れたらしく、政府もそれで致し方なしとしているようだ」
魔力の種を煎じて飲めば魔力ポーションに変わる。回復具合にもよるが、僕の弱点は少なからず解消されることになる。
「なんとも、随分と勝手な物言いですね」
「月野女史からは出来れば魔法少女を派遣させて、門の管理を手伝わせてもらいたいと言ってきてる。やはりドロップアイテムは気になるのだろう。Aランクの魔法少女を派遣すると言っていたが、エリーゼさんで十分だと伝えておいた」
Aランクの魔法少女がどれ程の者なのかはわからないが、Bランク魔法少女が信号機トリオなので、たいしたことはないのだろう。
他の魔法少女がどういう人物なのかはわからないが、ランクが高ければそれなりに傲慢な性格である可能性も高い。今後付き合っていくならば、ある程度話が出来る人物の方が楽でいい。
エリーゼなら星那や母さんとも仲が良いようだしとりあえずは大丈夫だろう。
情報開示をどの辺までするかは父さんに任せておけばいいか。少なくとも、普通の魔法少女では管理出来ない門であることは確かなのだ。それは信号機トリオも十分に理解しているだろう。あいつらでもサラマンダーを倒すのはそれなりに苦労するだろうから。また、イフリートの相手をするとなると、どう頑張っても三人では無理だろう。
さて、そろそろ門に行かないと朱里姉さんが怒りそうだな。
瞬間移動
「おおお、遅いわよ! 何時だと思ってるのよ。この時間じゃ、徹夜で子供たちに勉強教えなきゃならないじゃない。姉の肌を気安く老化させないでもらえる?」
めっちゃ怒っていた。
まだ、学校をさぼって飛行機の解体とか始めないだけ、大人になったと言うべきか。
「そんなに怒らないでよ。魔導飛行機を直して運んだからここまで魔力消費したわけなんだしさ」
「ふむ、それもそうね。とりあえず、ドロップアイテムは父さんに渡しておけばいい?」
姉さんの足元には、炎の欠片、回復ポーションがそれぞれ五、六個。力の秘薬が二個に炎柱石が一個。
「意外に少ないんだね。夜はあまりモンスター出てこなかったの?」
「そうね、昼と比べてどうなのかわからないけど、サラマンダーが十匹にイフリートが五体だったわ」
ドロップ率も影響しているかもしれないから何とも言えないが、日中の方があきらかに出てくるモンスターが多かった。いろいろと調べることが多そうだな……。
「了解。その回復ポーションは一つ使ってみたら? 今日は徹夜になるんだしさ」
「そうね。魔導飛行機を調べなきゃだし、二徹は堅いものね。遠慮なく頂いとくわ」
こいつ、寝ない気か……。
回復ポーションが肌の老化を抑えてくれることを祈っておこう。




